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2022年10月21日更新

【第8回沖縄建築賞】奨励賞 一般建築部門/「あおみどりの木」(那覇市)/根路銘安史氏(58)/アトリエ・ネロ

沖縄県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」。全34作品(住宅部門14件、一般部門20件)の中から、第8回の入賞作品が決定した。奨励賞一般建築部門には富山晃一氏設計の「ホテルストレータ那覇」と、根路銘安史氏設計の「あおみどりの木」が選ばれた。

浮島通りにある「あおみどりの木」。外壁は建物が建設された当時のあおみどり色に塗り直している
 
70年前の同建築物。建設当時は薬局兼住宅として使用されていた



奨励賞 一般建築部門
「あおみどりの木」(那覇市)


場所・地域の記憶を喚起

70年前の姿を再現

「あおみどりの木」は1952年に建設された2階建て木造赤瓦の建物を改修。70年前の姿を復元し、現在はアートギャラリーになっている。

室内の壁は、極力70年前のものを残しつつ、シロアリの被害を受けた柱や梁などの木材には、古材を使用し補強。建物の強度面だけではなく、建物が持つ雰囲気を壊さないようにも配慮している。設計者の根路銘さんは「既存の建物を生かして次世代に受け継いでいくのも建築の大切な役割」と話した。

床の間を持つ2階の和室は、間仕切りをなくして広々とした空間に。また床の間の壁や床は、改修時に学生らと琉球漆喰を塗るなど伝統技術の継承にも貢献。

一方、外壁は建設当時の淡いあおみどり色に。さらに、窓枠や窓の手すりも70年前に使っていたデザインに作り替えた。

審査では「建物を復元したことで70年前の地域や場所の記憶などを呼び起こす。時代を超えて通りの象徴的な建物となり、貴重な存在」と評された。
 


1階ギャラリー。柱や梁には古材を使用


広々とした和室。写真右側の床の間の床や壁には琉球漆喰が施されている



設計者/根路銘安史氏(58) アトリエ・ネロ

1952年完成の木造赤瓦屋根の建物を改修した『あおみどりの木』。歴史ある建物を使い続けることが今後も評価され、歴史や文化を感じる沖縄の建築や街の景観が作り出されていくことを願う。




審査講評・下地洋平氏(前回一般建築部門正賞受賞者)

建物の活用・保全に道筋

老朽化で建て替えが検討された築70年の木造赤瓦の2階建て建築物を、大規模な修繕工事を施して薬局だった当初の外観に復元し、3代目の現店主がギャラリーとして保全活用した作品。

建物を取り壊すとその記憶は実に儚く消えてしまうが、この作品は逆に記憶を呼び起こし、ギャラリーとして活用することで過去と現在が混じり合う文化の発信拠点となっている。

保全技術では、火災要因になりうる古い電気配線の交換、合板による耐震要素の追加、腐朽した柱への添え木、蟻害を受けた梁材の取り換えなどで防災面の強化と長寿命化を図っている。そのほか、土間コンクリートの金継ぎ、琉球漆喰塗りなどのワークショップなどで伝統技法の継承にも取り組んでいる。

本作品により古い建物の活用・保全技術、伝統技法の認知が高まり、地域歴史文化の醸成、特色ある景観やまちづくりへとつながることなどが選考基準に当てはまるとして高く評価した。



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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1920号・2022年10月21日紙面から掲載

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