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2024年7月12日更新

洗練のコートハウス|(有)門一級建築士事務所[お住まい拝見]

Tさん宅は塀で囲まれた中庭を有するコートハウス。打ち放し×黒の建具は夫の希望、大判タイルの床や小下がりリビングは妻の希望を濃く反映した。夫妻のこだわりが詰まったスタイリッシュな住まいを訪ねた。

LDKは中庭まで同じタイル床を用いている。リビングは床を30センチ下げ、さらに2階までの吹き抜けになっている。縦横に広がりを感じる開放的な空間だ


高さ変えメリハリ

Tさん宅
 RC造/自由設計/家族4人 

玄関からLDKに足を踏み入れると、驚くほどの開放感。2階天井まで続く約6メートルの吹き抜けと、中庭への抜けで非常に伸びやか。石壁が吹き抜けを貫き、高級感も漂う。「本物の石を使おうと思っていたけど、大地震などで落ちてきたら危ないので、天然石を薄くスライスしたシートにした。見た目も安全性も満足」と夫人。

リビングは、床を30センチ下げたダウンフロア。「LDKは一体的にして、高さでメリハリを付けたかった。それと、家族や友人が集まったときに座れる場所がたくさんほしかった」と夫人。

もう一つ、夫人が強く希望したのは大判タイルの床。「室内を広く感じさせたかったので、中庭まで同じタイルを使ってもらった。ぬれても滑りにくい、内外両用のタイルにしている」と説明する。

あえて狭くした場所もある。リビングの一角にある天井高1メートル80センチの「ヌック」=上写真=は、リビングにいながら一人時間を楽しめる。

さらに石壁のわき、幅60センチの扉を開けると、夫の趣味室がある。およそ4・5平方メートルの小さな空間だが、机の周りには趣味の釣り竿や浮き、ルアー作りの道具が並ぶ。夫は「必要なものにすぐ手が届く。ガレージから直接、行き来できるのもポイント」とうれしそうに話す。



リビングの一角には天井高1メートル80センチのおこもりスペース「ヌック」がある。吹き抜けのリビングとのギャップで、それぞれの空間の良さが引き立つ
 

リビングは床が30センチ下がっているほか、2階までの吹き抜けになっていて開放感たっぷり。テレビ背面の石壁は天然石を厚さ2ミリのシートにした「スライストーン」を使用している。石壁右側のガラス戸が夫の趣味室への出入り口

 


建材を徹底リサーチ


実家近くに土地を購入し、家作りをスタートさせた。

コンクリート打ち放しにこだわったのは夫。「スタイリッシュな感じにしたかった。だから、かっこいい打ち放しを設計する建築事務所に依頼した」。黒いサッシや照明、建具も、打ち放しのクールな質感を引き立てる。

夫妻は建築士が驚くほど建材をリサーチし、新居に使用。さらにインテリアや植栽、家具、家電に至るまで好みを反映させた。

夫人は「こうすれば良かった、と後悔しているところは一切無い」と笑顔で語った。
 

中庭の床もLDKと同じ600ミリ角の大判タイル。「室内外で使える、ぬれても滑らないタイプのタイルを選んだ」と夫人。室内から中庭まで、タイルの目地がそろっていて一体感を強調している



ここがポイント
視界をコントロール

アパートなどに囲まれた住宅密集地での計画。プライバシーの確保と、施主が希望していた開放感を両立させるため「塀で囲ったテラスを有する、コートハウスを提案した」と門一級建築士事務所の金城司さんは話す。


ダイニングキッチン。キッチンの家電もすべて黒で統一されており、徹底した夫妻のこだわりを感じる。キッチン背面に寝室や浴室などプライベート空間がまとまっている


大きな窓はテラスに面した掃き出し窓のみ。ほかは「高窓などで採光を確保しつつ、外からの視線を防いでいる」。
窓が最小限なため、外気の侵入が少なく「LDKはクーラー1台で十分に涼しい。省エネにもなっている」と施主。安心感だけでなく、快適さにもつながっている。

窓は少ないが窮屈ではない。特にリビングは高さ約6メートルの吹き抜けで、圧巻の開放感だ。「家に入る前からの動線計画がミソ。玄関前のアプローチは軒下を2メートル20センチと低めにしている。視界をギュッと狭めてからリビングに入る流れにして、広がりを強調している」と話す。
 

夫の趣味室。奥の屋根付き駐車場からも行き来できる。駐車場にはワゴン車のバッグドアを開けられるスペースも設けており、釣り道具の積みおろしもスムーズ
 

玄関わきの坪庭の植栽が絵画のよう。右奥のガラス戸は夫の趣味部屋とつながる

夫の趣味室は「入り口の扉を幅60センチと狭くして、隠れ部屋感を演出している」。扉を60センチにした理由はもう一つ。Tさん宅の床に使われている600ミリ角と同じ幅。「タイルは、なるべくカットせず無駄なく使うよう心掛けた。そして、タイルの目地や建具など空間を構成するパーツのラインを細部までそろえている。こうした納まりの美しさが空間を引き締め、夫妻好みの洗練された雰囲気となっている」

リビングの床は、ほかよりは30センチ下げた「ダウンフロア」。段差をベンチとして利用できたり、空間を広く感じさせるなどのメリットがあるほか、「Tさん宅の場合は、ダイニングやキッチンからもテレビが見やすくなる。LDKそれぞれの目線の高さが変わり、見晴らしが良くなる」と金城さんは説明した。
 

コンクリート打ち放しの外観。玄関前のアプローチの庇はあえて低く(2メートル20センチ)してリビングに入ったときの開放感を強調する



[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:275.80平方メートル(約83.4坪)
1階床面積:133.14平方メートル(約40.3坪)
2階床面積:28.35平方メートル(約8.6坪)
建ぺい率:49.14%(許容60%)
容積率:49.14%(許容200%)
用途地域:第二種中高層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式構造
設計:(有)門一級建築士事務所
施工:(株)DEN.CREATE
電気:shin電創
設備:(有)丸栄電気水道工業
植栽:GREENS FOR GOOD

問い合わせ
(有)門一級建築士事務所
電話=098-888-2401
https://www.jo1q.com/


撮影/高野大・フォトアートたかの 文/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2010号・2024年07月12日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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