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2024年6月21日更新
豪雨で床が傾いた?|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第15話「築30年のRC造平屋建て」
文・下地鉄郎(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)
第15話「築30年のRC造平屋建て」
豪雨で床が傾いた?
依頼内容
築30年の鉄筋コンクリート造平屋建ての住宅。建物に不具合はないが、床が傾いているかもしれないとの相談。数年前の記録的な豪雨の後に、敷地内の擁壁が少し動いて一部陥没したことが原因かもしれない。はっきりさせたいのと、今後の対策などがあればアドバイスがほしい。
ビ ー玉がゆっくり転がる
事前に建物の図面と、建物周辺の写真も送ってもらった。
また、リビングのフローリング床にビー玉を置くとゆっくり転がるとのことだが、どの部屋がどのくらい傾いているかはよく分からない。そこで、床の傾きを計測できるレーザー測定器と、建物周りの高低差も測ることができるオートレベル測定器を持って調査に入った。
建物周りの高低差をオートレベル測定器で調査
傾 きの目安値を超える
現地では、まずリビングのフローリング床の傾きを計測。傾きの目安(6/1000ミリ)をわずかに超えており、他の部屋でも同じ方向への傾きが確認されたことから建物自体が傾いている可能性がある。
次に擁壁周りを確認したところ、擁壁自体が少し動いた形跡がある。若干、陥没もしていて、そこに雨水が流れていくような水みちができていた。地盤沈下が進行している可能性がある。
屋 上などにクラックも
土地の傾きを調べるために建物周辺の塀やコンクリート土間の各レベルを計測。また、屋上に上ってパラペット(屋上外周部。外壁と屋根の境界にある立ち上がりの部分)やクラック(ひび)を計測した。結果としては土地は擁壁側で沈下が確認された。建物自体は全体が傾いているわけではないが、擁壁側にあるリビングの傾きが確認され、その影響と考えられるクラックが土間コンクリートや屋上パラペットに確認された。
屋上にわずかなクラック(ひび)が見られた
図面と現状を比べたところ施工的な問題はないようであるが擁壁や造成に関しては、図面などの資料がない。そのため擁壁や造成に問題があったのかは確認できなかった。だが、これまでの調査から、傾きの原因は集中豪雨により発生した擁壁側への地盤地下と考えられる。
今後の対策としては擁壁の補強などとともに、擁壁側に雨水が集中しないよう、屋上や建物周囲からの雨水排水の流れを再計画するなどのアドバイスをした。屋上のわずかなクラックについては、将来的に雨漏りする恐れがあるため、補修を勧めた。
依頼主としては傾きとともにクラックまで確認されたことはショックであったようだが、今後の対策により傾きの進行が落ち着くことを聞くと安心されていた。
解決策・アドバイス
今回は、生活では気にはならない程度の床の傾きではあったのだが、放置すればさらに傾いていく可能性もあった。建物を建てる際には、土地の造成記録や周辺の地質マップなどを確認することはもちろん、建った後でも今回のような記録的な豪雨だったり、隣地側工事などの影響により土地自体が沈下することもある。安心して長く住み続けるためには、建物とともに気候や周辺状況についても気を配ることが大事だ。
しもじ・てつろう/1級建築士。(株)クロトン代表取締役
電話=098・877・9610
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2007号・2024年06月21日紙面から掲載