地に足着けた暮らしを|カメアトリエ[お住まい拝見]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

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2023年5月12日更新

地に足着けた暮らしを|カメアトリエ[お住まい拝見]

[マンションの10階から平屋へ]
マンションの10階に住んでいたが「ステイホーム中の子育てが苦しかった。庭のある暮らしがしたい」と新築を決意した吉田さん。広い庭があり、空・緑を取り込む開放的な家で伸び伸び暮らす。

庭に面した南側は大開口があり、開放的。外との距離が近く、キャンプのような住まいだ。写真右側のタープの下で愛犬・サスケが涼んでいる。庭ではニワトリを飼い、畑や肥料作りにも励む
庭に面した南側は大開口があり、開放的。外との距離が近く、キャンプのような住まいだ。写真右側のタープの下で愛犬・サスケが涼んでいる。庭ではニワトリを飼い、畑や肥料作りにも励む


畑や掃除 生活が遊び

吉田さん宅
 補強CB+木造/自由設計/家族4人 

ニワトリにエサをやる長男・陽くん(5)を追いかけ、ダイニングから庭へ走る次男・洋くん(3)。その背中を見ながらキッチンに立つ愛さん(36)のおなかには3人目の子。

コロナ禍で「庭のある暮らし」に憧れ、住んでいたマンションを売却。隣地に果樹園があり、借景を楽しめる約136坪の旗竿地を購入して約26坪の家を建てた。

「やんちゃ盛りの子を抱えてのステイホームは苦しかった。そんなときSNSで、糸満市にある建築士さんの自邸を見たんです。シンプルなブロックの家と、広い庭。焚(た)き火をしていて、いいなぁって」と、その建築士に依頼した。

新居は開放的で自然との距離が近い。弘輝さん(37)は「暑い日は何度も水浴びをするし、虫との戦いもある」と苦笑いしながら「前は休みのたびに外出していたけど、今は畑やニワトリの世話、窓掃除とかで忙しい」と楽しげだ。

キッチンやダイニングがある「居間」。床に座って過ごすことを想定して、造作収納は低めに設置
キッチンやダイニングがある「居間」。床に座って過ごすことを想定して、造作収納は低めに設置

キッチンは、無印良品とサンワカンパニーのコラボ製品。夫人はここで発酵調味料を使った普段ご飯の料理教室を開いているキッチンは、無印良品とサンワカンパニーのコラボ製品。夫人はここで発酵調味料を使った普段ご飯の料理教室を開いている

木の窓枠は額縁のように外を切り取る木の窓枠は額縁のように外を切り取る

庭でニワトリを育てる。慣れた手つきで餌やりをする陽くん。小屋は吉田さんがDIYで建てた庭でニワトリを育てる。慣れた手つきで餌やりをする陽くん。小屋は吉田さんがDIYで建てた


自宅で料理教室

住居部は大きく二間。LDKのある「居間」と、唯一の個室である「寝間」だ。仕切りは最小限。風が抜け、顔が見える造りを望んだ。

居間の主役は、夫人が一目ぼれしたステンレス製のアイランドキッチン。「扉がないのでモノが取りやすく、管理がしやすい」と話す。この自慢のキッチンで、発酵調味料を使った料理教室を始めた。

居間は、キッチン以外すべてリビング。床に座り、寝そべり、くつろぐ。「だから造り付け収納は、低めに設置してもらいました」と弘輝さん。テレビは置かず、木枠の向こうの「絵みたい」な景色や、檜(ひのき)の屋根組みをボーッと眺める暮らしが「すっごく心地よいんです」。

大胆にも思えるオープンな造りは、家族を“解放”するカギだった。

手前が洗面室で、奥が脱衣所。夫人の要望から扉のないオープンな収納がたっぷり。「通気も良いし、出し入れしやすい。ずぼらな私にぴったり」と話す。大きな鏡とその上の窓も、身支度のしやすさを考えてのこだわりポイント
手前が洗面室で、奥が脱衣所。夫人の要望から扉のないオープンな収納がたっぷり。「通気も良いし、出し入れしやすい。ずぼらな私にぴったり」と話す。大きな鏡とその上の窓も、身支度のしやすさを考えてのこだわりポイント
 

玄関を入ると窓から視線が抜ける。廊下や窓、天井の抜け感が床面積以上の広がりを感じさせる

居間から寝間側を見る。左右2本の廊下があり、それぞれの間を回遊できる居間から寝間側を見る。左右2本の廊下があり、それぞれの間を回遊できる


玄関側の外観


ここがポイント
県内10棟目 進化するトラストブロック造

吉田邸は果樹園のある南側に庭を設け、そこに向けて大きく開くことで「敷地の魅力を最大限に生かし、空と緑を目いっぱい取り込んだ」とカメアトリエの亀崎義仁さん。

同邸の構造は、亀崎さんが考案したセミオーダー建築「トラストブロック造」。檜(ひのき)屋根のトラス(木材を三角形に組んだ構造)と、補強コンクリートブロックで構成する。どちらも既製品でサイズが決まっているため、「セミ」オーダーだ。「家造りって、施主が決めなくちゃいけない事柄が多過ぎる。あえて構造のサイズを限定することで、室内空間をじっくり考えられるようにした」。

県内で10棟を形にした。「同じチームで繰り返し造っているので、施工性も上がっている」。亀崎さんも、4年前にトラストブロックの自邸を建てた。「住んでみて感じたのは、台風時に木屋根が軋(きし)み、大きな音がすること。だから吉田邸は、屋根の部材を従来型(15ミリの合板)から、30ミリの足場板に変えた」。コストは掛かるが、剛性が増し断熱性も上がった。「わが家は雨音が気になることもあるが、吉田邸は割と静か。遮音性向上にもなっている」

強固になった屋根を軽やかに見せているのが、もう一つの進化。「軒天をガラス張りにした=左上イラスト。こうすることで家全体が明るくなり、屋根が少し浮いているように感じる。軽やかで開放的に見える」と話した。

雨戸の代わりに、普段使いできる「すのこ戸」を設置。屋根の下部から光が入っているのは軒天がガラス張りになっているから=下イラスト


[DATA]
家族構成:夫婦、子2人
敷地面積:451.05平方メートル(136.44坪)
1階床面積:86.81平方メートル(26.26坪)
建ぺい率:20.32%(許容50%)
容積率:19.25%(許容100%)
用途地域:市街化調整区域
躯体構造:補強コンクリートブロック+屋根木造
設計:カメアトリエ 亀崎義仁
構造:前田建築設計事務所 前田耕司
施工:(株)尚建 新垣維浩、(株)合掌 原田量治
植栽:座安樹苗園 座安正通

問い合わせ
カメアトリエ
電話=098・836・7221
https://www.cameatelier.com/


撮影/比嘉秀明 文・東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1949号・2023年5月12日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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