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2023年3月24日更新

鉄筋コンクリート造の寿命を延ばすには 点検をして劣化要因を遮断|復帰50年で振り返るコンクリートと沖縄④

「庭や駐車場に大きなコンクリートの塊が落ちていた」。築古の鉄筋コンクリート(RC)造の家でたびたび耳にする“ヒヤリ話”だ。築20年未満でも劣化が激しい建物は少なくない。長く住むためには防水など保護や修繕が大切。県内で建物の修繕工事を生業とする琉球ゴーレックス(株)の知念礼子代表、知念公男相談役、アクロス琉球㈱の首里淳治代表にRC造の劣化の原因や最新の防水製品などを聞いた。


RC造が主流の沖縄だが、屋上防水などの“保護”をしていない家は多い
RC造が主流の沖縄だが、屋上防水などの“保護”をしていない家は多い


潮風、紫外線、風雨などで劣化

2019年、那覇市前島に立つ鉄筋コンクリート造(RC)のアパートで、廊下が崩落するという事故があった。1973年ごろに建てられ、事故当時は築46年だった。

沖縄タイムス 2019年10月29日付紙面
沖縄タイムス 2019年10月29日付紙面


鉄筋コンクリート造の住居の法定耐用年数は47年とされており、先の物件はそれに満たない。原因はコンクリートの材料に、塩抜きが不十分な海砂が使われていた恐れがあること、維持管理を怠ったことなどが挙げられる。

「きちんとした材料を使っていても適切な維持管理をしていなければ、15年と持たないケースもある。特に沖縄は一年を通して強烈な日差しが注ぎ、海風にさらされることから、建物にとっては過酷な環境」と、防水工事を手掛けて58年の琉球ゴーレックスの知念礼子代表は話す。

コンクリートのひび割れは、水や炭酸ガスの進入路となって漏水や鉄筋腐食、中性化などを引き起こし、さらには浮き・欠損など建物に致命的なダメージを与える。漏水や美観の問題だけでなく、落下による危険も生じる。



鉄筋コンクリート造劣化のメカニズム

鉄筋コンクリート造劣化のメカニズム  建築後、数年たつと紫外線や風雨、大気中の二酸化炭素などでコンクリート表面の劣化が始まる。放置するとひび割れなどが起こり、そこから水や塩分が浸入し内部の鉄筋をさびさせる。さびた鉄筋は膨張し、内側からコンクリートを破壊する

建築後、数年たつと紫外線や風雨、大気中の二酸化炭素などでコンクリート表面の劣化が始まる。放置するとひび割れなどが起こり、そこから水や塩分が浸入し内部の鉄筋をさびさせる。さびた鉄筋は膨張し、内側からコンクリートを破壊する
 

琉球ゴーレックスの知念礼子代表(左)、知念公男相談役
琉球ゴーレックスの知念礼子代表(左)、知念公男相談役



築古でも強化可能

耐用年数を延ばすには、「表層を改質・強化して、水や塩分の浸入を防ぐことが重要。防水工事は雨漏りを防ぐだけでなく、建物の長寿命化にも極めて有効」と知念代表は力を込める。

沖縄市の建設会社・アクロス琉球の首里淳治代表は「防水工事は新築のうちにやれば耐久性の確保に、既存なら劣化の抑制につながる。最近では、防水をしながら劣化したコンクリートを改質して強化してくれる製品もある。劣化のサインが見られたら、早めにプロに相談を」と話す。
 

アクロス琉球の首里淳治代表
アクロス琉球の首里淳治代表



「まだ大丈夫」が危険

RC造が広まったのは戦後。1950年代後半に米軍から普及して、台風やシロアリに強いと評価を高めた。その後、琉球政府も普及を後押ししたことで急増した。

琉球ゴーレックスの創業者で現在、相談役の知念公男さんは「創業当時(1965年)、RC造の家は県民の憧れだった」と話す。

「そのころは営業をしたって門前払いでしたよ。『こんな立派な建物に防水工事なんて要らない』ってね。でも、雨漏りするRC造は結構あったと思う。当時は防水やメンテの意識が低かったので、経年での雨漏りは『しょうがない』という感じだった」

スクラップ&ビルドの時代を経て、ストック活用が叫ばれるようになったが、「わが家はまだ大丈夫だろう、と思っている人が少なくない」と警鐘を鳴らす。「例えば、仕立てたばかりの新しい背広を着て、傘も刺さずに雨の中を歩く人はいない。その背広の何百倍もの値段の住まいが、雨ざらしで良いはずがない。新築時にきちんと防水をして8~10年ごとにしっかり点検・修繕をすることで50年、100年と快適に暮らせます」と知念相談役は力を込めた。



RC造劣化のサイン(写真提供/琉球ゴーレックス)
 

チョーキング
コンクリートや塗装面の表面に触れると、手に白い粉が付く状態。塗膜劣化が起きている状態のため、環境から建物を守る機能が弱まっている

 

湿気が多く、雨漏りもある
室内の湿気がひどくなり、雨漏りもするようになったらコンクリート内部に隙間ができていると考えられる。すでにかなり深刻な状態になっている恐れもある

 

ひび割れ
ひび割れが目視できる状態なら、コンクリート内部の深いところまで水分が入り込んで、鉄筋の腐食がじわじわ始まっている

 

爆裂・崩落
コンクリート内部の鉄筋が腐食して膨張。コンクリートの爆裂や崩落が始まっていて、大変危険。すぐ専門家に相談を!



 

 ■各社イチオシの防水製品 

「Gセラ工法」 琉球ゴーレックス(那覇市)
「Gセラ工法」施工前
施工前             

「Gセラ工法」施工後
施工後

表層強化し耐久性アップ&新築の美観

「Gセラ工法」は琉球ゴーレックスと兵庫県の会社が共同開発した、沖縄仕様の無機質系建材表層強化剤を用いた工法だ。知念礼子代表は「Gセラは、水よりも深くコンクリート、石材に浸透・反応して水隙(すいげき)や空隙(くうげき)を充填(じゅうてん)。組織を緻密化して、吸水を防ぐ。また、アルカリ性も回復させる。同工法で修繕したコンクリートの表層は、緻密で安定した保護層によって水の浸入を防ぎ、中性化や塩害を防止。建物の耐久性、耐汚染性を大幅に向上させることができる」と説明。

瓦やれんが、石材、タイルなどにも使え、色や質感を変えずに表層を強化。「黒ずんだ琉球石灰岩に施工すれば白くて美しい風合いがよみがえり、その状態が長く続く。新築でも築古でも、長寿命化させたいなら、まずご相談ください」と話した。

那覇市久米2-10-22  2階
電話/098・988・0121





「RCガーデックス」「パワー防錆NKRN-66」 アクロス琉球(沖縄市)
無色無臭のRCガーデックスを塗布中
無色無臭のRCガーデックスを塗布中

鉄筋に「パワー防錆―」を塗っている様子
鉄筋に「パワー防錆―」を塗っている様子

ナノ粒子で隙間充填 高い防水性保つ

コンクリート改質材「RCガーデックス」を提供するアクロス琉球の首里淳治代表は「ナノ技術で開発された『シリケート』という化合物の微粒子が、コンクリートの毛細空隙まで行き渡って全体を保護。高い防水性を保つ」と説明する。

また、「自己補修機能もあり、ひびが大きくなると、すでに充塡されているRCガーデックスが反応して再液化し、新しい隙間を埋める」。ぬれている状態でも施工可能。

防錆(ぼうせい)塗料「パワー防錆NKRNー66」と合わせて使うのもおすすめだそう。同塗料もナノサイズの粒子が鉄筋などにしっかり密着し、さびを防ぐ。さびた状態でも、さび落とし不要で塗布できる。「爆裂や腐食が見られる建物でも、鉄筋部にこれを塗布してからRCガーデックスを施工すれば、耐久性を高められる」と話した。

沖縄市美里3-24-7(105) 電話/098・987・8611



編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1942号・2023年3月24日紙面から掲載

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東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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