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2024年3月22日更新

モルタルでクールに|間+impression[お住まい拝見]

[中庭と大開口で開放的な平屋]
左官仕上げの壁が印象的なNさん(33)宅は、「武骨でかっこいい、カフェのような家」。中庭に面した大開口で開放感を高めた平屋は「帰ってきた時、常に新鮮な気持ちになる」と、Nさんは目を細める。

壁はモルタル、床にラワン合板を用いたLDK。隣接する子ども室をスキップフロアにし、空間にメリハリをつけた。大開口の先に中庭があり、外壁が道路からの視線を遮る


キッチンが集いの主役

Nさん宅
 RC造/自由設計/家族6人 

色とコテのムラが、独特の風合いを醸し出すモルタル壁。武骨さの中に手仕事の温かみを感じる仕上げを、内外装に取り入れたNさん宅。玄関を入ると正面に中庭が広がり、青空へと視線が抜ける。

土間廊下を挟んでLDKと子ども室がスキップフロアで設けられ、リビングとフラットにつながる中庭が開放感を一層高める。「かっこいい家にしたかった。友人たちもカフェみたいでおしゃれと言ってくれて、うれしい」と夫人。

家の主役は、料理が趣味というNさんこだわりの造作キッチン。幅約3.5メートル。「作り立ての料理を目の前で出して、家族に食べてもらうのが夢だった」と、正面に5人が横並びで座れるカウンターを設けた。「長女も少しずつ、料理をするように。キッチンに立って、くつろいでいる家族を見るのが至福の時間」とNさん。

キッチン背後には、ファミリークローゼットと水回りがまとまっていて、回遊できる造り。家事が楽にできるだけでなく、9歳、8歳、5歳、3歳の4人の子どもたちが、「家中をグルグル回って、鬼ごっこやかくれんぼをして楽しそう」と、夫人は笑う。


LDKの全景。奥には子ども室がある。開口部は、幅約6.7メートル。4枚の木製ガラス戸は、フルオープンにできる。カウンターに腰掛けた家族と目線の合う高さを基準に、キッチンから30センチ高い位置にリビングを設けた。北側に配した中庭(写真左)に風が抜ける
 

バーのカウンターをイメージ。料理の受け渡しも、会話もしやすい
 

左官塗材で仕上げた造作キッチン



伸び伸び過ごせる

長女の小学校入学に合わせ、夫人の祖父の土地を譲り受けて八重瀬町で家づくり。好みの空間を手掛ける建築士事務所に、設計を依頼した。「人柄が良く、デザインも機能面も細かく相談にのってもらい、いろいろ提案してくれて、ありがたかった」。

風通しの要になっている南北の中庭は、子どもたちが自転車にも乗れる広さ。ハンモックをつるす計画もある。夫人は「『走らないで』と言わなくて済むからストレスフリー。安心して伸び伸びと遊ばせられる環境ができてよかった」と、にこやかに話した。


スキップフロアになった子ども室。将来は2部屋に仕切って使える仕様になっている。下は天井高140センチの倉収納。遊びに、勉強にと、子どもたちの使い方は自由自在
 

BBQも楽しめる中庭から住宅を見る。約2メートルの深い軒を利用して、台風対策に雨戸も取り付けている
 

土間の玄関。正面にある北側中庭に視線が抜け、開放感を感じる。写真左端の木箱は造作ポスト
 

南側の外観。中庭の外壁は高さ2メートル。外壁もモルタル塗り。表面に石灰が浮き出るエフロを防ぐため、1週間晴れの時期を選んで施工した
 

地盤面からの立ち上がりは石積みでカバー
 



ここがポイント
南北の中庭で採光・通風

南側に、交通量の多い道路が走る敷地。建築士の儀間徹さんは設計において、道路からの視線を気にせず自然光と風を取り込むことと、子どもたちの安全を考慮。LDK南側に高さ2メートルの壁で囲んだ中庭を設け、LDKに広がりを生む平屋を提案した。

室内は、廊下を挟んで南側にLDK、北側に子ども室と寝室を区分け。LDKを広く取るため、キッチン背後にまとめたクローゼットと水回りを必要最小限のサイズに収めて、コストダウンを図った。

床高の基準はキッチン。キッチンに立つ人と、正面に設けるカウンターに座った人の目線が合うよう、「リビングは床高を30センチ上げた。LDKとオープンにつながる子ども室はスキップフロアにし、空間にメリハリをつけた」と儀間さん。玄関の正面、北側にも中庭を設けることで、視線の抜けと風通しを高めた。

デザイン面では、武骨な見た目を演出するためコンクリート、木、鉄、石など、できるだけ手を加えない自然素材を使用。壁は左官仕上げでモルタルを塗り、玄関ホールや廊下、キッチンの床は土間のまま。リビングの床はラワン合板を2枚張りにした。造作のキッチンは、左官塗材仕上げ。中庭に面した大開口には、特注の木製のガラス戸と網戸を採用した。「木の風合いで、温かみをプラス。雨じまいが難しく、アルミサッシより気密性は落ちますがコストダウンできます」と説明した。



[DATA]
家族構成:夫婦、子ども4人
敷地面積:330平方メートル(約99.82坪)
1階床面積:96.98平方メートル(約29.3坪)
建ぺい率:42.24%(許容70%)
容積率:29.83%(許容400%)
用途地域:無指定
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:間+impression 儀間徹、儀間達紀
構造:(有)建築設計庵 長間大輔
施工:(株)朗建設 安次嶺盛朗
電気:喜友名電気 喜友名盛久
水道:(株)設備技研 久場一輝、仲宗根怜音
キッチン左官:(株)玉栄左官業 蔵根正光、名嘉恵利菜


問い合わせ
間+impression
電話=098・892・3635
https://ma-impression.com/index.html


撮影/矢嶋健吾  文/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1994号・2024年3月22日紙面から掲載

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