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2024年8月2日更新

レトロな趣を生かす|築45年 実家をリノベし住み継ぐ|こだわリノベ

親から住み継いだ実家の2階、3階をリノベーションし、家族4人で暮らす50代のMさん一家。「気に入っているレトロな雰囲気を残しながら、暮らしやすさを高めた」という住まいには、変わらず親族が集う。

リノベーション前
2階のLDK。もともとは応接室とキッチン、ダイニングが壁や収納で仕切られていたが(下写真)、壁を撤去して一体化させた。天井高2・9メートル。天井材を取り除いて、空間の広がりと開放感を高めた。木のレトロな雰囲気と無機質なコンクリートが調和する個性的な空間


リノベーション前
約11畳の応接室。ダインングキッチンとは壁で仕切られ、アーチ型のドア(写真左)から出入り。使いづらく、ほとんど使っていなかったそう
リビングからダイニングキッチンを見る。壁際の本棚と床のパーケットフローリングはそのまま利用。ダイニングキッチンとの間はアールをきかせた間仕切り壁で、空間をゆるかやかに仕切る



 改修前のお悩み 
2階は、DKと仕切られた応接室が開かずの間。3階も部屋が仕切られ、廊下も暗い


みんなの実家

アーチ型の木製ドアや木壁で昭和レトロな雰囲気を残しながら、アーチをアクセントにした落ち着きのある白壁、さらにモルタルの梁と天井を融合させた2階のLDK。ほとんど使っていなかった応接室とDKをつなげた空間は、Mさんの希望で天井板を抜いた。「天井が高いから大勢いても圧迫感がない。居心地が良くて家族4人ほとんどここで過ごしています」と夫人。

築45年でのリノベーション。新築も考えたというが、「この家のレトロな雰囲気が好き。機能面を良くできれば住み続けたかったので、リノベを選択しました」。

仕切られた個室ばかりで、「ドアを閉めると日中でも廊下が真っ暗」だった3階には、2部屋をつなげた広いフリースペースができた。将来は子ども室として使う予定だが、「まだ部屋を欲しがらないので、寝室兼セカンドリビングとして活用しています」。出入り口のガラスの引き戸を通して、窓からの自然光が廊下まで届き、暗さも解消された。

Mさんは、自身が子どものころ使っていた部屋を改めて自室として使用。懐かしさを楽しみながら快適に過ごす。



リビング。テレビを掛けた壁は、既存の木パネルを再利用。周囲の木枠は色を合わせて新設した


歴史と思い出楽しむ

実家の1階で暮らしていたが、子どもたちが成長し手狭に。長男の小学校入学時に、親が暮らしていた2階、3階へ移り住むことにした。何か参考になればと、新築住宅の見学会へ。素材感を大事にしたシンプルな設計に魅力を感じた建築士事務所に、リノベで似たような雰囲気にしたいと依頼した。「建築士さんが、納得のいくまで話を聞いてくれてありがたかった」。

両親が実家を建てたのは、Mさんが小学1年生の時。親戚がよく集まり、いとこが泊まりに来ることも多かった。「歴史と思い出が詰まった家。みんなの実家としての雰囲気を大切にしたかった」と夫人。既存の建具や棚、資料を残し、ダイニングテーブルも大人数で座れるものを選んだ。Mさん宅には、親族から子どもの友達までがにぎやかに集う。



リノベーション前

キッチンからダイニングを見る。出入り口のアーチ型の木製ドアは、既存(上写真)をそのまま利用。その色味や雰囲気に合わせて、LDKの内装をデザインした。「オープンなほうが使い勝手が良く、ディスプレーもできる」と造作してもらった壁面収納は、夫人のお気に入り
 

リノベーション前


子ども室。壁(写真右側)を隔てた奥は寝室だった


3階の子ども室は約15畳。将来仕切れるように工夫されている。中の様子が分かるようガラス張りにしたドアは、階段や廊下に光を届ける役割も担う。現在は寝室兼セカンドリビングとして活用
 

リノベーション前


廊下と脱衣・洗面室(写真右手)は壁で仕切られ、正面に見える収納は洋室の中にあった

3階の洗面室は、廊下の一角に設けた。写真右奥は洗濯・脱衣室。洗面台の後ろの空間には収納を造り付け、化粧スペースをレイアウト。写真左奥に見える収納の扉は、ラワン合板を着色し既存と調和させた



 Mさん宅のリノベのカギ 

「状態の良い既存の建具や床を生かし、予算減。内装デザインの色、形、質感も調和させた」

 

既存を最大限に生かす

2階には両親の寝室、子ども部屋(和室)など4部屋があった。内階段西側の壁が構造上、壊せない壁だったため、間取り変更を伴うリノベーションが難しい造り。空間構成を決めるカギは、必要な部屋の広さに優先順位をつけることだった。

リノベーションを行ったのは2階の応接室とダイニングキッチン、3階の水回りと個室。「45年という築年数を考えると、将来的な建て替えも視野に入れる必要がある。過度に予算が掛からないよう既存を上手く活用しながら、いかに開放的な空間にするかがポイントでした」と設計を担当した鹿島祐司さん。

まず2階は、既存の間取りを生かして広々としたLDKを実現した。応接室とダイニングキッチンを仕切っていた壁を撤去。より広さを感じられるよう天井材を取り払い、天井高を上げた。

内装デザインは、Mさん夫妻が残すことを希望したアーチ型の木製ドアを軸に展開。壁は要所にアールを取り入れ、視覚的に部屋を仕切った。空間全体の色味や質感は、残した建具と床材に合わせて調和させた。撤去した間仕切り壁に使われていた木材は、リビングの壁に再利用。「懐古的な雰囲気と、あらわにしたコンクリートの天井と梁の無機質感との対比が特徴的な空間になりました」。

3階は水回りの改装がメイン。トイレと浴室を独立させ、洗濯機置き場も2階から3階へ移動。トイレ上部には、脱衣室側から採光できるようハイサイド窓を設けた。洗面スペースは廊下に面して配置。一家の暮らしを反映し、ドライヤーやメークができるカウンターや背面収納を設けた。

個室は、東側の2室を一体化。「子どもが小さい間は、家族で仕事や勉強、遊びを楽しむ大空間として計画しました」。出入り口をガラス張りの引き戸にすることで、廊下への採光と開放感が生まれた。将来的に部屋を仕切って使える照明レイアウトになっている。


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
躯体構造:鉄筋コンクリート造
築年数:45年
2階床面積:87.54平方メートル(26.48坪)
3階床面積:62.20平方メートル(18.81坪)
工期:4カ月
設計・施工:LSDdesign(株)鹿島祐司


[問い合わせ先]
LSDdesign(株)
電話:098-894-4282
https://www.lsd-design.co.jp/


撮影/泉公/ララフィルム 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2013号・2024年08月02日紙面から掲載

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比嘉千賀子

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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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