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2025年5月16日更新

侵入する空気 どこから|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第26話「工事中の木造住宅」

文・下地鉄郎(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)


住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は、工事中の木造住宅の施主からの依頼。「高性能住宅として設計しているが、断熱性能をチェックしたい」とのこと。インスペクション沖縄の下地鉄郎さんが調べた。

   第26話「工事中の木造住宅」
侵入する空気 どこから

 依頼内容 
まだ工事中の木造住宅のインスペクション依頼。「高性能住宅として設計されているが、特に『断熱性能』について念のため気をつけるべきことなどアドバイスがほしい」という相談。

 
 気密測定のイメージ図 
 
気密測定は通常、室内を減圧状態にし、外から入ってくる空気量などを測ることで建物の気密性能(隙間面積など)を計測する

  事中の木造住宅の依頼

今回は、築古でも新築でもない、まだ工事中の木造住宅。「断熱性能をチェックしてほしい」という依頼。

資料を見せていただくと、設計の段階で数値をもとに断熱材が指定されており、断熱性能においてはしっかり計画されている。設計の通りに施工されれば問題はないはずである。

ただし、断熱材の指定と同時に、設計段階の換気計画と工事段階の気密施工が重要である。今回、断熱材や換気器具類はしっかり施工されているということから、気密性について調査をすることとした。

また特別に気密性を数値でも測ることになり、気密測定機を持つ専門業者に協力してもらった。


  内減圧し気密性を測定

調査には半日以上かかるため、その日の工事は止めていただき調査に入った。図面と照らし合わせてみると、設計図通りに施工されているようであった。

次に気密測定。測定するためには室内全体を減圧する必要がある。特別な送風機で室内を減圧状態にし、室外から入ってくる空気量を測ることで気密性を数値で測ることができる。減圧状態にすることで、屋外からの隙間風も見つけやすくなる。
 
実際の気密測定の様子

測定条件を満たすよう準備し、測定を行ったところ、設計段階で想定していた数値よりも高い結果となった。高いということは隙間が多い、ということだ。


気密測定機の画面
 
  密テープの剥がれ発見

隙間が大きい場所がないかを探してみると、階段付近から隙間風があることが分かった。壁を一部外して調べてみると、外断熱仕様の気密テープが一部、剥がれているようであった。気密施工後に何らかの原因で剥がれてしまったのかもしれない。その部分の気密テープをしっかり貼り直せば、計画通りの数値内となることが分かり、依頼者は安心されていた。 


階段付近に隙間風があることを発見
 
通常のインスペクションは建設後に行うが、今回は依頼者の強い希望で工事中に気密測定も含めて行った。気密性能が低いと隙間風だけでなく湿気も入ってくる。特に沖縄の場合は、湿気がエアコンの冷気と接触することで結露が起こり、カビなどが発生することがあるため高性能住宅を施工する際には細心の注意が必要だ。

改正省エネ法が施行されたこともあり県内でも高性能住宅の事例が増えてきているため、このような相談は今後、増えていくのかもしれない。



しもじ・てつろう/1級建築士。(株)クロトン代表取締役
電話=098・877・9610

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2054号・2025年05月15日紙面から掲載

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