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2024年12月20日更新

雨水の行き先は?|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第21話「築50年の鉄筋コンクリート造2階建て 賃貸併設住宅」

文・小島仁美(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)

住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は、建物の購入予定者から「状態を把握しておきたい」という依頼。インスペクション沖縄の小島仁美さんが建物診断をしたところ、不思議な配管接続を発見した。
 

 第21話「築50年の鉄筋コンクリート造2階建て 賃貸併設住宅」

雨水の行き先は?

 依頼内容 
築50年の鉄筋コンクリート造2階建て住宅を購入予定。1階は賃貸住宅が3室、2階は専用住宅である。インスペクションで建物の状態を把握しておきたい。


雨水と汚水の管路

雨水と汚水は一緒にしてはいけない。別々の管を通って、汚水は下水処理場へ雨水は川・水路・海などへ放流される(那覇市の資料より)


  年数なりの劣化状態

1、2階とも空き家になって数年が経過しており、既存図面などはない状態であった。以前は1階が賃貸で、2階に売り主のご両親が住んでいたが、建物を引き継いだ売り主は居住の予定はなく、建物の維持管理はしてないとのこと。

現地に行ってみると、敷地は広く、建物の前面は50坪ほどの庭が広がっている。

外部から調査を始める。屋上防水は劣化で剥がれており、微細なひびも多数確認した。

室内は2階の天井内をのぞくと案の定、クラックやコンクリートの破片が落下していた。1階の床下は、土であったが風通りのよい立地なのか乾燥しており湿気などは感じられなかった。建物は築年数なりの劣化状態であるが、購入予定の依頼者と売り主とも共通認識で建物の不具合の場所が把握でき、建物売買が順調に進みそうであった。




敷地内の雨水は、雨水管を通って浸透桝・集水桝に集められ、地中に浸透させたり側溝に放流される


  水管と汚水管が合流

最後にもう一度外周を確認していると、少し変だな? と思う箇所があった。雨水管が土間に埋め込まれているのだ。周囲を見ても浸透桝(ます)(雨水を一旦受け止め、地中に浸透させたり側溝に放流したりする設備)などは見当たらない。雨水管の行き先を調べるため敷地を歩き回ったが分からなかった。

雨水は基本敷地内で処理しなくてはいけない。汚水管に流すのは適切ではない。

念のため汚水管の点検口を開けてみるとわずかに湿りがある。数年、空き家なので汚水は流れてないはずである。気になったので、雨水管の入り口となる屋上に登り、雨水ドレン管に水を流してみた。すると、汚水管の点検口から水が流れることを確認したのである。つまり、雨水管が汚水管と合流していることがわかった。

売り主は、どのような経緯があってこうなったかは、わからないとのこと。

謎ではあるが、今回のインスペクションで発見できて良かった、と両者とも話していた。購入予定者は庭のリノベーションを考えているので、そのときに適切な配管工事を行うとのことであった。


 解決策・アドバイス 
市町村により雨水の放流方法は違いますが、汚水と雨水を同じ管路に流してはいけません。汚水(トイレ・台所・お風呂・選択などの排水)は下水管を通って下水処理場へ、雨水は浸透桝を通って地中に浸透し、川・水路や海に放流されます。



こじま・ひとみ/既存住宅状況調査技術者、二級建築士
電話=098・877・9610


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2033号・2024年12月20日紙面から掲載

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