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2015年7月24日更新

家中から眺める海 テラスがリビング|(株)クレールアーキラボ

沖縄本島中部、うるま市石川の高台にある、建築士の畠山武史さん(40)が自ら設計した住宅兼事務所。鉄筋コンクリート造で、ことし5月には沖縄建築賞を受賞した。家中から海が見え、心地良い風に抱かれながらのんびり過ごせる。

風に抱かれのんびりと

畠山武史さん宅(家族2人 自由設計RC造)


1階リビングから東側のテラスを見る。写真のように木製サッシを開け放てば、室内外が一体化。テラスが第2のリビングのようになり、奥には海の見える景色が広がる

印象和らぐインテリア
畠山さん宅は鉄筋コンクリート造の2階建て。北に住宅、南には自身の事務所として使用している店舗部分があり、どの部屋からでも海が見える。そこに妻(35)、愛犬一匹とともに暮らす。
ほの暗い玄関からLDKに一歩入ると、パッと開けた視界に海の景色が飛び込んでくる。窓を開ければ、深い庇のあるテラスとリビングがつながり、室内外の区別がつかなくなってしまう。東から西へ心地良い風もよく通る。人が集まる際にはテラスにラグを敷いてリビングのように過ごし、「祖母やめいにも好評」と夫人。
「何気なく視界に入る海を眺めながら、リビングで映画を見てのんびり過ごすのが好き」と夫婦は口をそろえる。朝日や月が海に反射しながら昇る様子も幻想的だという。
インテリアは夫人が担当。「コンクリートや床材の石の固い印象を和らげるため、ひだの付いたカーテンやランプなど曲線的なものを選んだ」と、建物とインテリアの素材感を生かして工夫している。

手入れラクな石張り
もともと家づくりを考えていた畠山さん。夫人の親から譲り受けた土地に道路が整備されたことで、本格的に開始。
夫人は「収納は多めに」と要望。畠山さんはシューズクロークやウオークインクロゼットのほか、キッチンにも両面から使える収納を用意した。
夫婦どちらも使うというキッチンは、作業台とダイニングテーブルが一枚板でつながっている。夫妻は「料理をすぐに出せる。キッチンはダイニングより床が低く、調理中でも自然と目が合い、話もしやすい」。
LDKの石張りの床は手入れも簡単で、掃除機やモップで掃除する程度。「汚れても拭くだけでいいので楽」と畠山さん。ひんやりとしていて、愛犬も気持ち良さげに寝転ぶ。
寝室の隣にまとめられた水回りは、「来客中でも気兼ねなく身支度できる」と夫人。開放的ながらも公私を区別した空間で、のんびりと暮らしている。


テラスから見た1階のLDK。それぞれ床の高さを変えたことで、空間にリズムが生まれ、景色の見え方にも変化をつけた。中央右の収納にはエアコンや冷蔵庫も収まっておりスッキリしている


洗面所と浴室。夫人の父親の夢でもあった海を眺めながら入れる浴室を実現した
 

ここがポイント
大開口で景色と一体感

設計の際、畠山さんが考慮したのは「東に海が見える景色を最大限に生かす」こと。
そこで、居室はすべて東に向け、開口部は可能な限り大きくした。特にLDKは、テラスに面する窓を完全に開け放てる引き込み戸に。さらに天井からテラスにかかる深い庇、室内壁から外壁、床からテラスまでを一続きにした。「室内と外部とのつながりを強めたいと考えてのこと。いわば、現代版のウチナーヤー。これにより景色と一体化するような開放感を演出した」。
部材にはコンクリートや石など極力自然の物を採用。仕上げはコンクリートのザラザラとした質感が残る普通型枠や木目が残る杉板型枠を使い、床には割肌仕上げ(原石を人為的に割った肌を使用したもの)の玄昌石を敷き詰めた。
床に石張りを採用しているのは、「より環境に溶け込めるのではないかと考えてのこと。人工的な装飾を避け、素材の持つ質感を生かすことで、経年変化が味わいとなる飽きのこない建築を目指した」からだ。
一方で沖縄の気候風土にも配慮。夏の暑さ対策には、この敷地で1年を通じて比較的多い東からの海風を家中に取り込み、台風には木製の雨戸や、飛来物対策用ネットが張れるフックを設け備えた。
また、敷地を有効に活用すべく、通り側は店舗として設計。現在は自身の設計事務所に使用しているが、入り口や設備等も完全に分け、互いに気兼ねなく使えるよう配慮した。


玄関ホール。はめ込み窓の外には水盤があり涼しげ。水面に反射した光が壁や天井に当たり、ユラユラと揺れる。季節や時間帯によって光の角度が変わる様子もおもしろい


東側から見た外観。海が見える東側全面に窓を設けている様子が分かる。手前にせり出した大きな壁を設けることで景色を切り分け、各部屋で異なる眺望が楽しめるよう工夫されている(畠山さん提供)


寝室。LDKより低い天井とフローリングの床で落ち着いた雰囲気

[DATA]
家族構成:夫婦、犬1匹
敷地面積:630.82㎡(約190.82坪)
住宅床面積:1階・115.86㎡(約35.04坪) 2階・26.28㎡(約7.94坪)
店舗床面積:39.82㎡(約12坪)
建ぺい率:35.32%(許容50%) 容積率:28.97%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設 計:(株)クレールアーキラボ 畠山武史
施 工:(有)仲真組
電 気:(資)中江電気建設
水 道:(有)ライフ工業
家具・建具:大城美装
鉄骨工事:(有)海邦ベンダー、(有)伊波工業所
アルミ・ガラス:(有)双葉アルミ工業

[設計・問い合わせ先]
(株)クレールアーキラボ
098-955-1823
www.clairarchilab.com
写 真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編 集/徳正美

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1542号・2015年7月24日紙面から掲載

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