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2024年7月19日更新

白く美しくふわふわ コルディの羊たち|ラグの世界⑥

イランやトルコなどの中東で手織りされるラグを取り扱う、那覇市西の「Layout(レイアウト)」のバイヤー・平井香さんによる買い付け旅記。今回は良質なウールが取れると評判の「コルディ」の羊に合いにイラン北西部の町・ケルマンシャーへ向かった。

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エピソード⑥ イランでの買い付け旅記

イラン北西部「ハマダーン」からさらに西へ。「ケルマンシャー」へ羊を探しに!

ギャッベ(カシュガイ族などが織る毛足の長いラグ)に関わる現地の人たちとウールの話をすると、必ず「コルディ(=クルド)の羊が一番いい」と言う。そこで、クルドの人たちが暮らすケルマンシャーという町へ向かった。

車で走っていると羊飼いとすれ違う。堂々と車道を横切っていく羊たちに、人と羊が共存する場所だと実感する。
 
イランでも「良質なウール」と有名なコルディの羊たち。その羊が育つケルマンシャーは緑豊かで涼しく過ごしやすい。ここで育つ羊たちから良質な毛が取れるというのはよく分かる


名物ジギャルは美味!

お昼ごろにケルマンシャーの町へ着いたので、おいしいと評判の店で「ジギャル」を食べることに。ジギャルは、ケバブの中でも羊のレバーの串焼きのことで、焼きたてのナンに挟んで食べる。イランでも早くて安くておいしい、ファストフード的感覚で人気がある。

ちなみに、日本でもよく聞くようになった「ケバブ」だが、ペルシャ語ではキャバーブと言い、串焼きの肉を表す。イランでは羊肉や鶏肉の串焼きを、ご飯と焼いたトマト、生の玉ネギと香草と一緒に食べるのがオーソドックス。回っているお肉をそぎ切りにするのはトルコのドネルケバブと呼ぶもので、国によってのスタイルがある。
 
羊のレバー焼きをナンで挟んで食べる「ジギャル」。焼き鶏のレバーに塩を振ったような味


羊と共に生きる遊牧民

さらに車を走らせると広い平原に白いテントが見えた。車で近くまで来ると、テントの横には白い羊がたくさん!

その遊牧民のファミリーに話を聞きたいと言うと、OKしてもらえた。両親と息子2人のケルマンシャーに住むクルド人で、ジャンプールという支族の一家。1年を通して遊牧をしている。冬が近づくと南部のアフワーズの方へ移動するそうだ。

彼らの一日は羊とともにはじまる。朝の5時~6時に羊にご飯を食べさせるために山へ放牧しに行き、11時ごろ休憩。暑い時間は羊を休ませて、少し涼しくなってきたらまた山へ放牧させに行く。という生活だ。生活に必要な水は州の遊牧民センターがトラックで届けてくれる。

大きな山を背に、羊とヤギの囲いがある。一つは赤ちゃん羊だけが集められ、まるで保育園。小さくてかわいい羊たちが日陰で寄り添っている。その隣には、ママたちだけの囲い。まだミルクを頻繁に飲ませないといけないので放牧にはいかず、定期的にミルクを飲ませるようだ。 

ここの羊こそ、探していた「コルディ」の羊。顔が茶色で体は白く、お尻には脂肪がしっかりある。特にママ羊の毛はきれいな白で、やわらかくふわふわ! この辺りは緑も豊富で気候も涼しく過ごしやすい。ここですくすく育った羊が良質な毛になるというのはよく分かる。

遊牧民のお父さんによると、南部の羊は暑さに強く、体が小さいそうだ。ここのコルディの羊は暑さに強くないため夏は涼しいところに移動する必要がある。だが、毛はとても白くて美しく、主にラグに使われるのだそう。

大自然の中を、ものすごい数の白いふわふわが、きれいな列を作って移動しているのが遠くに見える。ケルマンシャーでも、すてきな人たちと羊たちとの出逢(あ)いがあった。
 
クルドの遊牧民ファミリーと著者。彼らは白いコットン製の大きなテントで暮らしている
 
 

執筆者/ひらい・かおり
ラグ専門店Layout バイヤー
那覇市西2-2-1 電話/098・975・9798
https://shop.layout.casa

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2011号・2024年07月19日紙面から掲載

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