菜園も遮熱も屋上で|アトリエ・ネロ|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

こども絵画コンクール

お住まい拝見

お住まい拝見

2020年7月3日更新

菜園も遮熱も屋上で|アトリエ・ネロ

[お住まい拝見〕|那覇市のCさん(45)宅は、住み始めて約10年の平屋。遮熱のために緑化していた屋上で菜園を始めた。しっくいと木のLDKは憩いの場として提供。家族の成長とともに、さまざまな暮らし方を楽しんでいる。


屋上。遮熱効果を狙い、もともと全体に芝生が敷かれていたが、今年、家族みんなで土を運び上げ、一部(写真右手)を菜園にした。枝豆やパプリカ、オクラ、カボチャなどが伸びやかに育つ。左手の窓はキッチン上部のハイサイドライト。その周りには、緑化と同じく遮熱を目的に、炭酸カルシウムの粒を混ぜた白セメントが塗られている

 

しっくいと木のLDKで憩う

Cさん宅
 RC造/自由設計/家族4人 


土間から見たLDK。天井と壁はしっくい、床は柿渋を塗った杉材で、ぬくもりのある雰囲気。右手には子ども室、左手の戸を開ければ和室があり、奥のデッキスペースまで見通せる開放的な空間で、家族を身近に感じられる


休校中も気分転換
屋根の上から青々とした植物が顔をのぞかせるCさん宅。遮熱を目的とした屋上緑化によるものだ。長女(16)は「芝生が気持ちよくて、小さい頃はよく走り回っていた」と、10年ほど前の新築当時は子どもたちの遊び場でもあった。
成長するにつれて屋上に上がる頻度も減っていたが、今年3月、一部を菜園に。今では枝豆やパプリカなどが大きく実り、食卓に並ぶこともある。長男(14)は「はじめは面倒に感じていたけれど、ツルがどんどん伸びるのが楽しくて」と水まきを担当。「休校期間中、外出できなくても、毎日屋上に出られたのは気分転換になって良かった」と話す。

一方、室内は、LDKを挟んで子ども室と和室があるシンプルな間取り。天井と壁はしっくい、床には杉が使われ、ぬくもりのある印象。
そのLDKは、家族が集まるだんらんの場としてだけでなく、親戚や子どもたちが集うイベント会場にもなってきた。
現在は、Cさんや子どもたちが仕事や学校に行っている時間帯に、夫人(45)が活用。「料理や花の教室を開いたり、子育て中のお母さんたちのコミュニケーションの場などとして提供している。ナチュラルな感じが、時間を忘れるほどリラックスしてもらえるんです」と夫人。変わらない居心地の良さを多くの人と共有する。


キッチン。ハイサイドライトから光が入り、明るい

友人と同じ家を
実家近くの土地を弟と購入し、分筆したCさん。しっくいと木をふんだんに使った友人の家を気に入り、設計した建築士に「同じ家をつくってほしい」と依頼した。
そこで建築士は、しっくいと木の雰囲気は残しつつ、敷地の条件や「光や風が自然に入る家」などといった家族の要望に合わせた形で提案。
例えばキッチンを囲むようにL字型に設けられた窓を全開にすると、広い土間から入る風が家全体を通り抜けていく。LDKとデッキを一体化させて使うこともできる。
まもなく築10年だが、Cさんは「床につやが出てきた」と経年変化を楽しんだり、「4月に長男とデッキを塗装した」と手をかけたりと、家族みんなで暮らしを満喫している。


子ども室。子どもたちが幼い頃は一つの空間として使っていたが、今は棚で仕切り、それぞれの個室として使っている



LDKとフラットにつなげられる和室。一方、「ふすまを閉めれば、来客時に荷物の片付け場所にもなって便利」と夫人。寝室としてなど多目的に使える


ここがポイント
視線遮り風入れる土間
Cさん宅の敷地は、道路のある南側を除き、3方を建物に囲まれていた。建築士の根路銘安史さんは「台風や、冬の北風の心配はないが、夏の南風の取り入れ方や、道路からの視線の遮り方に工夫が必要だった」と話す。
そこでまず、南側に広い土間を設け、道路に面した部分はジャロジー窓とすりガラスにした。「塀を設けなくても道路からの視線を遮ることができ、南からの風も常時取り入れられる。南からの強い日差しに対して陰を生むほか、雨が降っても土間なのでぬれても問題ない」
上からの熱は断熱材を入れるのではなく、屋上緑化で遮熱。また、キッチン上部は、宮古島の地下水を浄化した際に出る炭酸カルシウムの粒を、白セメントに混ぜて塗った。実際に放射温度計で測ってみると、知念さん宅の場合、コンクリートブロックの表面温度が50度以上あったときに、緑化と白セメントの表面温度はいずれも約40度、室内は約30度だった。Cさんは「以前アパートの最上階に住んでいたときは、夜中までクーラーが効かなかったが、今は上からの熱が全く気にならない」。
躯体には密度を高めたコンクリートを使用。根路銘さんは「内部が緻密になることで、塩分が浸入しにくくなり、耐久性が上がる」と説明する。
コストを下げるため、壁のしっくいや床の柿渋、屋根の白セメントは、知念さん家族や親せき、友人などで塗った。「家に愛着も湧くし、メンテナンスの方法を知ることにもつながる」と根路銘さんは話した。



土間。近くに住む知念さんの母が畑仕事の帰りに立ち寄り、LDKの端に腰掛けて話をしたり、野菜を置いていく。LDKの床下は全体が収納になっており、土間との段差部分から出し入れする


外観。手前にある道路との間に塀などはないが、正面に並ぶすりガラスとジャロジー窓によって中の様子はほとんど見えない


天井面にガラスが張られ、雨でもぬれないデッキ。キッチン隣の窓を開ければ、室内と一体化し広々使える


白セメントが塗られた屋根。掃除をする際、絵を描くのが好きな長男が、「グーグルマップで写るように」と大きな足形を描いた

もっと見たい! この記事の「お住まい拝見+」へ

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:170.46平方メートル(約51.56坪)
1階床面積:98.93平方メートル(約29.93坪)
建ぺい率:58.85%(許容60%)
容積率:58.04%(許容200%)
用途地域:第一種中高層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
設計:アトリエ・ネロ 根路銘、吉岡
構造:パス建築研究室 新川
施工:(株)棚原組 山入端
電気:(有)大謝名電工 比嘉
水道:(有)龍設備 玉那覇
キッチンワークトップ:LITTAI metal works 仲地
玄関扉:まっくる屋工房 伊礼、新垣 

[問い合わせ先]
アトリエ・ネロ
電話098-889-0103
http://www.a-nero.com/


撮影/比嘉秀明 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1800号・2020年7月3日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
出嶋佳祐

これまでに書いた記事:100

編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

TOPへ戻る