窓開け放ち開放的に|遠藤建築設計室[お住まい拝見]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

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2023年12月1日更新

窓開け放ち開放的に|遠藤建築設計室[お住まい拝見]

[傾斜地生かす職住一体住宅]
傾斜地に建つKさん宅は、アロマサロンを併設した職住一体の住宅。道路側の眺めを生かして設けた大開口がポイントで、Kさんは「開け放つと風が通り、眺めにも癒やされます」と笑顔。

土間床を生かしシックにしつらえた1階のリビングダイニング、奥はアロマサロン。普段はオープンにして使用。必要に応じてすりガラスの引き戸を閉め、仕事場を分けることもできる
土間床を生かしシックにしつらえた1階のリビングダイニング、奥はアロマサロン。普段はオープンにして使用。必要に応じてすりガラスの引き戸を閉め、仕事場を分けることもできる
 

家時間が楽しい

Kさん宅
 RC造/自由設計/家族4人 

道路に面したガレージは地下1階。ザラついた質感に仕上げた階段を上り、1階の住宅へ。玄関を入ると靴を着脱するたたきがなく、全面土間の床がフラットに広がる。

家具、建具は、茶系でまとめてシックに。南側にLDK、夫人のアロマサロンと続き、幅4・8メートルの腰窓からの開放的な景色がすがすがしい。Kさんは「この家に引っ越してから、仕事から早く帰って、リビングでくつろぎたくて仕方がない。寝室脇に書斎も設けましたが、家で仕事をする気にならず、働き方革命になりました」と笑う。

普段は窓を開け放って過ごすことが多く、心地よい風が家中を巡る。「朝起きて窓を全開にして、空が明るくなるのを見ながら家事をするのが気持ちいい。ダイニングテーブルも眺めがよく落ち着くので、パソコン作業もつい、そこでしてしまう」と夫人。

LDKとサロンの間は、天窓から自然光が注ぐ半戸外のような廊下で緩やかに区分け。すりガラスの引き戸を閉めれば個室になるが、「壁で仕切っていないので、お客さまが多いときはつなげて広く使えるからありがたい」。

サロンからLDKを見る。木の風合いを生かした建具と収納は、建築士の自邸と同じものをとリクエストしてしつらえてもらった。正面奥に個室と水回りがある
サロンからLDKを見る。木の風合いを生かした建具と収納は、建築士の自邸と同じものをとリクエストしてしつらえてもらった。正面奥に個室と水回りがある
 

ダイニングとキッチンは夫人のお気に入り。仕事に家事に「長時間居ても、気持ちよく過ごせます」ダイニングとキッチンは夫人のお気に入り。仕事に家事に「長時間居ても、気持ちよく過ごせます」


自宅の玄関ポーチと階段は、土間を洗い出しで仕上げた。室内から窓越しに人の出入りが確認でき、裏手にある庭にも抜けられる

自宅の玄関ポーチと階段は、土間を洗い出しで仕上げた。室内から窓越しに人の出入りが確認でき、裏手にある庭にも抜けられる

外観。道路に面した地下1階が駐車場。自宅とサロンへの出入り口は、両サイドに振り分けた外観。道路に面した地下1階が駐車場。自宅とサロンへの出入り口は、両サイドに振り分けた



巣立ちを見据えて

仕事上の利便性が高い浦添市内で土地を購入。新聞で目に留まった建築士の自邸を見学。「まさに、私たちが欲しい空間がそこにありました」。設計を依頼し、床や壁の仕上げ、造作の家具、建具の色も同じ仕様にしてもらった。

設計当初は、サロンを設ける予定はなかった。2人の息子が独立間近だったこともあり、「いずれ自分でやるなら一緒に作っては?」とKさんに背中を押され、確認申請前に設計変更を依頼した。夫人は、「店舗選びや家賃に悩むこともなく、思った通りの空間ができて幸せ。この先、ちょっとしたイベントなども企画してみたい」と、にこやかに話してくれた。
 

リビングからアロマサロンを見る。LDKとの間に設けた廊下はウッドデッキ調のタイル張りに。青空を望む天窓からは陽光がさんさんと注ぎ、テラスにいるような感覚に。床の仕上げと採光に変化をつけて、オープンにつながる仕事場とプライベート空間を緩やかに区分けする。写真右側のドアはサロンの出入り口
リビングからアロマサロンを見る。LDKとの間に設けた廊下はウッドデッキ調のタイル張りに。青空を望む天窓からは陽光がさんさんと注ぎ、テラスにいるような感覚に。床の仕上げと採光に変化をつけて、オープンにつながる仕事場とプライベート空間を緩やかに区分けする。写真右側のドアはサロンの出入り口
 

寝室。ベッドは引き戸を開け放っていても、LDKから見えない配置に。芝生張り斜面の緑が癒やし。「子連れイベントで、芝すべりを企画するのも楽しそう」と夫人。
寝室。ベッドは引き戸を開け放っていても、LDKから見えない配置に。芝生張り斜面の緑が癒やし。「子連れイベントで、芝すべりを企画するのも楽しそう」と夫人
 

玄関。土間仕上げで、たたきはなし。造作収納の裏手にシューズクロークがある

玄関。土間仕上げで、たたきはなし。造作収納の裏手にシューズクロークがある
 

室内物干場。南北の掃き出し窓を開けると風が抜け、洗濯物の乾きも早い

室内物干場。南北の掃き出し窓を開けると風が抜け、洗濯物の乾きも早い

 


ここがポイント
風抜けと動線で快適さ

敷地は、南北で約8メートルの高低差がある傾斜地。地形を利用して建築費を抑えるため、建築士の遠藤篤志さんは、1階を隣家の地盤高に合わせて南の前面道路から約4メートルの高さに据え、地下を駐車場にするプランを提案した。「東西の擁壁設置が不要になり、造成工事も最小限で済ませることができました」と遠藤さん。

サロン併設のため、自宅玄関は東側、店舗出入り口は西側に設け、家族と来客の動線を分離。1階は、玄関を軸に南にパブリック空間、北にプライベート空間をまとめた。LDKとサロンは、ひと続きで開放的。道路側に面したサロンには幅4・8メートルの大開口を設置。「外から足元が見えない安心感を生むため、窓の外にテラスを設け、少し低めの腰窓にしています」

空間をムダなく使い、家事効率を高めるため、「できるだけ、行き止まりなくスムーズに動けるようにした」。キッチンからは室内物干場、ウオークインクローゼットと回遊できる。物置としても活用できる室内物干場はキッチン西側にあり、西日を遮り、風を通す役割も果たす。また、通風の要として、北側の寝室に掃き出し窓を配置。玄関、キッチンの勝手口は引き戸で、開放できるようにした。

内装は、使う色数を抑えシンプルに。床は全面土間、内外の壁は左官無しで仕上げた。「ちょっとしたムラも風合いに。汚れや傷を気にせず暮らせ、コスト減にもつながります」。LDKとサロンの間の廊下のみ床をウッドデッキ調のタイルにし、天窓を設けてサンルームのような空間に。生活感を感じさせないおしゃれな造りで、職住の空間を緩やかに分けている。


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:382.61平方メートル(約115.73坪)
1階床面積:169.40平方メートル(約51.24坪)
地下1階床面積:47.58平方メートル(約14.39坪)
建ぺい率:46.17%(許容50%)
容 積 率:45.36%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設  計:遠藤建築設計室 遠藤篤志
構  造:(有)建築設計庵 長間大輔
施  工:(株)孝建設 西野義孝
電  気:長浜電気サービス 長浜道人
水  道:(有)ライフ工業 我喜屋奨

問い合わせ
遠藤建築設計室
​電話=090・3795・9843
http://endoh.boo.jp


撮影/比嘉秀明 文・比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1978号・2023年12月1日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

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