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2023年10月13日更新

形態は環境に従う|風土と住まい④

文・写真/金城優(県建築士会調査研究委員、有限会社門 代表)

建築環境について話をしていると何時も脳裏に浮かぶ言葉に、環境建築家の木村健一先生が発した「形態は環境に従う」があります。アメリカの建築家ルイス・サリヴァンの言葉「形態は機能に従う」を現在の社会環境に置き換え、考え出した答えです。

私たちの身近な災害に台風が挙げられますが、台風慣れした県民ですら今年の台風6号では、土砂崩れや冠水・倒壊・停電などの自然災害を改めて考え直す機会となり、蒸暑地域での家づくりとは、先ずは台風被害から身を守るための「家(シェルター)」を造り、その上で環境に優しい家づくりをすることが重要だと再認識しました。
 
鉄筋コンクリートの躯体に木屋根をかけた気候風土適応住宅型。
 
深い庇やアマハジ(上)、屋根の遮熱、緑化、通風経路の確保、花ブロックや緩衝領域を持つ空間構成(
下)など、高温多湿で年中風が吹き、台風にも襲われる気象条件を踏まえ沖縄で発達してきた建築技術を用いた住まい

 
 

目指すは防災・長寿命・省エネ

地球温暖化が問題となり、これまで日本の建築業界では、建物を使う際に発生する二酸化炭素(CO2)の排出ゼロを目指す「オペレーショナルカーボン」や年間の1次消費エネルギー量ゼロ以下を目指す「ZEH住宅」の取り組みが重要視されてきましたが、一方では、欧米を中心に「ライフサイクルカーボン」が展開され始めています。

「ライフサイクルカーボン」とは、使用時の省エネだけでなく、製造・建設・使用・廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体を通じたCO2の削減に向けた取り組みのこと。欧米にライフサイクルカーボンが根付いている一例として、イタリアの「一代目で家を造り、二代目で時代に対応した住まいとし、三代目で時代と環境に合わせて生活を楽しむ」という考え方が挙げられます。

これからは古い物は壊し新しく建てるスクラップ&ビルドの考え方ではなく、現代の技術を生かした気候風土に適した形によって、防災・長寿命・省エネを目指す住宅が必要です。沖縄なら台風被害の影響を受けにくいコンクリートで構造体を造り、屋根や壁などを木にすることで、メンテナンスしながら安心して住み続けることができます。これらを実現するためには、これまで県で取り組んできた「気候風土適応住宅」=上写真=を、住まいの選択肢として浸透させていくことが重要です。


生活の仕方で選ぶ


下グラフは、施主の希望を受けて私の事務所で造った「沖縄県気候風土適応型住宅」と「高気密高断熱型住宅」のエネルギー使用量を調査した結果です。どちらも省エネ性能の高いZEHですが、電気の使用量は大きく異なります。どちらが自分たちに適しているかは、生活の仕方によって選ぶことが大切です。

気候風土適応型ZEH


高気密高断熱型ZEH





きんじょう・まさる
1966年南風原町生まれ。M フクサス ロ-マ事務所を経て、95年に門建築都市研究室設立。05年(有)門に改称。現在に至る。沖縄県立芸術大学、非常勤講師、NPO蒸暑地域住まいの研究会理事長。(有)門、電話=098・870・0303

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1967号・2023年9月15日紙面から掲載

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