家づくり
2024年8月16日更新
2階床の変色の原因|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第17話「築15年のRC造2階建て」
文・小島仁美(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)
住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は「2階キッチン付近のフローリングが変色している」という相談。インスペクション沖縄の小島仁美さんが、原因を調査し、対策をアドバイスする。
第17話 「築15年のRC造2階建て」
2階床の変色の原因
依頼内容
築15年の鉄筋コンクリート造2階建ての住宅。数年前から2階キッチンのフローリングに変色が現れてきた。給排水の漏れが原因と思われるが、床下は点検口が無く確認できない状態。1階(半地下)倉庫の壁紙にも変色や剥がれが出てきている。原因をはっきりさせたい。
給 水の漏れはなし
事前相談で、間取り図とフローリングと壁紙の変色した写真を送ってもらった。壁紙の変色は水分(湿気など)による変色とみていいだろう。
フローリングの変色に関しては、床下の水分もしくは床下空間とエアコン冷気による温湿度差による結露変色の可能性が考えられる。また、給水管からの水漏れの可能性もあるので、朝一番水道(給水)を使わない状態で、水道メーターが回っているか確認をしてもらったが、動いていないとのことだった。給水からの漏れの可能性は低くなった。
敷地は南北に高低差があり、玄関は2階だ。2階にはLDKと洗面・浴室・トイレがあり、1階に寝室と倉庫と庭がある
今回、問題となっているLDK床の変色や倉庫の壁紙の状態を一緒に確認。湿度センサーで、リビング・キッチン・洗面などのフローリングの水分計測を行った。その数値を平面図に書き込んでいくと、水分数値の大きい場所と小さい場所があり明らかに床下の状態が不均等であり、何らかの不具合が生じている可能性が高まった。
水道メーターを確認すれば、簡単に水道管の漏れがあるかどうか確認できる。水道(給水)を使う前、朝一番に確認することをすすめる
湿度センサーで変色した床の水分量を計測した。ほかのところの数値は6~8%だったのに対し、変色部は58.5%。明らかに水分量が違っていた
洗 濯排水から漏水
原因をはっきりさせたいということから、依頼主の了承のもと数値の高いダイニングの隅に500円硬貨大の穴をドリルで開け、床下を確認した。すると1、2ミリの水が張っている状態だった。狭い場所に入って撮影できるスネークカメラで床下の状況を確認したが、もちろんダイニングの床下に水道配管などはない。
次に水分計測数値が高かった洗面所に穴を開けることは可能かどうか聞くと、日常使う場所なので穴は開けたくない。点検口を新しく設置するので待ってほしいとのこと。もちろん、点検口のほうが床下の確認がしやすいので、しばし待機することに。
後日、点検口を設置したとの連絡があり、再度調査に伺うとやはり一面に薄い水が張っていた。しばらく観察していたが水面の動きは確認できなかったので、1カ所ずつ水道をひねって水の動きを確認していった。
洗面台→シャワー→浴槽→トイレ→洗濯機と確認していくと、洗濯機の排水の時に動きが確認できた。洗濯パンの排水口部分にスネークカメラを近づけてみると、水がにじみ出ていた。念のため、キッチンからの排水の状況も調べたが、水面の動きはなかった。
配管接続部の緩みからくるわずかな漏水が床下一面に広がってフローリングを変色させ、下階へも影響していったことが分かった。
コンクリート住宅のフローリング床組は、ほとんど床下空間が無く点検口がない。メンテナンス性を考えると、水回りだけでも床下空間を確保しておきたい。
解決策・アドバイス
鉄筋コンクリート造の住宅では、床下空間がなく点検口もないことが多い。設計の段階で、水回りだけでも床下空間を確保してもらいメンテナンスをしやすくしておくことも大切だ。
こじま・ひとみ/既存住宅状況調査技術者、二級建築士。
電話=098・877・9610
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2015号・2024年08月16日紙面から掲載