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2024年5月17日更新

古の技生かした木造|(株)ISSHO建築設計事務所[お住まい拝見]

[RCの地階は擁壁の役割も]
擁壁を兼ねるため地階のみRC造とし、その上に木造2階が建つIさん宅。屋根を支える斜めのアマハジ柱は昔から沖縄にある高倉を手本に、住宅に応用。構造を簡素化しながらも、強風の吹き上げに耐えられる造りに進化させた。

屋根に向かって斜めに伸びるアマハジ柱は建築士の漢那潤さんが開発した金具で接合。2階の窓を開ければ風がよく通り、軒が雨や日差しを遮る


湿気も熱も感じず

Iさん宅
 RC造+木造/自由設計/家族4人 

夫妻は月々家賃を支払うより、持ち家で悠々自適に暮らす生活を漠然と思い描いていた。そんな中、「ここだ」と直感で感じた土地を購入し、家づくりがスタートした。

プランに関して、特に要望はなかったという。夫妻は「庭があればいいかなと思っていたくらいだったので、間取りや室内の仕上げなどは建築士に任せっきりでした」と話す。設計は知り合いが務める建築事務所に依頼した。「建築士のことは北部にある一棟貸しの木造ホテルの設計などで知っていました。相談した際のプランが明確で、説明も分かりやすかったので、何も心配なく任せられました」。

完成したのは鉄筋コンクリート(RC)造の上に、木造2階建てを載せた3階建ての住宅。地階に水回りと駐車場、1階はLDK、2階は寝室となっている。



木の柱や梁が特徴的なLDK。家具はインテリアコーディネーターの友人が選んだ。夫妻は「多くの人のおかけで住みやすく、かっこいい家になりました」と笑う
 

2階の寝室。中央の柱から四方に伸びる梁に引き戸が設置でき、家族の成長に合わせて部屋を仕切って使える

 

木が自然のフェンスに


LDKの南側には希望した庭があり、北側は高低差2・5メートル下にある道路に向けて傾斜している。斜面には完成時に植えた木がすくすくと成長している。「植栽が道路からの視線を防ぐ目隠しや自然のフェンスにも。庭で子どもたちが走り回って道路に飛び出す心配がないので、安心です」と夫妻は笑う。ほかにも、バーベキューを楽しむなど庭は家族団らんに欠かせない存在となっている。

LDKは柱や梁など構造部材の木があらわとなり、木のインテリアと相まって温かみのある雰囲気が漂う。窓は南と北に向かい合うように設けられている。夫妻は「風通しは抜群。湿気が多い土地柄にもかかわらず、室内はじめじめした感じがしない」とうれしそうに話す。

また、以前住んでいたRC造のアパートに比べて、室内に熱がこもった感じもしなくなったという。「アパートのころは帰宅してから夜になっても暑かったけど、帰ってきても熱を感じず、快適です」と木造ならではの住み心地のよさを実感している。

 

地階の洗面室。室内は木で仕上げて、温かみのある雰囲気に

 

2階に通じる階段。あらわになった梁(写真内○部)は写真などを飾るスペースとして利用できる



ここがポイント
高倉参考に 最小限の柱で軒支え

敷地は北側の前面道路から2・5メートル高い位置にあり、東西に住宅などが近接する。南側は擁壁で土留めされており、法に基づき建物は擁壁から約8メートル後退させる義務があったため、必然的に建築面積は限られた。建築士の漢那潤さんは住宅を道路のある北側に寄せて配置し、南側を施主が要望した庭として使えるよう計画。「高低差のある北側には擁壁が必要となり、コストを抑えながら、必要な生活空間の確保できるよう、3階建てにすることに。肝となったのは構造」と話す。

まず、住宅は地階を鉄筋コンクリート(RC)、その上に木造2階建てを載せる混構造とした=下写真。「地階に土留めの役割も持たせたことで、空間を有効活用しつつ、工事費を抑えられた」。
 

道路から見た外観。3階建てになった理由について、漢那さんは「住宅の広さと比例して、必要な擁壁の量も増える。安全性を確保しつつ、造成する擁壁を最小限に抑えつつ、生活空間を確保するため、3階建てに落ち着いた」と説明する



 

屋根に伸びるアマハジ柱は開発したオリジナル金具で外壁(2階床の梁)と固定。木が傷んだとしても、交換できる仕様となっている


また、特徴的な構造が屋根を支える「アマハジ柱」だ。沖縄に昔からある高倉を参考に、その構造を応用。一般的なアマハジ柱は、地面から垂直に伸ばして屋根を支えるが、Iさん宅は外壁から斜めに突き出した。漢那さんは「高倉は斜めの柱と柱の間に板を張り、風を受け流して建物を守っていた。Iさん宅の設計では板を張らず、オリジナル金具でアマハジ柱を固定=上写真。軒に当たる吹き上げなどに耐えつつ、2階にも窓を設置できた」と説明する。

LDKや階段の壁などは湿度を吸収する漆喰(しっくい)で仕上げた。木の柱や梁(はり)も調湿効果などがあるため、居心地をより高めている。また、キッチン前面には木で製作した収納棚を設置。インテリアが空間にもなじむよう配慮している。



造作したキッチン前面の収納棚。棚の戸は木を編み込んで製作し、室内の雰囲気に溶け込むよう工夫している



[DATA]
家族構成:夫婦+子ども2人
敷地面積:282.21平方メートル(約85坪)
地下1階床面積:44.61平方メートル(約13.5坪)
1階床面積:44.61平方メートル(約13.5坪)
2階床面積:44.61平方メートル(約13.5坪)
建ぺい率:16.12%(許容60%)
容積率:37.93%(許容200%)
用途地域:未指定
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造(地下1階)、一部木造(1、2階)
設計:(株)ISSHO建築設計事務所 漢那潤、長瀬駿也
構造:ASD
施行:(株)ISSHO建築設計事務所
電気:東洋電気工事(株)
水道:共進技研

問い合わせ
(株)ISSHO建築設計事務所

電話=098・917・2842
https://www.shinminka.com/


撮影/高野光・フォトアートたかの 文/市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2002号・2024年05月17日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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