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2018年10月12日更新

2世帯つなぐ吹き抜け|沖縄家作人(やーつくやー)ネット(有)ロフト建築設計事務所 

[お住まい拝見・互いの気配感じて「安心」]那覇市のMさん(69)宅は、鉄筋コンクリート造4階建ての2世帯住宅。中庭の吹き抜けが各世帯をゆるやかにつなぐ。家族は「互いの様子が見えたり、気配を感じるので安心」と話す。


居室に囲まれた中庭の吹き抜け。8歳と5歳の孫がサッカーをしたり、自転車に乗ったりと元気に遊ぶ。吹き抜けを通して各階の様子が互いに分かるようになっている
 

階違っても集まって食事

Mさん宅
RC造/自由設計/家族6人
中庭の吹き抜けから、8歳と5歳の孫たちの元気な声が響いてくるMさん宅。1・2階にMさん夫婦、3・4階に息子世帯が暮らし、中庭を囲むように居室が配されている。妻(70)は「ここなら安全だし、様子も分かって安心」と全力で遊ぶ孫たちを見守る。

両世帯の仲はとても良く、2階LDKでは、朝や週末になると6人そろって食事。夜、孫たちが寝た後には、大人4人でお酒を酌み交わすこともある。息子(42)は「一緒に住んでいるからできること。引き戸1枚ですぐに行き来できるので、自分にとっても安心」。


2階リビング・ダイニング。2世帯そろって食事をしたり、漁業を営むMさんがテーブル上の世界地図を見ながら船の位置を確認する

3階LDKは天井の一部が吹き抜けになっており、4階の子ども室とつながる。階段の蹴上げの一部にも抜けがあり、「キッチンで作業しながら、別の部屋にいる子どもと会話ができる」と気配を感じる造りに嫁(43)は満足そう。

一方、1階寝室にはMさん夫婦の友人がよく訪れる。目的はマージャン。「頭の体操になるし、コミュニケーションもとれる」と、夫婦は建て替え前から愛用する掘りごたつ式のマージャン卓を囲む。


息子世帯の3階リビング・ダイニング。幅約4メートルの大きな窓から光が入って明るい。上部の吹き抜けは4階子ども室とつながっている



4階子ども室。左のポリカーボネート製の仕切りの奥は、3階LDKの吹き抜けになっている


1階寝室。掘りごたつ式のマージャン卓は、かつてMさんが長期間の漁から帰ったきた際に、妻や息子たちとコミュニケーションをとっていた思い出の品

築25年を建て替え
子世帯と一緒に暮らすため、築25年ほどの住宅のリフォームを考えていたMさん。しかし、予想以上に費用がかかることが分かり、改装した場合の耐用年数なども考慮して建て替えることに。そのとき相談した設計事務所が、「すばやい対応でいろいろ調べてくれたし、提案も期待以上だった」ため、全て任せることにしたという。

2世帯で暮らし始めてからの最大の変化は「孫と触れ合う時間が増えたこと」とMさん。共働きの息子夫婦が仕事で遅くなるときに面倒を見たり、学校の送り迎えをするほか、最近は囲碁を教えている。
   
Mさんは「毎日のように囲碁をしに来る。いつか負けてしまうかもしれないね」と笑う。その笑顔は負かされる日を心待ちにしているようにも見えた。


ここがポイント
制限まで空間活用
3方を住宅に囲まれた、約40坪の土地。建て替えにあたり、Mさんは「2世帯で暮らすためのできる限り広い家」を求めた。

建築士の前里敬さんはまず、建物の大きさの制限を調査。すると、25年前は100%だった容積率の制限が、今は150%だと判明。単純に1.5倍の大きさにできるということだ。

しかし、北側の住宅への日当たりを確保するための規制などがあり、ただ高くすればいいわけではない。前里さんは「空の見える割合により高さ制限を緩和できる『天空率』を駆使しつつ、北側は勾配屋根にすることで規制をクリアした」=下断面図。法規制ギリギリまで建物を大きくし、室内でも4階天井裏に収納、勾配屋根部分にロフトを設けるなど空間を最大限に活用した。


Mさん夫婦は1・2階、息子世帯は3・4階に部屋があり、それぞれに玄関もある。その上で共用スペースとして2階に和室を配置。採光や通風のために設けた中庭の吹き抜けからも互いの様子が見えたり、声が聞こえて気配を感じたりと、各世帯が独立しながらもゆるやかにつながるようにした。


2階和室。天井や欄間などは以前の住宅にあったものを再利用している。右奥にあるのは、漁船からの無線連絡を受けるための受信機

さらに吹き抜けを挟んだ南北の居室は階段でつなぐスキップフロアになっている。上下階の距離が近いだけでなく、「階段を使うことで『第二の心臓』とも言われる太ももの運動にもなる」。

暑さ対策としては、屋上に遮熱ブロックを設置。勾配屋根部分はロフトが断熱空間として機能する。


[DATA]
家族構成 :夫婦、息子夫婦、孫2人
敷地面積 :131.56平方メートル(約39.80坪)
1階床面積:72.00平方メートル(約21.78坪)
2階床面積:64.70平方メートル(約19.57坪)
3階床面積:64.70平方メートル(約19.57坪)
4階床面積:33.65平方メートル(約10.17坪)
建ぺい率 :49.59%(許容50%)
容 積 率:148.12%(許容150%)
用途地域 :第一種低層住居専用地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造壁式構造
設  計 :(有)ロフト建築設計事務所 前里敬、宮里夏季
構  造 :(株)エストルクトゥーラ
施  工 :(有)國真住建
電  気 :(株)大幸電設
水  道 :(有)丸栄電気水道工業


[問い合わせ先]
沖縄家作人(やーつくやー)ネット
本部:098-869-3313
http://www.8298net.jp

(有)ロフト建築設計事務所
098-858-1134
https://www.u-loft.net/


撮影/比嘉秀明 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1710号・2018年10月12日紙面から掲載

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「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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