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2024年1月26日更新

コの字形で採光・通風◎|クロトン設計[お住まい拝見]

[2人でも個人でもリラックス]
木造平屋建てのHさん(42)宅は、夫妻で過ごすLDK、それぞれの個室、三線の音が響く和室などが、コの字形に配されている。2人の時間も、個人の時間も楽しめる、明るく風通しのよい空間が広がる。

リビング。軒高は低く抑えられているが、勾配天井と大きな開口部で開放的。物が少なく、すっきりした印象だが、妻は「片付けは得意ではないけれど、キッチン奥の大きなパントリーのおかげでゆっくり過ごす空間にモノがあふれない」と話す
 

北欧×和の趣

Hさん宅
 木造/自由設計/家族2人 

軒の深い切り妻屋根が目を引くHさん宅は、コの字形をした平屋。コの字の中央、くぼみの奥にある玄関から中に入ると木の香りに包まれる。

大きな開口部で明るいLDKは、高い天井も相まって開放的。夫妻でコーヒーを楽しむダイニングも、くつろぐリビングも、白い壁、木の床と天井でスッキリした印象だ。そこにナチュラルテイストの家具が加わり、妻(46)の好きな「北欧の雰囲気」が醸し出されている。

そんな妻のお気に入りはキッチン。コンロは壁側、シンクはアイランド側にあるセパレートタイプで「私が料理、夫が洗い物をする時など、二人でも作業しやすいです」。

LDKの大開口から見える和室からは、琉球古典音楽が聞こえてくる。Hさんが奏でる三線の音色だ。縁側があり、天井の格子が美しい和風のしつらえ=11面に関連=に、Hさんは「以前住んでいたアパートとは全然気分が違う。落ち着いた気持ちで演奏できる」と満足そう。最高賞合格を目指し、今日も練習に励む。
 

ダイニング・キッチン。夫妻がコーヒーを飲んだり、食事をとったりと、2人の時間を楽しむ空間。キッチンの周りは行き止まりがない造りなので「料理しながら、いろいろなことがしやすい」と妻

外観。アプローチに沿って並ぶひんぷんが、外から中を見えにくくする。Hさんは「台風時、ひんぷんの後ろに鉢植えを隠すだけで植物を守れた」と、風よけとしての役割もあるという
 

セパレートタイプのキッチン。2人で作業しても、互いに邪魔にならない。妻は「それぞれの天板も広いので、料理中に道具の置き場に困ることがなくなり、効率もよくなりました」
 

玄関。「照明をつけない時の、暗さと奥に見える光の感じが京都の町家みたいに感じるんです」と、妻の好きな空間の一つ
 

それぞれの好みを尊重

Hさんの実家の土地を一部譲り受けたことで家づくりを開始。「木の香りやぬくもりを感じたかったので、木造一択でした」と夫妻は話す。木造住宅を手掛ける会社を巡る中、雑誌で見た事務所を訪れたところ「私たちの思いをくみ取りつつ、いろいろな提案もしてくれる」建築士に出会い、設計を任せることにした。

例えば個室。妻は「私は映画、夫は読書など、好きなものが違ったりする。リビング以外にリラックスできる場所があってもいいのかなと思って」と夫妻それぞれの個室を求めた。そのため、Hさんの部屋には本棚やデスク、妻の部屋には広いウオークインクローゼットを設けるなど、異なる造りで設計されている。Hさんは「好きなことを思い切り楽しめるし、仕事の帰りが遅い時などの配慮もしやすい」と、使い勝手もいい様子。

LDKでは2人でゆったり、個室ではそれぞれ好きなことという具合に、共有する時間も個の時間も大切にできる住まいとなっている。

和室。縁側や床の間、障子、格子が美しい天井などによって、本格的な和の空間となっている。Hさんはここで、仕事に行く前などに三線の練習をするという
 

Hさんの個室。造り付けの本棚とデスクで図書館のような印象。「枕元に本棚があるので、寝る直前まで読書を楽しめます」とHさん
 

妻の個室。右奥には広さ約3帖の、妻専用のウオークインクローゼットがあり、洋服や小物などが収められている
 

家事室。広さは約6帖で洗面室や洗濯室としての役割がある。Hさんは「洗濯、乾燥、アイロン、収納まで2メートルくらいの範囲で済む。毎日のことにストレスがないのはいいですね」と話す


ここがポイント
二重屋根と深い軒で涼しく

Hさん宅の土地は、もともと両親が庭や畑として使っていた土地で面積が大きかった。そこで、クロトン設計の玉城盛太さんは、コの字形の平屋を提案。玉城さんは「コの字形だと、四角形に比べて表面積が増えるので、窓を多く設けられる。中央からも光や風が入り、どの部屋も明るく風通しのいい空間となる」と説明する。

暑さ対策として、屋根は二重構造に。断熱材を張った後に、もう一度、垂木を組んで屋根を載せた。「二つの屋根の間にある通気層から風が抜け、最も日射を受ける屋根面からの熱の影響を抑えられるようにした」と玉城さん。軒の先端部分に通気層への入り口があり、通気層の中で熱せられた空気は上昇するので、最上部の棟から排気される仕組みとなっている。

深くて低い軒も、開口部や外壁に当たる直射日光などを抑えるためだ。紫外線だけでなく雨もかかりにくくなるので、建物の劣化も抑えられるという。

施工の工程やコストを減らすため、内装材は材料そのものが仕上げ材になるものを選んだ。例えば壁材は、水に強く、軒裏の天井部分などに使われるケイカル板(ケイ酸カルシウム板)、天井には無塗装の合板を張った。「ケイカル板は調湿作用があるものを使い、性能もプラスした。全体的に素材そのままの部分が多いので、長く住む中で不具合が出てもすぐに分かる」

そのほか、南側にある実家との間に塀は設けず行き来しやすくした。玉城さんは「車路も共有し、それぞれの家の前まで車を乗り入れられるようにすることで将来的にも安心」と話した。
 


施工中、断熱材を張る様子。この上にもう1枚屋根をかけることで、通気層を設けた(建築士提供)




[DATA]
家族構成:夫婦
敷地面積:482.77平方メートル(約146坪)
1階床面積:120.07平方メートル(約36坪)
建ぺい率:24.87%(許容50%)
容積率:24.87%(許容100%)
用途地域:第一種及び第二種低層住居専用地域
躯体構造:木造
設計:クロトン設計 玉城盛太
構造:クロトン設計
施工:(株)新垣工務店
電気:(同)アキラデンキ
水道:(有)正設備興業

問い合わせ
 クロトン設計
 電話=098・877・9610
 https://croton.jp/


撮影/比嘉秀明  取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1986号・2024年1月26日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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