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2025年4月18日更新

和室の天井裏に雨水管|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第25話「築52年の鉄筋コンクリート造2階建て住宅」

文・下地鉄郎(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)


 
住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は、空き家となっている実家の状態が知りたいという依頼。インスペクション沖縄の下地鉄郎さんが調べると、和室の天井裏に雨水管があり、そこから雨漏りしているという不思議な状態だった。

   第25話「築52年の鉄筋コンクリート造2階建て住宅」
和室の天井裏に雨水管

 依頼内容 
築52年の鉄筋コンクリート(RC)造2階建ての実家を2年前に相続したが、別に住居があるので住んでいない。空き家状態が続いているため売却も考えている。不動産会社に相談したところ、築古なことと1階の和室天井に腐食も見られることから、インスペクションを紹介された。

 
 

  フォーム範囲の判断に

依頼主が2年前に相続した実家は、築古のRC造。空き家状態が続くと「税金面でも不利になっていく」と税理士から助言されたこともあり、1年内に売却、またはリフォームをして収益物件化をしようと考えているとのこと。

リフォーム業者に見積もり依頼をしたところ「売却にしても収益化にしても、全体的ではなく部分的なリフォームをする方が良さそう」と言われた。その最終判断のためにも、建物の健康状態を確認しておきたいとのことで、インスペクションの依頼となった。


  井裏で水漏れ確認

この建物は、両親と住んでいた愛着がある実家で、和室天井の腐食の原因も気になっているとのことから、依頼者も現地調査に同行することとなった。

外観はきれいな状態であった。依頼者によれば、過去の増築工事の際に外壁塗装も行ったそうだ。

気になっているという1階和室天井を見てみると、腐食が進行し天井材が崩れ落ち始めている。赤外線カメラを向けてみると腐食部の温度が低くなっており、水気を帯びていることが分かった。和室の上の階には浴室があり、そこから漏れているのかもしれない。


問題の和室天井に赤外線カメラを向けると、温度が低く水気を帯びていることが分かった

和室押し入れ内の点検口から天井裏を見回してみると、いくつかの配管が確認できた。浴室用の排水管のほか雨水管らしきものもある。腐食の原因とみられる水気は浴室用の排水管ではなく、雨水管から垂れてきているようだ。

ただ、和室上の階は室内である。通常は室内に雨水管を通さないはずだが…。


和室天井にあった雨水管は、この屋上のドレンとつながっていた。屋上ドレンは腐食が進行していた

  築で雨水管が室内に

建設当初の図面が残っていないため、依頼主から聞き取りをしながら建物周囲を見て回ったところ、増築工事の際に1階ピロティを和室に、2階バルコニーを子ども室にしたようだ。1階和室の天井裏にあった雨水管は、屋上の雨水ドレンから通じていた。増築する際、2階バルコニーの雨水管はそのまま壁内に隠し、1階ピロティの雨水管は天井裏から外部へ延ばす施工がなされていた。屋上の雨水ドレンは金属部分の腐食が進行しており、雨漏りの原因はそこだった。

予定としている部分的なリフォームの際には屋上防水も考えているそうで、その際に雨水ドレンの交換と、2階壁内・天井裏の雨水管チェックを念入りに行うよう伝えた。依頼主はリフォーム計画の目処が立ち安心したようだった。



しもじ・てつろう/1級建築士。(株)クロトン代表取締役
電話=098・877・9610

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2050号・2025年04月18日紙面から掲載

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