家づくり
2025年6月20日更新
カーポート増設のワナ|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第27話「自宅敷地内に設置したカーポート」
文・写真/喜屋武幸治(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)

住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は、「カーポートの増設」についてインスペクション沖縄の喜屋武幸治さんが説明。「無申請で違反状態になっているケースを多く見かけるが、救済措置もある」と話します。
第27話「自宅敷地内に設置したカーポート」
カーポート増設のワナ
依頼内容
木造一戸建ての住宅を購入し、敷地内に鉄骨造のカーポートを設置。後に、そのカーポートは「増築の確認申請」が必要だったことが判明。このままではリフォーム時や将来的な売却にも支障が出そう。解決策をアドバイスしてほしい。

カーポート外観(イメージ)
申 請不要と思われがち
施主は何年か前に、敷地内にカーポートを設置。屋根を建物までつなげたことで、雨の日もぬれずに家に入ることができ、大変満足していました。
その後、住宅をリフォームするか売却するかで悩み、法的な点も含め建物全体のインスペクションをすることにしました。結果、カーポートは行政による建築確認が必要であったことが発覚。このままではリフォームはもちろん、売却にも支障が出るため、解決方法もアドバイスしてほしいという依頼でした。
「カーポートなら申請はいらないのでは?」と思う方も多いかもしれません。しかし、2025年4月から建築基準法が改正され、確認申請の要件がより厳格化されました。それに伴いカーポートの設置には、より注意が必要になります。
申請が不要なケースは以下の条件です。
◆防火地域・準防火地域以外で建築面積が10平方メートル以内
◆高い開放性を有すること
この条件を外れると、「建築物」として増築の建築確認が必要になります。
12 条5項 救済措置あり
違反が見つかったからといって、即撤去・罰則というわけではありません。
ここで知っておきたいのが「建築基準法第12条第5項」です。
行政庁(自治体)が必要と認めた場合、建築物の所有者・管理者に対して、報告の徴収、立入検査、是正指導などを行うことができるとする規定です。この条文に基づき、無許可で設置されたカーポートに対しても、調査や報告の提出、必要に応じた是正・補強、構造確認書類などの提出を行うことで、使用の継続が認められるケースがあります。
今回のケースでは、以下の点を確認・是正しました。
◆メーカーと協議し、カーポートの構造計算書を提出。
◆柱の埋め込み深さの確認 基礎の掘削を行い、目視で確認。
◆材料の技術基準項目の確認 鉄骨の厚さ、基礎サイズ等を確認。
これにより、行政庁との協議を経て、12条5項の報告に基づいて使用の継続ができるようにはなりました。ただし、建物の検査済証などが発行されたわけではないので、不動産売却時には説明が必要だとアドバイスしました。

申請が必要にもかかわらず無申請で設置された違反カーポートでも、建築基準法12条5項に基づき調査・報告をすることで救済措置が受けられるケースもある。その調査の様子
(上)鉄骨柱の厚みを超音波で測定
(下)基礎のコンクリート強度を検査

県内でも知らずに無申請でカーポートを増築したケースが多く見られます。違反状態になってしまっても、適切な手順を踏めば救済される余地があります。特に建築基準法第12条5項の存在を知っておくことで、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。
設置前に確認すべきポイント
◆土地の建ぺい率・容積率の確認
◆接道義務など、敷地の法的条件の確認
◆地区計画の有無など所管行政庁に相談
◆確認申請が必要かを建築士に相談

きゃん・ゆきはる/YUKI環境設計代表
電話=070・9035・5692
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2059号・2025年6月20日紙面から掲載
第2059号・2025年6月20日紙面から掲載