一本柱の大空間で憩う|IGArchitects[お住まい拝見]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

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2024年3月15日更新

一本柱の大空間で憩う|IGArchitects[お住まい拝見]

[隠れ家感と開放感を両立]
広々としたワンルームのMさん宅。中央の存在感のある大柱から屋根と垂れ壁が伸び、まるで傘を開いたかのような佇(たたず)まい。隠れ家感と開放感が両立した空間で、おおらかに暮らす。

Mさん宅はキッチンから寝室や浴室までもつながるワンルーム。幅100センチ×奥行き70センチの柱が支える屋根をぐるっと囲む垂れ壁と相まって、傘が開いたような住宅となっている


大開口から景色堪能

Mさん宅
 RC造/自由設計/家族1人 

新興住宅地に建つMさん宅。重量感のあるコンクリートの塊が宙に浮いたような外観が異彩を放つ。

室内に入ると目を奪われるのは幅100センチ×奥行き70センチの「大柱」。キッチンから浴室までつながる広々としたワンルームの中央で存在感を放つ。大柱が支える屋根や垂れ壁と相まって、まるで大きな傘を開いたようだ。Mさんは「家は倉庫のような雰囲気をイメージ。開放的な部屋でありながら、どこかこもった感じの室内は落ち着く」と満足な様子。

柱の北西側にはガラスの引き戸を多用し、カーテンのない室内から海や緑の景色が一望できる。「視界いっぱいに広がる景色を眺めながら、ゆったり過ごすのが至福の時」とMさん。開け放てば、内外が緩やかにつながり、海風が流れ込む。「夏は涼し過ぎるくらい。風は抜け垂れ壁が日差しを遮る。土間の床がひんやりして、気持ちがいい」。
 

ガラス戸を開けた室内でブレンドしたハーブティー片手にくつろぐMさん
 

北西はフルオープンできるガラスの引き戸を採用し、それ以外の外壁にもガラスを取り入れた。上部をぐるっと覆っているのがコンクリートの垂れ壁。写真右側の階段は屋上まで続く(写真は建築士提供)



ハーブや料理楽しむ

4年前に帰沖したタイミングで土地を購入し、家づくりがスタート。ネットで建築士を探し、「手がけた住宅がかっこいいこと」が決め手となり、依頼した。浴室までワンルームにすることや引き戸をはじめ外壁にまでガラスを使うことを提案されたときは「正直驚いた」とMさん。が、「2度の台風でもガラスが割れたことはないし、お気に入りの大きいベッドも置ける広さで助かった」と笑う。

造作キッチンには工芸品の食器が奇麗に並び、趣味のハーブティーや料理を楽しむ。Mさんは「使う素材や照明計画など細かい部分まで建築士は提案してくれた。低予算の中で、こもった感じ、広いリビングなど要望全てが実現した」と喜ぶ。希望の広さと雰囲気が実現し、自分時間をゆったりと過ごせる住まいがそこにあった。


存在感のある柱がワンルームを四つの部屋があるかのように空間を仕切る。五十嵐さんは「視覚的に柱の向こう側がつくられ、空間に奥行きを与えている」と説明する
 

入り口から見る室内。ガラス戸を全て閉めても、視線が外に抜けて広がりを感じられる
 

浴室。夏になると海水パンツを着て、水風呂を楽しむ。防水カーテンを閉めれば、浴室になる
 


垂れ壁は日差しや視線を遮り、ガラスにあたる風をコントロール。構造のバランスをとる役割も果たしている



ここがポイント
一本柱でコスト減 奥行きも演出

Mさん宅は部屋の中央に「大柱」を配置。柱1本で屋根を支えられるよう、垂れ壁で屋根をぐるっと囲み、バランスをとった。これにより、安全性を確保しつつ、構造体と基礎が最小限に抑えられ、大幅なコスト削減につながっている。IGAの五十嵐理人さんは「中央に柱があるシンプルな構成だが、視線を遮らない大柱が空間を緩やかに区切ることで、奥行きを演出。実際の床面積以上に広がりのあるワンルームとなっている」と説明する。また、ガラスの外壁より一回り外側に垂れ壁を設けることで、施主希望のこもった感も演出。「垂れ壁は高さ2・5メートルの天井から下に1メートル伸ばし、大人が立ったとき視線が遮られる高さに調整した」。

そんな垂れ壁は沖縄特有の「深い軒や庇(ひさし)」からヒントを得た。「まっすぐ伸びる軒を折り曲げることで、直射日光を防ぐだけではなく、ガラスにあたる風の影響も軽減するため、台風対策にもなっている」と五十嵐さん。また、ガラスを外壁に使った理由について、「コンクリートに比べ、紫外線や雨で劣化しづらく、取り替えなどメンテナンスも素早くできるため」。

外観はガラスとコンクリートそれぞれが持つ素材感を生かした、独特な佇(たたず)まい。が、最初から狙っていたものではない。五十嵐さんは「一本の柱で支えコンクリートの塊が浮くようなデザインは、要望やコスト、耐久性と居住性を高めることなど多くの条件を満たすよう検討しながら、施主とのコミュニケーションから生まれたものです」と話した。



[DATA]
家族構成:1人
敷地面積:308.41平方メートル(約93坪)
1階床面積:60.00平方メートル(18坪)
建ぺい率:21.23%(許容70%)
容積率:19.46%(許容200%)
用途地域:未指定
躯体構造:鉄筋コンクリート造
設計:IGArchitects 五十嵐理人
構造:EQSD一級建築士事務所
施工:FUN SHARE(株)
電気:(株)ゼネラル電設
水道:(有)ライフ工業


問い合わせ
IGArchitects
メール:igarashi.licht@gmail.com
https://igarchitects.jp/


撮影/桑村ヒロシ  文/市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1993号・2024年3月15日紙面から掲載

この記事のキュレーター

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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