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お住まい拝見

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2018年11月2日更新

天井つなぎ声・風 家中に|建築設計室 ant

[お住まい拝見・2棟の平屋をつないだ2世帯]建築士のOさん(37)が設計した自宅は、分棟型の2世帯住宅。天井部分でつないだ構造は、家全体に風と家族の声を届ける。第3回沖縄建築賞では奨励賞を受賞した。


母屋のリビングから和室、キッチンを見る。各部屋は天井部分でつながっているため、どこにいても家族の声が聞こえるだけでなく、中央上のトップライトからの光もそれぞれに届く。熱気も天井を伝ってトップライト部分から外に排出される


分棟でほどよい距離感

Oさん宅
補強CB造/自由設計/家族6人
南城市の静かな住宅街に建つOさん宅。6寸勾配の寄棟屋根や、「自分でグリ石を積んで作った」ヒンプン、親戚から贈られたシーサーなどが沖縄らしさを感じさせる。

玄関ドアを抜けると、奥へ11メートルほど続く通り土間。その土間に面して、母(65)が暮らす小さな離れ、子どもたちが生き物を捕まえたりして遊ぶ庭、Oさん世帯が暮らす広い母屋が並ぶ。分棟型の2世帯住宅だ。


庭では子どもたちが生き物を捕まえたり、自転車に乗ったりと、伸び伸び遊ぶ。その様子を見ながら、母親は以前の家から持ってきた植木鉢の植物の世話を楽しむ。左にあるのが母屋、右が離れ、奥が通り土間

水回りも別なので、同居が初めてだった母と妻(36)は「互いに気を使い過ぎなくていい」と口をそろえる。中庭と土間が緩衝帯となっており、一度靴をはいて行き来するのも、「隣の家に行く感じで気持ちが切り替わる」という。両世帯にとって、ほどよい距離感となっているようだ。


セメントに小石がぎっしり詰まった「洗い出し仕上げ」の通り土間。手前の離れと奥の母屋をつなぐ。靴をはいて通るため、長女は「おばあちゃんの家に遊びに行ってくる」とお出かけ気分。雨の日には子どもたちの遊び場にもなる

どちらの棟も、居室の小屋裏空間がワンルームのようにつながっている。そのため音や気配で家族を身近に感じやすく、例えば母屋なら、「キッチンで作業していても、子どもたちがどこで何をしているか把握できる」と妻。子ども室で4歳と2歳の弟たちに絵本を読み聞かせる長女(7)の声も聞こえてくる。

さらに、母屋の南北の窓を開けておけば、庭から吹き込む南風が天井や廊下を通りながら北へ抜けていくため、子ども室にいても風を感じる。



子ども室。将来は部屋を仕切り2室にしたり、ロフトを設けることを計画している

家族に合わせ棟交換
以前、母とOさん世帯は別の場所で暮らしていた。いずれも貸家で、母が妹と住む一戸建ては老朽化も進行。そこで建築士でもあるOさんは、2世帯での家づくりを始めた。

実験的な要素を取り入れており、サイズの違う分棟型もその一つ。家族構成の変化に対応できるようにした。実際、完成時には母と妹が母屋、3人家族だったOさん世帯が離れで暮らしていたが、妹が結婚し、Oさん世帯には子どもも増えたため、両世帯は住む棟を交換。母は「1人で生活するのにちょうどいい広さになった」。

Oさんは「子どもと一緒に外壁のモルタルに土を塗り、高い天井を利用してロフトも設けるつもり」。家族がどのように変化しても柔軟に応えてくれそうな住まいだ。


母屋のリビング。庭に面した大きな開口部から、たくさんの光が入ってくる。左奥にあるキッチンからでも庭の様子が見える

ここがポイント
庭設け母屋にも風と光
2世帯の自宅を設計するにあたり、建築士のOさんがこだわったのは「通風」と「明るさ」。

「将来的にも使い勝手のいい平屋で考え始めた」Oさんはまず、「両世帯に光と風が行き渡るよう、一つの建物にまとめるのではなく、庭を挟んで2棟が並ぶ分棟型にした」。北側の母屋にも庭からの光と風が入るとともに、通り土間でつなぐことで、ほどよい距離感を確保することにもつながった=下断面図。



また、母屋は約29坪、離れは約13坪と、各棟の広さに違いをつけ、家族の変化に合わせて住み替えながら、長く住み継いでいけるようにも工夫した。

母屋の北側にある子ども室などにも庭からの風を通すため、寄棟屋根にして中央部分を持ち上げ、天井部分で棟内がつながるようにした。各部屋の戸を開ければ回遊できる造りも通風に一役買っており、部屋の行き来も楽にしている。

最頂部に設けられたトップライトからは光が建物全体に届き、昼間は電気をつけなくても明るい。熱気は急勾配の天井を伝って効率よく上に集まり、外に排出されるようにもなっている。

コストを抑えるため、躯体にはコンクリートブロック(CB)を使用し、部屋の幅はCBの寸法を基準に3.4メートルで統一するなど施工しやすくした。

地震の力が集中しやすい各棟の四隅は、CBを4個ずつ組み合わせて強度を高めている。


母が暮らす離れ。気を使わなくて済むように、右の庭に面した窓は、ソファに座れば母屋の家族と目線が合わない程度の高さになっている


離れの外観。伝統的な沖縄の住宅のような形の屋根が印象的。経年変化を楽しめる板張りの壁で断熱も図った。右手のヒンプンの裏側はプロパンガス置き場になっている

[DATA]
家族構成 :夫婦、子ども3人、母親
敷地面積 :331.27平方メートル(約100坪)
1階床面積:154平方メートル(46.5坪)母屋 94.16平方メートル(28.5坪)、離れ 41.48平方メートル(12.5坪)
建ぺい率 :47.78%(許容60%)
容 積 率:46.48%(許容200%)
用途地域 :未指定
躯体構造 :補強コンクリートブロック造
設  計 :建築設計室 ant 奥原和明
構  造 :建築構造研究所
施  工 :(株)大成ホーム
電  気 :大浦電機
水  道 :(有)三工興業設備


[問い合わせ先]
建築設計室 ant
098-947-2220


撮影/矢嶋健吾 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1713号・2018年11月2日紙面から掲載

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スタッフ
出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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