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2017年10月20日更新

夜間避難① 暗黒被災都市の恐怖[防災コミュニティー]

[文・稲垣暁]夜間に地震が起こり、大規模停電になった際、家からの脱出と避難は困難を極める。完全停電すると、30センチ先すら見えない。家が倒壊していなくても家具等の転倒で位置がわからなくなり、扉がふさがれることもある。今月から3回にわたり、夜間避難の課題と対策を考える。

闇夜に垂れる電線避け歩く

夜間の地震で完全停電すると、特に寝ている時は自宅内でも扉の方向すらわからなくなる。懐中電灯の所在がわからず、メガネやコンタクトレンズなど普段私たちが身につけているものも飛び散る。家具の転倒や割れた食器の破片は、行く手を阻む。人は自分がどこにいるかわからなくなるとパニックを起こすことがわかっており、こうした室内の状況でさらに判断が難しくなる。

ようやく自宅を脱出して町に出ると、さらに恐怖心は高まる。どこに道路の亀裂や倒壊物があるかわからない。落下物や電線が垂れ下がる中を避難所に向かうことになる。視力が低いと、めがねやコンタクトレンズがない場合、歩くことすら恐ろしい。歩道の段差や縁石のでっぱりなども見えない。

やがて、親戚知人の安否を確認する人や津波を恐れる人などによる自動車渋滞が各所で発生する。ヘッドライトの明かりで明暗の差が大きくなり、足元がかえって見えなくなる。ガードレールのある歩道は、途中で亀裂などがあった場合、そこから車道に出ることも引き返すことも難しい。多数が行く方向に人は付いていくため、後からの群衆で将棋倒しになることもある。車いす利用者や子ども連れ家族は深刻だ。


夜間の久茂地地域の交差点。多くの電線が張り巡らされている。地震で電線が垂れると、停電時はまったく見えない。



避難方向すら不明

22年前の阪神淡路大震災発生直後、私はかろうじて自宅を脱出したものの、軽いパニックになっていたこともあり、どう動けばいいのか判断できなかった。暗闇で住民の姿も見えなかった。一帯に猛烈なガス臭があり、引火すれば大変なことになると思い、山の方向に逃げた。幸い、神戸は坂道で海側と山側の判断がついた。

途中、倒壊しているらしい建物があることはわかった。だが、驚くほど静かで、耳を澄ますと時折ガラガラと何かが落ちるような音だけで、声は聞こえない。少しして振り返ると、数カ所から火の手が上がるのが見えた。まちの悲惨な状況がわかったのは夜が明け始めてからで、近隣住民の救助もそこからスタートした。

一昨年、那覇市久茂地地区で夜間避難訓練が行われた。車や店舗の光でまちなかはけっこう明るいのに、歩道の段差や一時避難所の緑が丘公園入り口にある車止めチェーンはまったく見えず、平時でも夜間は非常に危険なバリアーがあちこちにあることがわかった。那覇新都心では住民らが集まって夜回りをかねて定期的に歩いていており、こうした機会を増やすことが必要だ。

 

夜間避難、ベビーカーより抱っこ

久茂地での夜間避難では、車いすのほかベビーカーやシルバーカー(カート状の手押し車)も危険なことがわかった。停電時、ベビーカーなどは位置が低いので他者からわかりづらい。群衆で逃げている時、道路の亀裂などで立ち往生すると将棋倒しの餌食になりそうだった。上からの落下物にも対応できない。夜間の避難は、小さな子はできるだけ抱くかおぶる方がよい。
一時避難所指定されている公園も、バリアーは多かった。車止めのパイプのほか、入り口にかけられたチェーンは平時の夜間でも見えなかった。新都心公園等にも同様のチェーンがあり、照明はあっても気が付きにくい。あわてている人にとっては、凶器だ。舗装されていない道路はかなり凸凹があり、暗闇の状況では転倒の原因になる。高齢者は転倒で寝たきりになると、地震そのものではせっかく生き残ったのに、二次災害で死亡する事態になる。
阪神淡路大震災と熊本地震は夜間に発生したため、救助など各種の「公助」が遅れただけでなく、地域の自主防災組織も満足に動けなかった。阪神では通信システムが破壊され、神戸の情報が中央に伝わったのは発生30分後だった。NHKの震度情報も、発生当初は神戸だけ表示がなかった。夜間は、文字通りさまざまな「盲点」がある。高齢者や乳幼児など支援が必要な人ほど、一度は夜間避難訓練をしておくべきだ。


ベビーカーは位置が低いため見えにくく、将棋倒しや落下物で二次被災しやすい。夜間は特に危険=2015年8月、久茂地地域避難訓練で。




稲垣暁(いながき・さとる)
1960年、神戸市生まれ。沖縄国際大学特別研究員。社会福祉士・防災士。地域共助の実践やNHK防災番組で講師を務める。



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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1659号・2017年10月20日紙面から掲載

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