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2017年8月18日更新

自動車避難② 移動困難者[防災コミュニティー]

[文・稲垣暁]前回、移動困難者の自動車避難を地域で優先する浦添市港川自治会の試みを紹介した。災害時、高齢者や障がい者、乳幼児など自動車でなければ避難が難しい人が避難できるよう、避難のタイミングをどう判断し、渋滞や混雑をどう減らすべきだろうか。

極力早く動く、地域で支える

2011年の紀伊半島豪雨で、和歌山県では高齢化が進む地域を中心に47人が亡くなった。その中に、自動車での避難中に亡くなったケースがある。

妻(77)は軽度認知症の夫(80)を乗せて自動車で避難所に向かう途中、道路の冠水で立ち往生した。妻は膝まである水をかき分けて助けを呼びに行き、消防団員が駆けつけたが車は水没。翌朝、夫は遺体で見つかった。この豪雨では、多くの被災自治体で避難勧告・指示が出ていない。

近年の豪雨災害は、避難勧告・指示が間に合わない。昨年8月、岩手県で高齢者施設が浸水、9人が亡くなった。避難準備情報は出されたが、避難勧告・指示はなかった。行政に災害対応の職員が足りないうえ、夜になり暗い中で大雨が降る道を避難させることはかえって危険と判断したためだ。急激な大雨に勧告・指示を出すタイミングは難しく、どこの自治体も頭を抱える。大雨で雨量計や水位計が壊れ、情報が停止することもある。移動困難者は避難準備情報で避難する必要が明確になった。

暴風雨下の避難は、自動車であっても難しい。ドアの開閉時に突風が吹いて大けが、降車後に大雨の中を避難室に行く際の転倒、暴風雨で避難室はシャッターが下ろされ入り口がわからずずぶぬれになり体調を壊す、といった課題がある。特に夜間は危険だ。


かつて那覇市の避難所だった市民会館。豪雨時はどこが入り口かわからず、段差や障害物も多い。暗い中で転倒しケガもしかねず、ずぶぬれで体調不良にも。


リスク高い沖縄

一方、地震や津波では多くの人が一斉に逃げる、あるいは親戚知人を探すため、混雑や渋滞が起こる。東日本大震災では車に乗った人が渋滞につかまり、多くが津波の犠牲になった。昨年の熊本地震では、津波注意報に自動車で避難した住民が渋滞で動けなくなり、車を乗り捨てたため大渋滞が発生した。多くの移動困難者は自宅から動けず、渋滞や混雑もあって避難をあきらめた。

災害時、高齢者や障がい者は道路の亀裂や激しい渋滞で歩道や道路を進むことが難しい。だが、自動車を使うと渋滞に巻き込まれる、避難所に駐車できる場所がないなど、多数が行き場を失う。

沖縄の場合はさらに深刻だ。中南部都市圏の人口密度は、那覇市8000人、浦添市5800人。人と車と建物が首都圏と同等の高密度状況にある。突発的災害時の混雑や混乱は熊本地震(熊本市の人口密度1800人)の比ではなく、首都圏直下型地震と同等のリスクを抱えている。救助車両の立ち往生も考え、自動車使用について自治体、地域、家庭で話し合う場が必要だ。

 

「車いす利用者は取り残される」大きな不安

災害時の自動車避難について、移動が困難な状況にある人はどのような思いを持っているのか。ある車いす利用者は「自力避難ではわずかな段差や道路の亀裂、放置車両で進めなくなることもあり、自分たちが他の避難者の邪魔になってしまうことがあることが辛い」という。「私たちは低い姿勢なので、あわてている時や夜間は健常者の視界に入りにくく、立ち往生した時など後から将棋倒しにされる可能性もある。自力での避難は非常に恐ろしいことでもある」。
やはり、自動車での避難がよいのだろうか。その車いす利用者は「渋滞で人々が車を乗り捨てた時、車にいる自分はどうなるのか。車いすは後部トランクに積むが、渋滞中はトランクの開閉が難しい。さらに、東日本大震災では誰かをおんぶして逃げていて、津波に追いつかれて一緒に亡くなった、あるいは仕方なく置いて逃げたという話を聞く。そうなると、家族や友人に渋滞で自分も連れて逃げてほしいといいづらい。自分だけ車に残ることを選ばざるを得ないかもしれない」。
障がい者に負い目を持たせる社会であってはならない。対策はないのだろうか。「そういう時のために、地域の共助と自動車避難についての情報共有があってほしいと思う。あそこの家族は3人家族で、足の悪い子がいるな、とか知ってもらうだけでも命をつなぐことができるのではないか」。


夜間の停電時に車いすでの避難は恐ろしい。歩道の先が見えず、もし立ち往生してもガードレールで逃げられない。



防災コミュニティ−|稲垣暁さん[文]
稲垣暁(いながき・さとる)
1960年、神戸市生まれ。沖縄国際大学特別研究員。社会福祉士・防災士。地域共助の実践やNHK防災番組で講師を務める。



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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1650号・2017年8月18日紙面から掲載

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