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2017年9月15日更新

自動車避難③ 車での生活[防災コミュニティー]

[文・稲垣暁]首都圏レベルの人口密度に加え全国一の自動車増加率の沖縄都市部では、大規模災害時の指定避難所の数がまったく足りない。そのため、自動車での避難生活(車中泊)が余儀なくされる可能性が高い。家庭や地域、行政はどのような対策を考えるべきだろうか。

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「車中泊」前提の避難モデルを

2011年の紀伊半島豪雨で、和歌山県では高齢化が進む地域を中心に47人が亡くなった。その中に、自動車での避難中に亡くなったケースがある。

過去の大規模地震では指定避難所に避難者が殺到、通路も人があふれた。避難所に入れず、自家用車や損壊した自宅にとどまる人が相次いだ。阪神淡路大震災では筆者も避難所に入れず、壊れた倉庫の軒先で過ごした。

高齢者や障がい者は自力移動が困難なうえ、亀裂や激しい渋滞のため、歩道や道路を進むことが難しい。自動車を使えても、渋滞で到着が遅れる、駐車場所がないなどの理由で、多くが指定避難所に行くことをあきらめる。移動困難者は自宅から出ることができないこともある。

余震が怖く、誰もができれば自宅にとどまりたくない。過去のデータから、人口の半数が避難所に行くことが分かっている。新潟・中越や熊本のように短期間に震度6以上の地震が続くこともある。熊本では、最初の震度7のあと避難場所から自宅に戻った13人が2回目の震度7で亡くなった。自動車を持つ家庭は、多くが車中泊を選んだ。

中越、熊本地震では震災後に体調不良で亡くなった人が死者の76%を占める。多くは車内でのエコノミークラス症候群や一酸化炭素中毒を発症した高齢者で、車中泊は高いリスクを伴う。


熊本地震で、自動車避難車が集まった公共施設の駐車場。場所の取り合いになり、片付けや買い物で移動する日中も所有物を置いて「キープ」した=2016年7月4日


避難所は全く足りず

那覇市(人口32万人)に人口が近い県庁所在地6都市を比べると、那覇市の人口密度は約8千人と圧倒的に高く、2番目の奈良市の6倍以上だ。一方で指定避難所数は最も少ない(69カ所)。沖縄県の登録自動車台数を20年前と比べた増加率は全国1位で、自動車は生活に欠かせない。大規模災害時、多くの人が自動車を使うことは間違いない。
熊本地震では、公共施設の駐車場が車中泊者で取り合いになった。阪神や東日本では、車中泊者が指定避難所の配布物資を受け取ろうとしてトラブルが起こった。行政指定の避難所に入れた人だけ支援があるのは不公平だ。
熊本地震の避難者に聞くと、多かったのが「足を伸ばして寝たい」だった。子どもたちにとってテントが家族団らんにつながったという話もある。私は県内各地の講演で、災害時の車中泊への備えとテントの併用を勧めている。仮設トイレを設置したオートキャンプ形式の避難場所を指定するなど、ニーズに合った支援が望ましいと考える。
他県からの支援が難しく、人・車・建物が高密度に集中する沖縄都市部では、コインパーキングの活用や物資支援など車中泊を前提にした避難モデルを検討すべきだ。

 

新都心に数万人集まれば、どう支援?

那覇新都心には、防災公園の機能も持つ公園がある。4万4千人が3日間しのげる量の生活用水や飲用水、非常食、簡易トイレ、紙おむつなどを市が地下に備蓄する。中央の大きな橋は、緊急自動車が通行できる。昨年11月、地元の銘苅小学校区まちづくり協議会で、大地震と津波が襲来した場合の協議会および新都心公園の役割について、講義とワークショップを行った。
那覇新都心には住民2万人のほか、1万5千人の就業者、1日延べ10万人以上の買い物客が滞在する。外国人客も多い。学校は5校ある。そこに、被災した国道58号以西の住民1万2千人および就業者1万3千人が避難し、さらに若狭・前島地域から行き場を失った住民が新都心を目指す想定で討議した。限られた備蓄のほか、地域の持つ潜在力など新都心の資源をどう生かすか、地元住民は自分たちの生活再建と並行してどう支援を行うか、そのために平時からどのような取り組みを行うか、グループで考えた。高齢者や子どもなど弱者を優先する支援のあり方や情報共有が課題に上がった。
2回目の今年は11月に予定している。大規模災害では大半の市民が避難所に入れない現実を見据え、膨大な数が予想される自動車避難者とテントなど公園生活者について考えたい。道路や駐車場、公園、物資、水源など新都心の地域資源でどう助け合い、震災での地域コミュニティーの結束をどう高めるか、討議する。


昨年、銘苅小学校区まちづくり協議会で行った、災害時の那覇新都心住民の行動を考えるワークショップ。



[文]
稲垣暁(いながき・さとる)
1960年、神戸市生まれ。沖縄国際大学特別研究員。社会福祉士・防災士。地域共助の実践やNHK防災番組で講師を務める。



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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1654号・2017年9月15日紙面から掲載

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