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2017年11月17日更新

夜間避難② 歩道とガードレール[防災コミュニティー]

[文・稲垣暁]夜間の地震による避難では、本来なら歩行者を守るための設置物が大きなバリアーになることがある。歩道のガードレールや車道と区切る縁石だ。暗い中で焦ったりパニックになっていることで視界から消えたり、亀裂など新たなバリアーと複合して二次災害を生む。

立ち往生や将棋倒しの危険

沖縄の道は歩きにくい。どの道も自動車の通行が多いうえ、歩道がない道、歩道が途中でなくなり大きな段差になっている道が目立つ。幅が狭いのに電柱や駐車車両のはみ出しなどでさらに通りにくくなっている歩道、舗装や工事の仕上げがいいかげんな道も多く、怖い思いをすることがある。災害時、しかも夜間となると、危険度は高まる。

特にガードレールがある細い道は要注意だ。夜間の避難時、前方も足元も見えない状況でガードレールのある歩道を進んでいて、もし路面の亀裂や倒壊物があり立ち往生した場合、ガードレールの切れ目がなければ危険な状況に陥る。後続に大勢の避難者がいると引き返せない。転倒したら将棋倒しが起こる。

車いすやベビーカーなどは視界に入りにくいため、さらに危険だ。駐車場の入り口などは歩道が道路側に傾いていることが多く、車輪を取られる。逃げるスピードが落ち、後続する人波が減速できず追突する可能性がある。

避難者は慌てており、パニックになっていることもある。沖縄の都市部の人口密度は首都圏の大都市並み(那覇市で約8千人/1平方キロメートル)で、大規模な地震や津波の時は、道路は人と車であふれかえるだろう。


沖大生と行った夜間避難路チェックで。ガードレールがある狭い歩道だが、いたるところで自動車が歩道を占拠、車いすは進めない。立ち往生すると、避難を急ぐ後続の人たちの将棋倒しを誘発する。



歩いてチェック

歩道の縁石は、夜間は極めて見えにくい。交差点前や自動車の出入り口など、歩道は低いのに縁石だけが飛び出している場所は特に危険だ。停電している夜間はまったく見えず、慌てているため気が付きにくい。転倒すると、他の避難者も巻き込んだ大けがを負うことがありえる。

災害時に負傷すると、医療が限られるだけでなく、断水で傷を洗うこともできない。避難生活がより困難になり、場合によっては致命的な事態になる。

こうした状況に対し、どのような対策を考えるべきだろうか。やはり、車社会の沖縄では県民がまちなかを歩く機会が少なく、危険な状態になっている場所を知らないことが多い。できるだけ歩いて、道の状況を知っておくことが大切だ。

沖縄は、台風以外の災害はないと信じられてきた。このことが、道路や歩道整備のあり方にも影響を与えてきたのではないか。地上(気象)も地下(地震)も地球の活動期に入ったとされ、「沖縄は大災害が少ない」という神話は通用しない。避難中に死傷する事態は絶対に避けたい。そのためには、住民と行政が一体となって過去の経験則を捨てた取り組みを行う必要がある。

 

子どものマップ作りが地域を動かす

子どもたちが地域を歩いて道路や危険な場所をチェックし、趣向を凝らした地域マップづくりに取り組む児童館や児童クラブが増えている。夜間に道路チェックを実施した児童館もある。地域の高齢者に教わりながら実際に車いすに乗って歩道を移動しながらチェックしたもの、地図上に場所の状況を書いた紙を何層も貼り合わせて立体的な情報提供を試みたもの、子どもたちが作ったイメージキャラでチェックポイントを訴えるものなど、見ていて非常に楽しい。全国コンクールに挑戦する機運も高く、受賞数も増加している。
こうしたマップづくりは、子どもたちの地域理解やリスク管理だけでなく、地域や関係機関と連携することで、大人が気づきにくい地域の危険箇所を地域で共有する機会になる。社会福祉協議会が関わり、高齢者や障がい者の施設と協働で行うことにつながった事例もある。これにより、移動に困難を抱える人たちが地域とコミュニケーションを取りやすくなり、避難訓練に参加するきっかけになった。地域で把握されていなかった要支援者が発見され、自治会の意識改革にもつながった。
地域で子どもの成長に関わる人たちは、さまざまな課題解決を大人だけで議論するのではなく、おもしろい情報を持つ子どもたちの力も借りてみてほしい。地域の課題を子ども視点で知ることにつながる。


浦添市若草児童センターの子どもたちと行ったまちあるきと防災マップづくり。平時は人を守るガードレールは、災害時は途中の障害物で人を閉じ込め、けがをさせてしまう恐れがあることも知っておきたい。




稲垣暁(いながき・さとる)
1960年、神戸市生まれ。沖縄国際大学特別研究員。社会福祉士・防災士。地域共助の実践やNHK防災番組で講師を務める。



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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1663号・2017年11月17日紙面から掲載

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