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2017年6月16日更新

直下型地震③ 共同の水利がない地区[防災コミュニティ]

前回、建物の老朽化と住民の高齢化が進む一方で指定された収容避難所が遠く、住民が行き場を失う恐れが強い浦添市広栄地区を取り上げた。今回は広栄地区に近い浦西地区で、避難所が遠いだけでなく地域で利用できる水がないため、大規模断水時に大きな困難が想定される問題を考える。

大規模断水時「地域の水」がない

沖縄自動車道西原インターに隣接する浦西地区には、世帯数約670、1800人が生活する。人口増加に伴い原野や畑地を住宅地として開発し、1981年ごろにまちができた。35年が経過し、一戸建ての持ち家住宅が多いことから自治会加入率が60%と高い半面、開発当時からの建物も住民も多くがそのまま高齢化しており、地域では「オールドタウン」化を懸念する。

防災面を市の防災マップを使って分析すると、自治会事務所から半径500㍍内に一時避難所となる公園が6カ所あり、また集落がなかった原野・畑地を復帰後に宅地造成したことで区画整理されており、緊急自動車が入れる道幅が確保されている。

一方、水道普及後の宅地化で、地域には共同井戸も家庭の井戸もない。最寄りの共同井戸は、高速道路を越えた西原地区の「西原アガリガー」「西原洗濯ガー」だ。災害時、ここに水を求めることは難しいが、浦西地区には住民がトイレ用水や消火のため自由に取水できる河川もない。

収容避難所となる浦西中学校は、交通量の多い県道241号線を越え、自治会事務所から徒歩1.3キロにある。人口増加地域で、災害時は周辺の避難者ですぐ埋まる。地区内の住宅は新耐震基準以前のものも多く、今後さらに老朽化が進む。人も建物も高齢化する中で大規模災害が起こると、住居と水の確保は容易ではなく、大きな二次被害は避けられない。


浦添市防災マップに直線距離を示す円と避難場所を入れ、最寄りの水利と収容避難所を示した。浦西地区には共同で使える湧き水がない


高速道路を越えた地区にある、西原アガリガー


公的機関は共助支援を

3月、浦西自治会では自主防災組織の立ち上げに向け、市中央公民館と自治会の主催で勉強会を開催、私が講義を担当し、意見交換を行った。宜野座富夫会長は、水利など浦西地区特有の災害リスクに危機感を持ち、組織づくりを進めてきた。地域住民が共同で使える井戸の設置を行政に訴えたが「理解されなかった」。「インターチェンジがある地域として、高速道路会社に支援物資の流通に関する協働について聞きにいっても『はあ?』という反応で、災害時の想定がなく、地元としてがっかりした」という。
せっかく地域で防災や共助の意識が高まっても、住民は公的機関から井戸水ならぬ冷水をかけられた気分だろう。県のホームページは、浦添市を通る伊祖断層が直下型地震を起こせば大きな被害を出すことを何年も前から明記している。沖縄での直下型地震は、水と避難所の不足で「阪神」「熊本」をしのぐ巨大な二次被災になる可能性があることを、行政と住民とで考える必要がある。

 

「公園に井戸」県外では当たり前

離島県、亜熱帯県の沖縄は、災害時の直接被災に加え、大きな二次災害の可能性が高い。年間通して高温多湿で、年3分の1が熱帯夜(25度以上)であることは、大規模停電・断水で熱中症のほかトイレや腐敗物からの感染症、害虫害獣等のリスクの高さを意味する。衛生管理には大量の水が必要だが、地域で自由に使える水は圧倒的に少ない。地下水が豊富な島なのに多くの井戸が閉鎖され、河川も使えない。
本土の都市部では、誰もが親しめる井戸が公園等に設置されているのが当たり前で、井戸付きマンションも売れている。沖縄本島中南部の都市は、首都圏都市部並みの人口密度にもかかわらず、その発想がない。
浦添市内の住宅開発地でも、小湾自治会のように戦後まもなく開発された地区は各家庭に井戸があり、今も散水等に使われる。古い井戸とともに沖縄の伝統的な暮らしを見直すことが、地域に災害耐性をもたらし文化継承にもつながる。地域住民は浦西地区のように資源分析して現状を行政に訴え、行政は自主防災活動支援として誰もが使える地域水利の確保を検討してほしい。


神戸市の公園に設置される、子どもも遊べる井戸

 


[文]
稲垣暁(いながき・さとる)
1960年、神戸市生まれ。沖縄国際大学特別研究員。社会福祉士・防災士。地域共助の実践やNHK防災番組で講師を務める。


 

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1641号・2017年6月15日紙面から掲載

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