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2022年6月17日更新

[沖縄・お住まい拝見]南風が抜ける住まい|デザインネットワーク

[変形敷地でも無駄なく]南東に窓とテラスを設け、心地よい南風が吹き抜けるYさん宅。自然を感じながら「コロナ禍で家にこもっていても快適に過ごせた」と夫婦は語る。台形の敷地に沿った造りながら、デッドスペースを生まない間取りで、外観デザインにもひと味加えた。

南東に開いた大きな窓から南風が吹き抜けるLDK。木造の家を鉄筋コンクリート造の躯体で囲った造りで、温かみのある雰囲気に
南東に開いた大きな窓から南風が吹き抜けるLDK。木造の家を鉄筋コンクリート造の躯体で囲った造りで、温かみのある雰囲気に


自然感じゆったり

Yさん宅
RC造/自由設計/家族5人

Yさん(34)が玄関ドアを開けた途端、室内からふわっと風がそよぐ。廊下を抜けてLDKに入ると、緑が見える大きな窓と高い天井で一気に開けた空間に。鉄筋コンクリート造の平屋ながら、木の素材感を生かした室内は明るく、すがすがしい空気が流れる。まるで木陰で休憩しているかのような風と光を感じさせる住まいだ。

LDKとつながるひさしの深いテラス(アマハジテラス)はゆったりとした奥行きが取られ、子どもたちの遊び場に。新居で育児休業を過ごした夫人(36)は、「上の子どもたちを遊ばせながら景色を眺められて、家にこもっていても快適に過ごせました」。

LDKと横並びにある子ども室も主寝室も、仕切り戸は日中ほぼ開けっ放し。広々としたスペースで子どもたちが走り回るという。また、LDKの一角に設けた和室はプレイルームやリビングのように使う。「子どものアレルギーでソファのほこりが気掛かりだった」ため、40センチほど掘り下げ、段差をソファ代わりに。「ロボット掃除機をかけるとき、LDKの床に散らばっている物を和室に一時どけておけるのもいいですね」と夫人は笑う。


夜はお月見

ずっとYさんの実家近くで土地を探していたという夫婦。見つけた土地は高低差もある変形地だった。本やネットなどで事例を見て、「木の温かみと自然光で明るい室内が『いいね』って感じた建築士さんにお願いしました。敷地などの課題もプラスに捉え、ポジティブな話し合いができました」と夫婦。

在宅で仕事をすることが増えたYさんは、部屋の至る所にLANコンセントの設置を依頼。机の高さに合うよう取り付けた。家族の過ごし方に合わせて仕事場を変えられるようになっている。当初はキッチン上のロフトでと考えていたそうだが、「上にいると子どもたちが声をかけてきたり、上ってこようとしたりするので(笑)。結局子ども室で仕事しています」。

春分のころには、LDKの窓から月が見えるという。「家でお月見できてぜいたくな気分」と夫婦。「コロナ禍での家造りでしたが、開放的な暮らしができるようになって本当によかったです」と喜んだ。

LDKからアマハジテラスを見る。テラスの奥行きは約2・3メートルあってゆったり。緑と遠くの街が望める大きな窓、月が見える高窓とで、室内にいながら自然を感じられる
LDKからアマハジテラスを見る。テラスの奥行きは約2・3メートルあってゆったり。緑と遠くの街が望める大きな窓、月が見える高窓とで、室内にいながら自然を感じられる
 

LDKの一角にある和室は40センチ掘り下げられ、段差がソファ代わりに。床や天井の高さを変えることで、広々とした空間の中でも落ち着きを感じられるようにした

LDKの一角にある和室は40センチ掘り下げられ、段差がソファ代わりに。床や天井の高さを変えることで、広々とした空間の中でも落ち着きを感じられるようにした
 

キッチン。上部は木で造り付けたロフトで、電源も整えて在宅ワークに使えるようにしている。ロフトで天井高が低い分、キッチンの照明が手元近くをしっかり照らす

キッチン。上部は木で造り付けたロフトで、電源も整えて在宅ワークに使えるようにしている。ロフトで天井高が低い分、キッチンの照明が手元近くをしっかり照らす
 

主寝室は折り上げ天井で落ち着きのある照明に。前面道路から見えないよう花ブロックで目隠ししており、「これからグリーンも増やしていきたい」と夫人
主寝室は折り上げ天井で落ち着きのある照明に。前面道路から見えないよう花ブロックで目隠ししており、「これからグリーンも増やしていきたい」と夫人
 

子ども室は天窓から光が入る。将来は3室に仕切れるようにした

子ども室は天窓から光が入る。将来は3室に仕切れるようにした


ここがポイント
台形の家に四角の部屋

Yさん宅の敷地は台形、前面道路側から庭に向かって下がり、その高低差は最大2・5メートルあった。設計したデザインネットワークの島田潤さんは敷地を「個性」と捉え、形状も高低差も生かして造成のいらない設計を心がけた。それを見て取れるのが外観デザインだ。

家は敷地に沿った台形にして十分な室内の広さを確保。室内の温度変化を考慮し、温まりやすい南西に水回り、室温が安定している北東に居室を配した。だが、北東面の壁は斜めになり、デッドスペースができてしまう。そこで部屋は使い勝手の良い四角で配置し、それでもできてしまった三角のスペースは収納に。「あえて斜めの外壁から部屋の角を出っ張らせたことで、外観デザインのアクセントにもなった」と島田さん。また、基礎を前面道路の高さに合わせて打って庭側の高低差を際立たせたことで、「庭から見ると家全体が浮いているように見せている」。

外から室内が見える開口はLDKの大きな窓のみだが、基礎が高い分、周囲からは見上げる位置にあるため、塀やよう壁を設けずとも視線が気になりにくい。敷地境界の小さな勾配は元のまま、壁のない緩やかなつながりを持たせたことで、近所付き合いのきっかけになった。実際、Y夫人は「子どもたちが遊んでいると、庭向かいで畑仕事をしているおじさんが声をかけてくれたり、野菜をお裾分けしてくれたりする」と語っている。

「コロナを経験したからこそ、みんなが自然の大切さや家での過ごし方を見直すようになった」と島田さん。LDKの大きな窓は自然の景色を飾る額縁にもなり、南風をLDKから主寝室へと流して室内の心地良さを作り出した。

アマハジテラスから室内全体を見る。仕切り戸を開け放って広々と使う。右奥の主寝室に向かって風が流れ、心地よい空間に。左手にキッチン、水回りが並び家事動線もスッキリ
アマハジテラスから室内全体を見る。仕切り戸を開け放って広々と使う。右奥の主寝室に向かって風が流れ、心地よい空間に。左手にキッチン、水回りが並び家事動線もスッキリ

洗面洗濯室は室温が上がりやすい南西に設け、通風で湿気がたまりにくいよう配慮。洗濯と収納が完結できるようはねあげ式の作業台や家族分の棚を設けている。写真右手に浴室、左手にキッチン、廊下からもアクセスできて出かける準備もラクに洗面洗濯室は室温が上がりやすい南西に設け、通風で湿気がたまりにくいよう配慮。洗濯と収納が完結できるようはねあげ式の作業台や家族分の棚を設けている。写真右手に浴室、左手にキッチン、廊下からもアクセスできて出かける準備もラクに
 

浴室。バスコートを設けて風通しで湿気を外へ出す

浴室。バスコートを設けて風通しで湿気を外へ出す
 

 

トイレの洗面。タイル選びにこだわった夫人は「縦貼りにしたらスタイリッシュに見えた。浴室や洗濯洗面室のタイルを選ぶのも楽しかった」と話す

トイレの洗面。タイル選びにこだわった夫人は「縦貼りにしたらスタイリッシュに見えた。浴室や洗濯洗面室のタイルを選ぶのも楽しかった」と話す

北東面の外観。子ども室と和室の一部が壁から飛び出ており、特徴的な見た目に。基礎を高く設けて周囲からの視線を遮りつつ、塀がなく近所と緩くつながるようにした(デザインネットワーク提供)
北東面の外観。子ども室と和室の一部が壁から飛び出ており、特徴的な見た目に。基礎を高く設けて周囲からの視線を遮りつつ、塀がなく近所と緩くつながるようにした(デザインネットワーク提供)


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:266.60平方メートル(約80坪)
1階床面積:122.62平方メートル(約37坪)
建ぺい率:53.73%(許容60%)
容積率:43.24%(許容200%)
用途地域:無指定
躯体構造:鉄筋コンクリート造
設計:デザインネットワーク
   島田潤
構造:建築構造研究所
施工:ナイソ
電気:克電気工事
水道:海西工業

問い合わせ
デザインネットワーク
電話098・858・2008
http://www.dn-okinawa.com/


撮影/比嘉秀明 取材/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1902号・2022年6月17日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
川本莉菜子

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編集者
好奇心が行動源。まち歩きで面白いことを発見した時に興奮し、脇目振らずに追いかけて迷子になること多し。人が住む・暮らす場所にある歴史、知恵、繋がりの面白さを見つけて発信していきたいです。よく県外出身かと聞かれますが、生粋のウチナーンチュです。

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