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2017年11月24日更新

光和らげ落ち着きを|アデル一級建築士事務所

[お住まい拝見・国道近い都心の住宅密集地]花を扱う仕事はセンスと体力が要求されるため、住まいには「素材感と落ち着き」を求めたNさん。窓の工夫で光を和らげた家は、国道近くの密集地ながら「くつろげる」と大満足だ。

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外観。2階のコンクリート打ち放し面は杉の型枠模様が印象的。四方に住宅や商業施設が近接する都心の住宅密集地の一角で、ひときわ存在感を放っている
外観。2階のコンクリート打ち放し面は杉の型枠模様が印象的。四方に住宅や商業施設が近接する都心の住宅密集地の一角で、ひときわ存在感を放っている
 

素材感で上質に

Nさん宅
RC造/自由設計/家族2人

四方を住宅や商業施設に囲まれていることから、2階にパブリックスペースを上げ、1階にプライベートスペースを配置したNさん宅。「部屋数はいらないけど雰囲気は重視。無機質過ぎたりナチュラル過ぎるのでなく、素材の持ち味を生かして、くつろげる雰囲気にしたかった」との思いは家のそこかしこに見て取れる。

琉球石灰岩を敷き詰めた玄関ホールはホテルのエントランスのようなたたずまい。1階天井や2階の外壁は、型枠に使った杉の木目がそのままデザインとなっている。特にこだわったのはLDKの床や建具に使った木材。「木目の出方や色合いを吟味し、ウォールナットで統一しました。金額は少し張りましたが赤みを抑えた感じがいい。夫婦でコレにしてよかったねと話しています」と顔をほころばせる。

夫妻が過ごすことの多いLDKは「当初は窓が少ないかと心配しましたが、西日も気にならないし、光が柔らかくてキレイ」。窓の設け方や光の入り具合と相まって、上質なくつろぎ空間となっている。


テラス側から見た2階LDK。ダイニングテーブル奥の壁で生活感が出がちなキッチンを目隠し。ブラウン、グレーでまとめたインテリアと落ち着いた照明で、ホテルのような雰囲気に
テラス側から見た2階LDK。ダイニングテーブル奥の壁で生活感が出がちなキッチンを目隠し。ブラウン、グレーでまとめたインテリアと落ち着いた照明で、ホテルのような雰囲気に
 

広い洗面室で家事も

夫人がこだわったのは水回りと収納だ。2階キッチンはあえて壁付けにしダイニングとは壁で仕切ることで、雑多なものは隠しつつ配膳はしやすく。1階洗面室は「洗濯物を畳んでアイロンがけまで済ませられるように」とカウンターを大きく取った。家事室を兼ねていることもあり2カ所に出入り口を設けたことで、物干し場にもウオークインクローゼットにも行き来しやすい。

「当初はマンションでも」と考えていた夫妻が家づくりに切り替えたのは、Nさんの父親から敷地を譲り受けたのがきっかけ。親類の建築士とは「アバウトな要望だけを伝え、そこを酌んで提案してくれたものに自分の思いをかぶせて」を繰り返しながらイメージを形にしていった。「素材の見せ方、使い方を考えるのは花屋も家づくりも同じ」。Nさんのセンスはそのまま住まいにも生きている。

2階和室。スリット窓や天窓からの柔らかな光が、和のたたずまいにマッチ。左手には階段室に抜ける引き戸があり、リビングを通らず来客をもてなせる
2階和室。スリット窓や天窓からの柔らかな光が、和のたたずまいにマッチ。左手には階段室に抜ける引き戸があり、リビングを通らず来客をもてなせる

2階キッチン。カウンターの扉もウォールナットにし、統一感を出した。横長の高窓が、東からの光は取り込みつつ視線を程よく遮る
2階キッチン。カウンターの扉もウォールナットにし、統一感を出した。横長の高窓が、東からの光は取り込みつつ視線を程よく遮る


ここがポイント
窓と照明で光量調整
居室つなぎ奥行きを


ダイニング側からテラス方向を見る。家具類を低めに抑えたことで、最大3.65メートルの天井高が際立ち、ゆとりを感じさせる。こだわりの床材に加え、建具や造り付けのカウンター、掃き出し窓のサッシなども木で仕上げることで、素材感を際立たせつつもまとまりのある空間に
ダイニング側からテラス方向を見る。家具類を低めに抑えたことで、最大3.65メートルの天井高が際立ち、ゆとりを感じさせる。こだわりの床材に加え、建具や造り付けのカウンター、掃き出し窓のサッシなども木で仕上げることで、素材感を際立たせつつもまとまりのある空間に


「都心でも落ち着いてくつろげる空間づくり」のカギとなったのは、「低めに設置した窓と照明」と一級建築士の仲本昌司さん。家中で一番大きなLDKの掃き出し窓でも、サッシ高は通常より30センチほど低い1メートル90センチ。そのほかは面積を絞った腰窓やスリット窓、高窓となっている。目的はプライバシーの確保と、「極力直射日光を避けて光を和らげるため」。実際、掃き出し窓は隣家との間に設けたテラスから間接的に光が入り、腰窓は花ブロックで覆うことで光量を調整しつつ沖縄らしさの演出にもつながっている。

照明を天井に取り付けて全体を照らすのではなく、窓の高さにあわせた壁付けにしているのも同様の理由から。施主こだわりの素材感を際立たせる効果もある。

窓面積を絞っているにもかかわらず、ゆとりや広がりが感じられるのは、1、2階とも間仕切り壁の上をガラスにしているから。限られた面積でも視線が抜けて奥行きが出る上、隣室にいる家族の気配を伝える働きもある。

素材使いも雰囲気づくりの重要な要素。特にコンクリート打設時に用いた杉の型枠は、通常だと焼杉を用いるところを焼かずに使用。木目が目立ち過ぎることなく、周りの素材ともうまくなじんでいる。

「光を存分に取り込むのは開放感がある一方で室内の雰囲気が単調になりがち。Nさん宅では必要な場所に必要な分だけ光を取り込むことで光のグラデーションを作り奥行きを演出。素材使いとも相まって、限られた面積ながら求める空間づくりにつなげられた」と話した。

1階洗面室。幅広カウンターは家事に大活躍/写真左。1階玄関。1階は落ち着きを出すため天井高を抑えているが、玄関は彫り込み天井でのびやかさを演出。琉球石灰岩と相まって高級感のある雰囲気に/写真右
1階洗面室。幅広カウンターは家事に大活躍/写真左。1階玄関。1階は落ち着きを出すため天井高を抑えているが、玄関は彫り込み天井でのびやかさを演出。琉球石灰岩と相まって高級感のある雰囲気に/写真右

2階の掃き出し窓を戸袋に収めればテラスまで一体的に。出窓もテラスもロールスクリーンで視線と西日を遮れる
2階の掃き出し窓を戸袋に収めればテラスまで一体的に。出窓もテラスもロールスクリーンで視線と西日を遮れる


[DATA]
家族構成 :夫婦
敷地面積 :128.87平方メートル(約39坪)
1階床面積:54.07平方メートル(約16.35坪)
2階床面積:63.82平方メートル(約19.3坪)
建ぺい率 :52.2%(許容60%)
容 積 率:91.47%(許容150%)
用途地域 :第一種中高層住居専用地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設  計 :アデル一級建築士事務所 仲本昌司
      (設計時は(有)アトリエ門口に在籍)
構  造 :建築研究庵
施  工 :(株)ニライカナイ建設
電  気 :(合)中江電気建設
水  道 :(有)ライフ工業



[問い合わせ先]
アデル一級建築士事務所
098-800-1869
http://aderarchitects.com/


写真/泉公(ララフィルム) 編集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1664号・2017年11月24日紙面から掲載

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