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2024年5月17日更新

子ども部屋の異音|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第14話「木造3階建て 新築直後」

文・大城佑介(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)

住宅の劣化状況などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は、新築3階建ての木造住宅。診断した下地鉄郎さんは、子ども部屋でだけ低い振動音がすることに気付いた。その原因とは…。
 

 第14話「木造3階建て 新築直後」

子ども部屋の異音

 依頼内容 
建築中に工事が半年ほど中断した。その際、養生不足による雨漏りなどから床下基礎が水浸しになったこともあった。ようやく完成して生活を始めたが、床下の状態などが心配。そのほかにも素人では分からない不具合がないかを調べてほしい


異音のイメージ図


 現場の特徴 
◆完成直後の木造3階建て住宅。
◆工事中、養生不足による雨漏りで床下基礎が水浸しになったことがある


 床 下などは問題なし

事前相談では、建物図面とともに、工事中の雨漏りの状況や床下が水浸しになっている写真などを見せてもらった。

引き渡し前に行政の完了検査を受け、目に見える汚れなどの補修も行われており、きれいな状態ではあった。しかし施主は「床下や天井裏といった見えにくい場所にカビなどが発生していないか心配」という。温湿度計や水分測定器などを用意し調査に入ることとした。

現地では、まず床下空間や天井裏の施工不良の有無や、カビが発生していないかを目視で確認。さらに温湿度計で各所をチェック。床下や天井裏に外気を直接入れない「外断熱」のため、床下や天井裏空間と居室との差はあまりなかった。また、カビ臭もなく施工不良も見当たらなかった。

基礎コンクリートと材木の水分を計測しても、新築直後でやや高めであるが許容範囲内だった。床下浸水した後に、送風機を用いて材木を乾かした記録も確認でき、依頼主に説明すると安心していた。


 2 階の部屋で微振動音

さらに各部屋と建物外周の調査を続けたところ特に大きな問題は見られなかったが、2階の子ども部屋で気になることがあった。わずかな異音が感じ取れたのである。何度か部屋内を歩いてみると、ある位置に立ったときにだけ異音が聞こえる。部屋の壁や天井から「グォーン」という振動に近いような低い音だ。依頼主とお子さんに聞いてみたが、音を感じたことはなかったそう。そこで同じ場所に立って耳をそばだててもらうと「かすかに聞こえる」という。

このような低い振動のような異音の原因は、風や車のような周辺環境からのものか、建物内の家電などの設備機器によることが多い。このお宅は静かな住宅街に建ち、風も強い日ではないことから設備機器ではないかと予測した。
 


異音の原因となった3階バルコニーの室外機。調査時はこのような状態だった

 

室外機の足元に防振ゴムを敷き、さらに人工芝を敷いて対策したところ、異音はほとんど聞こえなくなったそうだ


 防 振ゴムなどで対策

建物内外の音が発生しそうな家電のほか、換気扇やエアコンなどの設備機器の稼働音を一つ一つ調べたところ、異音がする子ども部屋の上のバルコニーに置いてある室外機の振動音であることが判明した。聞くと、エアコン工事は、建物引き渡し後に施主が家電量販店に注文して設置してもらったそう。店側からは振動音についての話は特になかったという。

異音対策としては、室外機用の防振ゴムなどが販売されていることや、参考となりそうなウェブサイトを施主に紹介した。

その後、施主から防振ゴムを購入設置した写真が送られてきた。室外機の下にさらに人工芝も敷き、異音はほとんど聞こえなくなったという感謝の文も添えてあった。


 解決策・アドバイス 
◆木造は音漏れしすいということもあるが、室外機などからの振動音は鉄筋コンクリート造でも発生することもある。
◆今回のように自宅内の問題なら対策しやすいが、隣の建物の場合は対策しにくいこともある。また、共同住宅なら上下左右の住宅が絡むケースもある。現代社会で無音の環境はほぼないが、音のトラブルは極力避けたい。振動を伴う機器は選定や設置方法に注意が必要だ。




しもじ・てつろう/1級建築士。(株)クロトン代表取締役
電話=098・877・9610


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2002号・2024年05月17日紙面から掲載

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