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2017年4月5日更新

建物の平均寿命|下地鉄郎のコラム③

建物を人間の身体にたとえると、ハード面で言えば、構造体は骨格、各設備機器は各器官、配管は血管やリンパ系、電気系統は神経系、仕上げは皮膚となるだろうか。

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建物を人間の身体にたとえると、ハード面で言えば、構造体は骨格、各設備機器は各器官、配管は血管やリンパ系、電気系統は神経系、仕上げは皮膚となるだろうか。建築に関する仕事は、立地・コスト・地域性などのソフト面を考えつつ、それら建物のハードな要素を、目的や条件に応じて組み立てたり、組み換えたりしながら、人間の生活に合うようにしていくことと言ってもいい。

ところで、かつて世界一長寿といわれた沖縄県だが、2010年調査の平均寿命は、女性は1位から3位に、男性は25位から30位まで後退した。男性肥満度については、現在全国一だそうだ。戦後に欧米型の食事がいち早く入ったことや、車社会による生活習慣病などが主な原因とされている。戦前の食文化や生活習慣には戻れないとしても、県民全体で意識的に改善していかなければとはよく聞くところ。

平均寿命や健康状態の改善の話は、建物についても同様だ。自己の居住用とする住宅の「法定耐用年数」と呼ばれている基準では、鉄筋コンクリート造で70年、木造で33年とされている。沖縄は鉄筋コンクリート造を主とした非木造住宅の割合が9割(全国平均では4割)。これらの年数と割合からみると、70年耐用するであろう沖縄の住宅は、全国平均と比べ長寿命であるはずだ。

しかし驚くべきことに、沖縄の住宅の耐用年数(滅失住宅の平均築後年数)は、現実には「22.6年(全国平均27年)」(2008年の土地統計調査)となっている。この統計上の数字は実際の住宅平均寿命とは異なると言われてもいるが、全国平均と比べると、4年以上の開きがあることは事実だ。理由としては、沖縄の塩害などの気候的な事情もあるが、住む側や作る側の建築後のメンテナンス意識の低さや、老朽化してきた際に壊す以外の選択肢が少ないという点も大きいと考えられる。

人間の身体の健康や寿命は、生活習慣を見直し改善していくことによりコントロールできる。同様に建物についても、メンテナンス意識を高めることと壊す以外の選択肢を社会が用意していくことが大切であるということを、仕事を通じて伝えていければ。

(一級建築士)


下地鉄郎さんのコラム
vol.03 建物の平均寿命
vol.02 人口減少から見る建築業界の今とこれから
vol.01 建物の健康診断

 
※画像はイメージです。

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