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2021年8月27日更新

[沖縄・お住まい拝見]つながり多い2階建て|(有)門一級建築士事務所

[すのこの床で家族近く]
片流れ屋根が特徴的なNさん(38)宅は、広々とした空間が重なる2階建て。大きな窓で室内外をつないだり、すのこ状の床で上下階をつなぐことで、自然や家族との距離を近付けた。

2階にあるLDK。大きな開口部によって、周囲に広がる緑の風景を借景として楽しめる。手前側の床はすのこ状になっており、1階の様子が見える。右手の窓際にあるベンチの下は収納になっている
2階にあるLDK。大きな開口部によって、周囲に広がる緑の風景を借景として楽しめる。手前側の床はすのこ状になっており、1階の様子が見える。右手の窓際にあるベンチの下は収納になっている


2階LDKに緑の借景

Nさん宅
 壁式RC造/自由設計/家族4人 

本島中部の丘のふもと、Nさん宅は緑が広がる地域に建つ。玄関扉を開けると、玄関ホールだけでなく、土間の廊下や寝室など、1階全体が見渡せる。「できるだけ仕切らない、一つの広い空間にしたくて」とNさん。長男(5)と次男(4)はその広さを生かし、車のおもちゃに乗ったり走ったりと伸び伸び遊ぶ。

2階に上がるとさらに開放的。LDKと水回りだけというシンプルな間取りの分、LDKは約22・5帖と広い。加えて、東面と南面の大きな窓は、周囲に茂る緑の風景を室内に取り込む。視線は外に抜け、森の中にいる時のように心が落ち着く。「夜は虫やカエルの声が心地よく、街灯もないので子どもたちと星空観察も楽しめますよ」

ふと足元に目を向けると、床の一部がすのこ状になっており、1階の土間が見える。夫人(38)は「キッチンにいながら1階で遊ぶ子どもたちの様子が伝わってきます」。

そんな夫人が立つキッチンも広々。「料理やお菓子作りをする時、家族みんなで並んでも作業がスムーズ」と使いやすさに満足する。

南東側から見たLDK。片流れの天井で圧迫感がなく、面積も約22.5帖と広々。夫人がこだわったキッチンのカウンターも幅約2.8メートルと広い。「買い物後の荷物を広げるのに重宝するし、子どもがここで宿題する様子も料理しながら確認できます」
南東側から見たLDK。片流れの天井で圧迫感がなく、面積も約22.5帖と広々。夫人がこだわったキッチンのカウンターも幅約2.8メートルと広い。「買い物後の荷物を広げるのに重宝するし、子どもがここで宿題する様子も料理しながら確認できます」

外観。建築士の金城さんは「建築家・吉村順三が手掛けた『軽井沢の山荘』のイメージで、周囲の風景になじむ山小屋のようなシルエットをしている」
外観。建築士の金城さんは「建築家・吉村順三が手掛けた『軽井沢の山荘』のイメージで、周囲の風景になじむ山小屋のようなシルエットをしている」

約8帖のロフト。子どもたちの遊び場として使っている。夫人は「散らかっていても下からは見えないので最高です!」
約8帖のロフト。子どもたちの遊び場として使っている。夫人は「散らかっていても下からは見えないので最高です!」


広さ倍でも一体感

2LDKのアパートに住んでいた頃、Nさんは「細かく仕切らない方が、自分にとっては使いやすいのに」と常々思っていた。

そんな中、夫人の姉の家の近くで土地を購入。設計は、Nさんが「南国風だけどモダンな構えがいい」と、気になっていた家を手掛けた事務所に相談した。

建築士は、Nさんが抱いていた「できるだけ仕切らない」という考えのもと、広い空間を重ね、すのこ状の床でつなぐプランを提案。夫婦はそれを気に入り、工事が始まった。

完成した住まいに「圧迫感がないどころか、2階建てなのに一体感がすごい」とNさん。夫人は「アパートより2倍以上も広くなっているのに、いつでも4人一緒にいる感じ」。随所でつながる造りによって、家族の距離は近いままだ。

1階。玄関、土間の廊下、居室部分が一つの空間にある。土間の上部は2階LDKとつながる
1階。玄関、土間の廊下、居室部分が一つの空間にある。土間の上部は2階LDKとつながる
 

玄関スペース。中央の白い箱は靴箱。Nさんは「土間の廊下なので、自転車を中に入れられるし、雨の日にぬれたまま家に入っても気にならない」
玄関スペース。中央の白い箱は靴箱。Nさんは「土間の廊下なので、自転車を中に入れられるし、雨の日にぬれたまま家に入っても気にならない」
 

洗面室と浴室。浴室の窓からは山の木々が見え、「窓を開けて入るのが気持ちいい」とNさん。まさしく森林浴だ

洗面室と浴室。浴室の窓からは山の木々が見え、「窓を開けて入るのが気持ちいい」とNさん。まさしく森林浴だ
 

トップライトで明るいウオークインクローゼット。奥には洗濯機と乾燥機があり、乾いたらすぐに片付けられる。おしゃれ着など乾燥機を使えない衣類を外に干す時のために、洗濯機から取り出した物をいったん掛けておく準備スペースもある

トップライトで明るいウオークインクローゼット。奥には洗濯機と乾燥機があり、乾いたらすぐに片付けられる。おしゃれ着など乾燥機を使えない衣類を外に干す時のために、洗濯機から取り出した物をいったん掛けておく準備スペースもある


ここがポイント
1・2階ともに一部屋ずつ

Nさんが求めたのは「眺望を生かした、ワンルームのような2階建て」。周囲の緑を楽しむためにLDKを2階に設けた、できるだけ空間を分離しない家だ。

そこで、門一級建築士事務所の金城豊さんは「つながりをテーマに設計した」と話す。

まず、1階と2階はそれぞれ一つの大きな部屋として捉え、「仕切りを最小限にすることで細かく区切られがちな空間をつないだ」

特に1階は玄関から土間の廊下、居室部分が一つの空間になっている。一方で、土間の廊下と居室部分は引き戸で仕切ることも可能な上、居室部分は寝室と子ども室に分割できるようにもなっている。状況に応じた仕切り方ができる造りだ。

1階と2階をつなぐため、階段だけでなく、2階LDKにすのこ状の床を設置。各階で互いの様子を把握しやすくした。

また、この床は風の通り道にもなる。玄関横のジャロジー窓を開けると、そこから入った風がすのこ状の床や階段を通って2階に上がり、ロフトの窓から抜けていく。「2階の天井に傾斜がついていることもあり、登り窯のように空気が流れていく」と説明する。

LDKの大きな窓で景色を取り込んだり、外観を灰色がかった色にするなど、周囲とのつながりにも配慮したという。

そのほか、「掃き出し窓にすると、窓の前に物を置けなくなるから」というNさんの考えにより、1階の窓はすべて腰の高さより上に設けられている。実際、家具の配置などにほとんど制約がないという。
 

階段。トップライトの光が1階まで落ちてきて明るい。奥に進むとウオークインクローゼット、右の階段はLDKにつながる。将来、エレベーターが必要になった際は、右の階段部分に設置する予定で、そのための強度も確保されている

階段。トップライトの光が1階まで落ちてきて明るい。奥に進むとウオークインクローゼット、右の階段はLDKにつながる。将来、エレベーターが必要になった際は、右の階段部分に設置する予定で、そのための強度も確保されている


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:311.17平方メートル(約94坪)
1階床面積:55.14平方メートル(約16坪)
2階床面積:65.94平方メートル(約20坪)
建ぺい率:24.33%(許容60%)
容積率:38.91%(許容200%)
用途地域:市街化調整区域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:(有)門一級建築士事務所 金城豊 平野悠
構造:建築設計・明
施工:(株)金城組
電気:日章電気工事(株)
水道:(株)Hys企画
キッチン:MOV

問い合わせ
 (有)門一級建築士事務所
  電話098・888・2401
  https://www.jo1q.com/


撮影/比嘉秀明 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1860号・2021年8月27日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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