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2025年1月17日更新

庭木から雨漏り?|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第22話「築60年の木造セメント瓦の古民家住宅(賃貸)」

文・下地鉄郎(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)

住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は貸している古民家で雨漏りが見つかったが「メンテをすれば今後も貸し続けられるのか判断したい」という依頼。インスペクション沖縄の下地鉄郎さんが調査した。
 

 第22話「築60年の木造セメント瓦の古民家住宅(賃貸)」

庭木から雨漏り?

 依頼内容 
築60年の木造平屋セメント瓦屋根(一部鉄筋コンクリート造で陸屋根)住宅。現在は庭付き古民家として貸している。台所で雨漏りが見つかったが、今後も貸し続けられるか判断したい。


断面イメージ図




  ビから雨水浸入

依頼物件は街中にある古民家で、現在は賃貸にしているそうだ。今回は、「台所に雨漏りが見つかったがメンテナンス次第で今後も貸し続けられるのか判断したい」という依頼だった。

まずは事前ヒアリング。安く貸していることから、5年前からの借り主は倉庫のように使用していた可能性もあり、半分空き家状態が続いていたそうだ。その借り主が近く退去する予定とのことで、久しぶりに現状を確認に行くと、庭木が想像以上に繁殖していて驚いたそうだ。さらに台所では雨漏り跡が見つかったという。

現地に行くと、台所の雨漏りがすぐに確認できた。台所上の鉄筋コンクリート造の陸屋根ヒビからの雨水侵入のようである。他の部屋は経年変化は感じられるが雨漏りなどの症状は特にない。
 

雨漏りしている台所


  根を覆うガジュマル

その後、建物外を確認したところ、壁にガジュマルの枝葉が繁殖しており、一部は隣地へ越境していた。脚立で屋根に上がってみたところ、屋根はガジュマルの根と枝葉でびっしり覆われていた。
 

屋根を覆うガジュマル


主に覆われていたのは台所の上。雨水などの水分が根や葉で保水されることで陸屋根の水はけが悪くなり、微細なヒビが雨漏りにつながってしまったようだ。ヒビに根が入り込んでいる可能性もある。早めに根や枝葉を除去しないと、雨漏り被害が拡大するだけでなく、ご近所トラブルにも発展しかねない。

枝葉が一部、隣地に越境していた


次の借り手を探すためにも、雨漏り補修工事と合わせて、屋根と壁を覆っているガジュマルの根と枝葉を除去した上で、少なくとも台所の屋上は防水塗装することをお勧めした。ガジュマルを含めた庭木については、次の借り主側で伐採や剪定(せんてい)作業が難しいようなら、防草シートを敷いたり、土間にして繁殖を抑えたり、メンテの手間が少ない樹木に植え替えするなどの対策をお伝えした。

後日、屋根のガジュマルを除去した写真が届いた。解体も検討したそうだが「予算や税金なども考慮すると今回は補修をして、とりあえずこの先10年は賃貸用途を選択しました」という文面が添えられていた。
 

枝葉を除去してスッキリした屋根




しもじ・てつろう/1級建築士。(株)クロトン代表取締役
電話=098・877・9610


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2037号・2025年01月17日紙面から掲載

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