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2024年6月14日更新

既存の利点フル活用|築32年の実家 二世帯住宅に|こだわリノベ

広いテラスのあった実家2階を増改築したTさん(48)宅。大きなキッチンやリビングは海外の家のよう。「リノベだったからこそ、設備に予算を掛けられた」と話す。既存の構造を生かした天井高やテラスへの抜けが、ぜいたくなサイズ感にもフィットしている。

リノベーション前の外観


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寄棟屋根の形状を生かし、最高3・7メートルの天井高があるLDK。開放的で、どっしりしたソファも圧迫感なく収まっている。プロジェクターやスピーカーも設置し、リビングシアターも楽しむ


リノベーション前

以前は2階に個室が3室あった。どの部屋も一般的な天井高で、寄棟屋根の形状が生かされていなかった
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キッチンは、デザイン、設備、水栓に至るまで夫妻で厳選した。天井にはオーディオスピーカーが付いていて「リビングより音が良い気がする。ここで音楽鑑賞をするのが好き」と夫人



 Tさんの要望 
LDKは広くしたい。特にキッチンは家族みんなで立てる広さにしたい


キッチン中心に家づくり

Tさん宅で、まず目を引くのはオーダーメードのキッチンだ。「キッチンを中心に家づくりをした。家族みんなで立てる大きさにしたかった」と夫人(39)。海外製の食洗機やオーブンが組み込まれた、ぜいたくな仕様。モールディング(凹凸のある縁取り)の装飾もラグジュアリー感を醸す。水栓に至るまで夫婦で厳選した。「リノベだったからこそ、設備にしっかり予算を割くことができた」とTさんは満足げに話す。

リビングは、天井高が最高3・7メートルある。「昔は私の部屋だった場所。こんなに天井が高かったなんて知らなかった」とTさん。隣接するテラスへの抜けも相まって開放的。大きなソファも圧迫感なく収まっている。

クーラーやリビングシアターなど機器は、収納や壁の中に収まっていてスッキリしている。夫人は「あまり生活感を出したくなかった。でも、娘たちがすぐ散らかしちゃう」と笑う。

5歳の長女と3歳の次女は家中をぐるぐる駆け回る。リビングからテラス、子ども室、そしてまたリビングへと回遊し、思い思いの場所で遊ぶ。子ども室の壁は「大好きなディズニープリンセスの色にした!」とにっこり。



洗面室はランドリールームを兼ねる。洗濯・乾燥機はキッチンと同じ海外製。洗面台は高さ90センチ


新築と変わらぬ自由度

以前はマンションに住んでいたが、子どもが大きくなってきたことからマイホームを検討。沖縄市の実家近くで土地を探したが見つからなかった。そこで、長い間2階が空いていた実家の建て替えも視野に入れ、建築士に相談した。「建築士さんは『躯体の状態は良い。壊さず生かすことで、建築費を抑えられる』と言ってくれた。それがリノベのきっかけ」。

2階は既存の壁を全て取り払い、フルリノベーションした。テラスだった場所には、子ども部屋と寝室を増築。外階段も新設した。「もったいないと思っていた実家を活用できた上、新築と変わらないくらい希望をかなえられた。リノベで正解だった」と笑顔で話した。


リノベーション前

もともとテラスだった場所に子ども室と寝室を増築
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テラスは、子ども室とリビングをつなぐ。天井まで届くガラス窓が室内外の境界を曖昧にし、広がりを感じさせる
 

子ども室の壁の色は、二人の娘が大好きなプリンセスの色。既存構造を生かした3.7メートルある天井高が開放的


 Tさん宅 リノベのカギ 

既存構造を生かすことを重視。寄棟屋根の形状に沿って一部を勾配天井にし、広がりを演出。テラスも活用し内外を一体化させた。

 

構造を再評価して生かす

建築士の美濃祐央さんがTさんの実家をチェックした際、「メンテナンスが行き届き、躯体の状態は良かった。『ラーメン構造』だったこともリノベ向きだった」と話す。鉄筋コンクリート住宅には、壁で建物を支える「壁式構造」と、柱と梁(はり)で支える「ラーメン構造」がある。ラーメン構造は、条件次第でほとんどの壁を取り払うことができ、間取りの自由度が大きい。

Tさんは建て替えも検討していたが「地下ガレージも含めると3階建ての建物。壊して新たに建てると相当お金がかかる。既存を生かしつつ、建築確認申請届出の提出が不要な10平方メートル以下の増築の範疇(はんちゅう)で、要望はかなえられると判断した」。

今回、外構を含めて建物全体の改修を行った。親世帯のある1階は、水回りなどをバリアフリー化して「ご両親の将来を見据えた動線づくりをした」。

2階は壁や天井、床などをすべて取り払ってスケルトン状態に。「既存構造を見直し、そのポテンシャルを生かす形でリノベを行った」。リノベ前、寄棟屋根の形状があらわになっているのはテラスだけだったが、「テラスの隣にあるリビングと子ども室も、寄棟屋根に沿った天井高にした。空間が広くなるだけでなく、内外の一体感が生まれる」。テラスとの間は天井までの大きなガラス窓にして、境界を曖昧にした。

増築によりテラスは半分以下の広さになったが、テラスをL字に挟むように居室を配置することで室内に効率よく風を取り入れる。また、家族の気配を伝える“パイプ空間”としての機能も持たせた。

美濃さんは、「リノベのカギは『どの状態まで戻すか』を決めること」と話す。「仕上げ材を張る段階なのか、コンクリート壁を造る段階なのか。戻せば戻すほど自由度は高くなるが、予算が掛かる。Tさんは更地の状態まで戻すことも検討したが、希望する空間と予算をすり合わせた結果、コンクリートブロック壁を作る前の段階とした」

 

外階段を新設した。抜けのある鉄骨製にして1階の採光や庭の景観を邪魔しないようにしている
 

リビングからテラス側を見る。大きな窓から視線が抜け、右奥の子ども室の様子も分かる(建築士提供)

 

通常、床と壁との間にはその継ぎ目を隠す「幅木」が設置されている。Tさん宅は、壁を内側に入れ込んだ「入幅木」にし、スッキリ感をアップさせている




[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
1階施工面積:44.86平方メートル(約13.5坪)
2階施工面積:143.32平方メートル(約43.4坪)
躯体構造:鉄筋コンクリート ラーメン構造
設計:一級建築士事務所 mino archi-lab 美濃祐央
施工:(株)FUN SHARE 下地恭光
設備:ライフ工業
電気:(有)新栄電機
キッチン:(有)CASA 安里笑美
水回り:(有)東洋商会 瑞慶覧美夏
ホームシアター:シアター&オーディオデザイン 當山寛人


[問い合わせ先]
mino archi-lab
電話=098-890-2870
https://www.info-mal.com/


撮影/矢嶋健吾 取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2006号・2024年06月14日紙面から掲載

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この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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