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2023年10月20日更新

わが家の10年 エコの目線|風土と住まい⑤

文・写真/新川清則(県建築士会調査研究委員長、パス建築研究室 代表者)

2014年2月に完成したわが家に住み始めてほぼ10年が経過しました。ここでの暮らしについて少し振り返ってみたいと思います。この記事が少しでも読者の皆様の家づくりの参考になれば幸いです。
 
新川邸の外観。新築当初、屋根の芝生以外は植栽もなく殺風景であったが、現在はマンゴー、ヤマモモ、ビワ、クワといった実のなる木を中心に、多くの緑に囲まれている
新川邸の外観。新築当初、屋根の芝生以外は植栽もなく殺風景であったが、現在はマンゴー、ヤマモモ、ビワ、クワといった実のなる木を中心に、多くの緑に囲まれている
 
新川邸の真ん中にある土間リビング。左右に個室を配置している
新川邸の真ん中にある土間リビング。左右に個室を配置している
 
掃き出し窓側から室内を撮影したもの。上にある左右の窓が通風を促す
掃き出し窓側から室内を撮影したもの。上にある左右の窓が通風を促す
 
 

屋上緑化と通風換気 効果は絶大

私も建築士ですが構造設計を専門にしているため、意匠設計は知り合いの事務所に依頼しました。当初の家づくりのテーマはローコストだったような気がしますが、途中からなぜか屋上緑化や通風など夏の涼しさを意識した方向に進んでいきました。その結果、空気の流れを考えた勾配屋根となり、外出時でも換気可能なジャロジー窓が水回りに配置されました。また南面の玄関上部に外気取り入れ口を設けるなどのアイデアも出て、プランを考えることはとても楽しい作業でした。床は土間としたので、夏はひんやりとした涼しさが下から伝わってきます。

以前に住んでいたアパートでは、夏場に家に帰った時に室内から“もわー”とした空気が襲ってきましたが、この家ではそれが全くありません。屋上緑化でコンクリートを高温にしないこと、また通風で熱気を常時排出していることによる効果は絶大でした。個室のドアは日中は開放していて、就寝時のみ閉じるというオープンな間取りで、建物全体がほぼワンルームという雰囲気です。個室にはエアコンを設置していますが、一番広いリビングルームにはエアコンは無く、空調費用の節約につながっています。

四季の移り目のはっきりしない沖縄ですが、梅雨時期を除いた春や秋・冬は比較的快適な環境です。冬でも本土のように暖房のことをあまり意識することなく、適度に外気を取り込んで快適に過ごすことができます。この自然環境をうまく生かせるような家の設えをあらかじめ作り込んでおくと、季節に応じた快適な生活が送れると思います。
 

適度に外気を取り入れる仕掛けの一つが玄関上に取り付けた給気口。左青線で囲んでいるのが室内側から見た給気口で、外側から見た様子が上写真。外出時でも換気ができる

適度に外気を取り入れる仕掛けの一つが玄関上に取り付けた給気口。左青線で囲んでいるのが室内側から見た給気口で、外側から見た様子が上写真。外出時でも換気ができる

適度に外気を取り入れる仕掛けの一つが玄関上に取り付けた給気口。左青線で囲んでいるのが室内側から見た給気口で、外側から見た様子が上写真。外出時でも換気ができる
 

建築費抑え高耐久 維持費も安いエコ

家づくりを始めた頃は建築費(イニシャルコスト)の低減が主な関心事でしたが、プラン作成中は電気・ガス・水道料金などのランニングコストの低減に関心が移りました。今振り返ると、長期間住める耐久性の高い建物で、台風などの自然災害に強く、メンテナンス費用や維持費が安く、かつ快適に過ごせるような家が、本当の意味での「エコ住宅」だという気がします。ちなみに仕事場と住居を兼ねるわが家の9月の光熱費は、電気とガス、合わせて1万3千円でした。これを安いととるか高いととるかはご家庭にもよると思いますが、これから家づくりを始める皆様には、これらの費用のバランスをよく考えて、理想の家を実現されることを望みます。

竣工から10年が経ち、建物周辺の植物が成長して建物を覆い隠すようになってきました。アプローチからの目隠しになり、建物壁面への直射日光を減らす効果もあるので、夏の快適さにも貢献しています。

あらかわ・きよのり
あらかわ・きよのり
1960年那覇市生まれ、琉球大学と大阪大学大学院で建築を学ぶ。1997年、パス建築研究室を設立。構造設計一級建築士、沖縄県建築士会調査研究委員長。パス建築研究室、電話=098・987・0214

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1972号・2023年10月20日紙面から掲載

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