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2017年2月11日更新

「人口減少」から見る建築業界の今とこれから|下地鉄郎のコラム②

建築業界は「斜陽産業だ」といわれることがある。仕事はやりがいもあり、そんなことはないと思うのだが、高度成長時代に先輩方から聞いた話や自分の学生時代と比べると、近年は業界に入る若者が減少しているのが現状だ。




最近の建築業界は、人手不足や需要増から求人倍率は上がってきており、バブル崩壊以降20年近く下がり続けてきた現場での労務単価も、上昇に転じてきている。また、さまざまな雇用対策もなされてはいるのだが、景気に左右されやすい業界のイメージなどがあり、若い人材の採用や定着には直接つながってはいなさそうだ。現状が変わるには、まだまだ時間はかかる。

ところで、雇用環境が整備され人手不足が解消されたとしても、業界にはひとつ大きな問題がある。それは人口減少時代に入ったことで、かつての人口増加時代のような住宅や公共インフラ需要は確実に減少していくということ。

総務省発表によれば去年1月1日現在の全国の人口は1億2822万人で、人口増減率は年0.16%減。世帯数については核家族化などにより微増傾向が続いていたが、今後は減少に転じていくという。そのなかで、沖縄県の増減率は東京都に次いで年0.39%増加と、世帯数とともに増加傾向である。しかし、10~15年後には人口・世帯数ともに減少に転じると予測されている。

人口・世帯数の減少と業界需要の関係でいうと、空き家増加の話題などは分かりやすい。2013年の住宅・土地統計調査によれば、全国の住宅数は6063万戸の一方で、世帯数は5246万世帯しかなく、住宅数を約817万戸下回っており、今後も空き家は確実に増加していくという。

若者の業界離れとともに、今後も続いていく世帯数減少と空き家増加など、なんだか悲観的な話が続いたが、業界にとって必ずしも「人口減少=悪」ではない。少なくとも国のGDP水準を維持することで、国民1人あたりの生活水準は単純計算では上がる。また、これまでストックしてきた建物の1人あたり面積が広くなることで、空間のゆとりが生まれるとともに新たな活用の可能性も広がる。

人口増加時代には、増加に合わせ整備されていく仕組みの効率化に努めてきたわけであるが、今後は人口減少を素直に認め、積極的に新たな可能性に向けた仕組みを考えて実行していく時代ともいえるのではないか。

(一級建築士)


下地鉄郎さんのコラム
vol.03 建物の平均寿命
vol.02 人口減少から見る建築業界の今とこれから
vol.01 建物の健康診断

 
※画像はイメージです。

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