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2023年9月15日更新

在宅療養者の防災ポイント|「生き残ること」が最優先[介護を支える 住まいの工夫㉖]

介護が必要な人も、介護をする人も、安心して安全に暮らせる住まいの整え方を紹介します。9月は防災月間。今回は在宅療養者の防災について、沖縄県難病相談支援センター認定NPO法人アンビシャス副理事長の照喜名通さんに話を聞きました。

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介護を支える住まいの工夫 ㉖

在宅療養者の防災ポイント
「生き残ること」が最優先

長時間、広範囲で停電が発生した台風6号。たんの吸引や人工呼吸器など医療機器を使ったケアを必要とする在宅療養者やその家族を大きな不安に陥れた。

在宅療養者の防災について詳しい照喜名さんは「台風6号の後、油断していたと反省する声をよく聞いた。防災対策についての問い合わせや講習依頼なども増えている。防災意識が高まったことは良かったのですが、蓄電池を備えただけで安心するのは危険。防災は、まず生き残ることが最優先。その次に生き残ってからのことを考えましょう」と警鐘を鳴らす。

照喜名さんが防災で特に重要とするのが「家具の固定」だ。「1995年に起きた阪神・淡路大震災の被災者は、テレビや電子レンジが、まるで飛んでくるようだったと話しています。介護が必要な人がそれを避けるのはほぼ無理」。要介護者など、災害時に支援が必要な人の居室にはなるべく物を置かない、家具類は固定することと念を押す。

「沖縄では、孫の百日記念の額入り写真が高齢者のベッドの頭上に飾られていることがよくある。かわいい孫の姿をよく見える場所に飾りたいという気持ちは分かるが、災害時にはとても危険」と照喜名さん。他にも「停電は台風のときにだけ起こる、ここは停電しない地域、沖縄は地震がない、など楽観的思考へ偏る傾向があり、対策を取っていない危険な家庭は少なくない」と指摘する。


安全空間をつくろう

家具は金具や突っ張るタイプのポール式器具で、硬いところを固定する。本棚は棚本体だけでなく、ワイヤなどを使って、本の落下対策もしておこう=左下囲み。他にも、地震や強風で割れた窓ガラスなどでケガしないよう、ベッドサイドに履物を置く。ケガしたときのためにばんそうこうも用意しておく。テレビ、パソコンなど家具や家電の下に耐震マットを敷く。停電時でも両手で介助できるよう、ヘッドライトを用意する、などもアドバイスする。

また、災害時に安否確認ができる「災害用伝言ダイヤル171」が、毎月1日、15日には無料で試せる。「あらかじめ練習しておき、いざというときに使えるようにしよう」と呼び掛けた。


 

これは危険!! よくある防災NG事例

在宅療養者宅を訪問したとき、「家具の固定や落下の危険性の排除を指摘することが多い」と話す照喜名さん。実際の事例を紹介する。
 

①寝室の家具を固定していない
和室で布団を敷き、母子が添い寝しているが、部屋に置いてある飾り棚やタンスが固定されておらず、棚には花瓶。その棚の下に電源の延長コードがあった。もし棚が倒れたら、母子の頭部を直撃。花瓶が倒れて中の水が延長コードに掛かれば、漏電にもつながる危険性があった。

 

②ベッドの頭上に額縁
高齢者宅によくある孫の百日記念の額縁。ガラス張りの大きな額縁は重さもある。心を慰めようと、よく見えるよう寝室に飾りたくなる気持ちも分かるが、災害時には凶器に変わる可能性がある。他にもベッド周りに落下すると危ないものが置かれていることも。災害時の落下物は飛んでくるような勢いがあり危険。



照喜名さんの本が落ちない工夫

照喜名さんのオフィスの本棚は、本体の固定だけでなく、本が落下しないように前面にワイヤを取り付けてある。「防災は自宅だけでなく、オフィスでも同じように対策をしておこう」と照喜名さん。帰宅困難時にも対応できるよう水や食料なども備蓄している。




てるきな・とおる/沖縄県難病相談支援センター認定NPO法人アンビシャス副理事長。クローン病患者、団体発起人


取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1967号・2023年9月15日紙面から掲載

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