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2019年11月1日更新

まとめて広く多機能に|(有)平良建設

[お住まい拝見|家族の様子も分かりやすい]うるま市にある木造平屋建て。Fさん(36)宅は、壁や建具であまり仕切らないことで空間がつながり、広く感じる。互いの様子も見え、家族がつながる住まいでもある。


写真右手の中庭から光が入ってくるリビング。左奥の書斎、右奥の和室も、壁や建具で仕切ることなく一つの空間にまとめたことで、全体が広く感じる。夫人の両親が泊まりに来たときなどは、ロールスクリーンを閉めた和室を客間として使う


気持ち切り替わる台所

Fさん宅
木造/自由設計/家族4人
市街地から離れた静かな住宅街。その一角に建つFさん宅は、玄関から、約17メートル先にある一番奥の寝室まで一直線に見通せる。

その直線を軸に配されたリビングやダイニング、中庭、子ども室などを、長男(5)や長女(4)は自由に行き来しながら駆け抜けていく。

リビングに隣接する書斎には、「自室にこもらないように」と家族で並んで使える長い机。パソコンでFさんが作業していると、走り回っていた子どもたちもやってきて、隣で絵を描いたり、手紙を書いたり。Fさんは「壁や建具などの仕切りが少ないので、互いの様子がよく分かる。コミュニケーションを取りやすい」。

キッチンやダイニングからも家族の様子はよく見えるが、リビングとは少し区切られた印象。「おかげで気持ちを切り替えられます」と夫人(38)は話す。

例えば、保育園から子どもたちを迎えて帰宅し、しばらくリビング隣の和室で一緒に遊んでいるときは、「ご飯の準備など、やらなきゃいけないことから離れられるようでリラックスできる」。子どもたちとの時間を心置きなく楽しみながら、一息つけるという。


書斎。長さ5.3メートルもある机は、家族みんなで並んで使える

4歳が感じる「幸せ」
夫婦が家づくりを考え始めたのは3年ほど前。子どもが成長し、住んでいたアパートが手狭になってきたことがきっかけだった。

見学会などを回りながら、本で見つけた建設会社に土地探しから相談。Fさんの勤務先から車で約15分の土地を紹介してもらったほか、書斎の長い机やパントリー、中庭などの要望を取り入れた建築士の提案を気に入り、依頼することにした。Fさんは「自分でも間取りを考えていたけど、提案してもらった中庭の配置などにワクワクしたので、任せた方がいいと思った」。

夜になると、外の明かりが少ないこともあり、寝室の出窓から満天の星空が見える。家族みんなでベッドに横になりながら、窓の外を見た長女は「幸せに暮らすってこういうことなんだなぁ」とぽつり。夢の中も含め、四六時中、笑顔で伸び伸びと過ごしているのだろう。


書斎から見たリビング。アクセントにもなっている天井のラインが視線を中庭へと促す。周りの木の雰囲気となじむよう、サッシは木目調の樹脂サッシを使っている


ダイニング。天井高は最大3.8メートルで開放感がある。床は全体的に、薄い無垢材を貼った材を敷き並べている。Fさんは「床が気持ちよくて、帰ってきたら家族みんな、はだしで過ごしています」


ここがポイント
中庭で北側も明るく 廊下の上をロフトに
Fさん宅が建つのは、南北に細長い敷地。そこで、設計を手掛けた遠藤現さんはまず、中庭を囲むように生活スペースを配置した。「建物の真ん中に中庭があることで、道路に近い北側に設けたリビングにも光が入り、室内は明るくなる」と説明する。


中庭。もう一つのリビングとして、室内外をゆるやかにつなぐ役割も持つ

 リビングは8帖、書斎は6帖、和室は4.5畳と、各スペースはそれほど大きくはないが、壁や建具で仕切らずに一つの空間にまとめることにより、多機能で広く感じられる空間を実現。

遠藤さんは「各スペースはつながりつつも、小さな段差やかもいの枠といったあいまいな間仕切りで役割の違いが分かるようにした。建具などのコストも抑えられた」。

空間の使い方の工夫は他にもある。例えば、リビングやダイニングは、部屋の一部が通路も兼ねている。収納では天井裏の空間を有効活用。子ども室のロフトは廊下の上に設けたほか、玄関の収納は、天井高を抑えたパントリーの上部空間までつなげ、広いスペースを確保した。

「湿気や熱気がこもりにくい木造だが、さらに快適になるように」と、ダイニング・キッチンは、最大高さ3.8メートルの勾配天井にし、四つの高窓を設けた。「室内の熱気が集まって上昇し、高窓から逃げていく」と遠藤さん。また、ここだけ天井高を上げることで、単調になりがちな室内の天井にリズムを与えた。


子ども室。将来を見据えて、2室に仕切れるようになっている。写真右手の廊下の上の空間を、子ども室のロフトとして活用している


キッチンのカウンターから廊下を見る。一番奥の寝室の壁まで、一直線に見通せる。光が入る高窓は、室内の熱気を逃がす役割もある。夫人は、高窓から見える風景に「雲が動く様子が見えるのは、なんだかぜいたくに感じます」


寝室。コーナーの出窓は30センチほど外に張り出している。建築士の遠藤さんは「角部分に窓をまとめることで、外に対して広がりを感じるようになる。壁の存在感も消える」と説明する


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:330.6平方メートル(約100坪)
1階床面積:99.37平方メートル(約30坪)
建ぺい率:30%(許容60%)
容積率:30%(許容200%)
用途地域:無指定
躯体構造:木造
設  計:(有)平良建設×U-HOUSE 遠藤 現
施  工:(有)平良建設



[問い合わせ先]
(有)平良建設
098-939-2379
taira-co.com


撮影/比嘉秀明 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1765号・2019年11月1日紙面から掲載

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「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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