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2018年8月31日更新

児童視点でブロック塀点検[防災コミュニティー]

[文・稲垣暁]6月の大阪北部地震で、小学生がブロック塀倒壊の犠牲になった。地震が起きた時、まちのいたるところにあるブロック塀から命を守るには、地域や子どもたちはどのような対策をしておくべきだろうか。防犯や地域資源探しを含めた、子どもたちによる地域マップづくりの方法を考える。

防災教育②まちマップを作ろう!

沖縄のブロック塀は、強い紫外線と塩害による劣化、ガジュマル等の植物の侵入による破壊、台風襲来時の猛烈な風圧による耐性の低下など、自然環境から受けるダメージが大きい。6年前の台風時、那覇市で住宅のブロック塀が倒れ、歩道を完全にふさいだ。住宅密集地には、素人施工と見受けられるブロック塀も多い。古い石垣の上に積まれたものもよく見る。どちらも安全性は不明だ。沖縄のブロック塀は、本土よりリスクが高いといえる。

1978年の宮城県沖地震では、小学生を含む18人がブロック塀や門柱の倒壊で亡くなった。1995年の阪神・淡路大震災では、ブロック塀等の倒壊が2468カ所で報告されている。これら被災経験のある地域では一定の対策が取られており、その後の東日本大震災ではブロック塀による死傷は確認されていないという。

一方、経験のない地域は対策が遅れている。ブロック塀の倒壊は、直撃による死傷だけでなく、道路や歩道がふさがることで避難および救助ができず二次災害を引き起こす。渋滞が引き起こされることで、その影響は広範囲に及ぶ。犠牲者の多くは、移動困難者や高齢者、子どもたちだ。


まちなかの危険を調べる浦添市若草児童センターの子どもたち。このブロック塀が倒れた場合、ガードレールのため逃げ場がない。大きな揺れが来た時、どう行動するかを考え、地図に載せることも必要。

行政も支援や協働を
車社会の沖縄では、道を最もよく歩くのは児童・生徒だといってよい。子どもにとってブロック塀は怖い存在のようで、子どもたちと地域チェックのまちあるきを行うと、真っ先に危険を指摘してくれる。だが、残念ながら自治体や学校、地域で具体的な対策は練られてこなかった。

大阪北部地震のあと、ブロック塀に対する関心は高まった。危険なものは早期に撤去し、樹木など別のものに変えることが必要だが、早期の対応は難しい。そこで、ブロック塀の点検を含む地域マップづくりを子どもの視点で行ってほしい。行政は手間や費用面から調査が遅れるなら、子どもや住民と協働でマップを作り早期の対処をすべきだ。住民の意識向上にもなる。「もしもの時、どう動くか」まで盛り込み、行動につなげたい。

チェック項目は、ブロック塀の長さ、高さ、支えとなる構造物の有無、土台の状況、ひび割れや傾きなど見た目の劣化、植物の侵入具合などだ。古いブロック塀は亀裂などから侵入したゴキブリが大量の巣を作っていることがあり、衛生面や夜間避難の点検も兼ねて日没後に行うと、身近な危険に対する関心はより高まる。行政の支援があればなお有効だ。


人通りの「多い」道もチェック!
子どもたちによる防犯・防災マップづくりが盛んになった。基礎的なマップができたら、次は「考えるマップ」を作ろう。子どもや地域住民の注意力と危険回避力は、さらに深まる。

防犯マップでは、「人通りが少ない道」に意識が向きがちだ。2回目は「人通りの多い道」を調べてみよう。人が少ない道では不審者は目立つため、人混みに紛れて子どもを選び、人通りが少ない道に入るのを狙って近づく可能性がある。これらを子どもたちが論理的に考え、人通りの多い道と少ない道の境界を知り、逃げ場所を具体的に理解することが大切だ。まちあるきで、子ども110番の店を子どもが訪れ話を聞くと、双方の意識が高まる。

防災マップなら、視点別に「腰から下」「目線の高さ」「頭より上」に分かれ、まちをチェックしよう。冠水時の溝やマンホール、地震時のブロック塀や広告塔、水タンクなどに対し、危険回避に必要な行動も考える。大規模断水時に使える井戸や河川も調べたい。従来のように水場を危険地帯と考えず、昔から人の生活に欠かせない場であり、危険を学ぶ場でもあることを伝えるべきだ。水をどう運ぶかを考え、地図に載せるのも有効だ。

マップづくりは、初期段階では「点」と「線」に集中しがちだ。次のステップでは、「空間」の理解と行動を考えるマップづくりを目指そう。


2015年に宜野湾市大謝名子ども会が行ったまちチェック。子ども110番になっている民生委員宅を訪問し、ゲームやクイズを行って場所と顔を覚える



文・稲垣 暁(いながき・さとる)
1960年、神戸市生まれ。沖縄国際大学特別研究員。社会福祉士・防災士。地域共助の実践やNHK防災番組で講師を務める。

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1704号・2018年8月31日紙面から掲載

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