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2024年7月19日更新

床の膨れ 意外な原因|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第16話「築20年のRC造2階建て」

文・下地鉄郎(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)

住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は「ドアの開閉ができないほど床が膨れている」という相談。インスペクション沖縄の下地鉄郎さんが、原因を調査し、対策をアドバイスする。
 

 第16話「築20年のRC造2階建て」

床の膨れ 意外な原因

 依頼内容 
築20年の鉄筋コンクリート造2階建ての住宅。1階寝室の床が昨年から膨れてきており、ドアの開閉もできない状態。5年前に外壁塗装をしてもらった施工会社に、最近見てもらったところ「雨漏りではない」と回答された。昨年よりも膨れが大きくなっていることから、原因をはっきりさせた上で適切な工事をしたい。

 



 ド アの開閉がしづらく

事前相談では、ドアが床の膨らみに引っかかり開かない動画も送ってもらった。力を入れると開閉はできるようだが明らかに生活に支障が生じているようだ。

原因の候補としては、屋根や外壁からの雨漏れ以外に、水道配管の漏れや空調機器からの結露水の可能性も考えられる。また、立地条件や建物仕様により、床下への雨水浸水や地中湿気が原因となる場合もある。周辺環境も含めての調査を行うこととした。

まず建物外周や周辺状況などを見て回った。緩やかな傾斜地に広がる住宅街で、段々状に住宅が建ち並んでいる。隣地との境界には擁壁や塀が設置されていた。

問題の寝室床を確認すると、ドアを開閉するたび引っかかるほど床が膨らんでいる。

依頼主によって、膨らんだ床の一部が剥がされていた。床下に水がたまってはいないようだが、湿度センサーでは明らかに高い数値が出ている。狭い箇所を撮影することができるスネークカメラを使い床下の状況を確認したが、床下に水道配管などは見当たらず配管漏れではなさそうである。
 


床が膨れてドアの開け閉めがしづらくなっていた


 隣 地の盛土が影響か

依頼主に改めてヒアリングしたところ、膨らみに気づいた昨年の前(2年前)に隣地で建て替え工事があったとのこと。隣地側との境界を確認してみると、隣地側の敷地が1メートルほど盛土造成されていることが分かった。そして、依頼主の土地側の境界ブロック塀には、以前はなかったという苔(こけ)のようなものが確認できた。

床の膨らみが確認された寝室がその隣地側に位置することから、盛土造成が影響していると考えられる。隣地側の境界付近の雨水管などは特に施工不良があるようには見えないが、盛土造成によって高低差が大きくなってしまい、依頼主の土地へいくらか雨水が流れているようだ。

盛土造成だけが原因であるとは断定はできないが、原因の一つではあるだろう。隣地の方に簡易的な防水などをしてもらい、雨水が依頼主側の土地に流れにくくしてもらえないか相談してみては、とアドバイスした。

また、依頼主の土地側の水はけをよくするために雨水側溝や透水パイプなどを適切に設置することもすすめた。
 


施主によって床の一部が剥がされていた。水はたまっていないようだが、湿度センサーでは高い数値が出ていた




 解決策・アドバイス 
雨水などは敷地内で地下浸透されたり、道路側側溝へ垂れ流されたりするものではあるが、地中内には見えない水の流れ(みずみち)があり、今回のケースのように盛土造成を行った際に低くなる方向に雨水が逃げてしまうことがある。傾斜地の建築で敷地の造成も伴う場合は、周辺への雨水の流れについても気を配ることが大事である。




しもじ・てつろう/1級建築士。(株)クロトン代表取締役
電話=098・877・9610


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2011号・2024年07月19日紙面から掲載

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