地域情報(街・人・文化)
2023年4月14日更新
家族のように暮らす4世帯|コミュニティアパートができるまで①
文・写真/守谷光弘(「コミュニティ・アパート 山城のあまはじや」オーナー)
家族のように暮らす4世帯
今年1月に本紙の「こだわり賃貸」の取材を受け、拙宅「コミュニティ・アパート 山城のあまはじや」を取り上げていただきました。
私が企画したコミュニティ・アパートは、私自身の部屋を含めて4世帯の共同住宅で、一般的なアパートとの違いは、建物中央に4世帯で共用できるキッチンとダイニング、リビング、トイレを備えていることです。よくシェアハウスと勘違いされるのですが、シェアハウスとの大きな違いは、各世帯にもそれぞれにキッチン、洗面所、バスルーム、トイレ、ランドリールームを付帯することで、共用スペースを使わずとも各世帯が完結でき、プライベートの時間と空間が確保される点です。
もう一つのこだわりは、その共用スペースの床を土間にしている点です。元ホテリエの私にとって、共用スペースはシティーホテルやリゾートホテルで言うロビーの位置づけなのです。つまり暑い日には涼みに入り、用を足したければトイレに入って構わないような、いわば公共の場所のように来訪者も気兼ねなく入れる場所にしたかったのです。よそのお宅にお邪魔する際に靴を脱いで上がるのは、訪問する側も迎える側もそれなりの覚悟や準備が要りますから、その小さなハードルを取り去りたかったのです。
あまはじや1階の真ん中にある共用スペースで、入居者と共に食事会をした時の1枚。みんなで作ってみんなで食べることで、自然と絆も深まる
あまはじやの外観。伝統的な赤瓦ぶきの屋根に焼き杉の外壁の木造2階建て。敷地と道路を隔てる塀はないる
地域の課題解決 アパート事業から
コミュニティ・アパートと名付けたのは、全国的に認知度が上がっているコミュニティカフェに由来しています。
私の知るコミュニティカフェは、その地域での居場所だったり、学びの場だったり、情報交換や交流の場であることが多く、その背景にはその地域の課題があって、カフェがその課題を解決する手段になっています。地域の課題解決にあたってボランティアでは持続できないような時に、カフェの事業性がこれを持続可能にするのです。このように地域の課題をビジネスの手法で解決することを、コミュニティビジネスと呼びます。
私が考えるコミュニティ・アパートは、このコミュニティカフェの考え方と同様に、アパート事業を通してアパート住民と共に地域の課題解決に携わろうとする試みです。例えば、糸満市山城のような過疎化の進む農村集落では、年中行事の運営が難しくなったり、集落内の清掃が行き届かなくなったり、自治会費の減収によって集落の設備を維持できなくなったり、独居の高齢者に目が届かなくなったりするわけです。そのような限界集落には、集落の存続のためにも子どもがいるような若い家族世帯の居住が必要ですし、力仕事をできるような人も必要なのです。地方創生に必要と言われる「よそ者、若者、馬(ば)鹿(か)者」の発想にも近いですね。
来月以降はもう少しハード、ソフトの詳細や私の思いをお伝えしようと思います。
もりたに・みつひろ
1966年東京都世田谷区出身。2007年より沖縄県在住。「コミュニティ・アパート 山城のあまはじや」オーナー 兼 管理人 兼 住人。糸満 海人工房・資料館を運営するNPO法人ハマスーキ理事。2020年、小規模土地分譲『等々力街区計画』の街区デザインでグッドデザイン賞受賞
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1945号・2023年4月14日紙面から掲載