庭・garden
2023年12月1日更新
建て売りでも緑を 家族憩う自然な庭[プロがつくる庭]
Kさん宅(本島中部)
アプローチを歩く長女。地面に敷かれたれんがが、玄関周りのデザインとなじむ。右手にあるパープルファウンテングラスの中にはライトが設けられており、暗くなるとセンサーで明かりがともる
帰宅時にあたたかみ
はだしで遊べる芝庭
建売住宅が並ぶエリア。道路に面してコンクリート土間や砂利が敷かれている家が多い中、Kさん(38)宅では全面に芝生が敷かれ、自然の原っぱのようなナチュラルガーデンが広がっている。
玄関へと続くアプローチの入り口はパープルファウンテングラスが目印。赤銅色の葉をふんわりと伸ばし、手招きするように大きな穂を揺らしている。夜にはライトアップされ、「帰ってきた時にあたたかみを感じます」とKさんは話す。
地面に敷かれたアンティーク風れんがの上を歩いていくと、上へ上へと真っすぐに枝を伸ばすオリーブ。妻(38)が「北欧テイストが好きなのでシンボルツリーに」とリクエストしたものだ。周りのアメリカンブルーやレモングラスといった低めの植栽との高低差によって、アプローチ全体に奥行きも生み出している。
アプローチの右手にはれんがが敷かれた駐車場、左手には三角形の芝庭がある。芝庭では幼い子どもたちがはだしで遊び、その様子を夫妻はしっくい風に仕上げられた低い壁に腰掛けながら見守る。「風もよく通るので気持ちいいんですよ」と二人は目を細める。
道路に向かって大きく開いた庭は、街に緑を提供しながら、家族が憩う場所にもなっている。
妻が季節の花を楽しむ鉢。控えめな色が多い庭の中で、ピンク色がよく映える。れんが積みの部分は鉢を置くためのステージで、庭師の髙杉さんが「手入れいらずの庭にしたので、ここだけは自分でアレンジできるように」と作った
アプローチに敷かれたアンティーク風れんが。れんが同士の間隔を調整し、隙間から芝生が生えるようにした
Kさん宅の全景。駐車場を含め、道路に面する部分全てが庭になっている
全体つなげ 駐車場も庭に
宿根草で手入れラク
庭造りのきっかけについて妻は「母がよく『庭は家の価値を高める』と話していたので、わが家にも設けたいと思いました」と話す。
そこで夫妻は、もともとの仕様だったコンクリート土間打ちなどの工事が始まる前に、インターネットで見つけた庭師の髙杉忠さんに「建物の雰囲気に合わせた庭を造ってほしい」と依頼した。
髙杉さんが提案したのは「全体が一体化するオープンガーデン」。駐車場も含めて全面に芝生を敷いたほか、玄関周りのれんが調の壁に合わせ、アプローチや駐車場にはアンティーク風れんがを使った。三角形の芝庭とアプローチとの間にあったブロック塀も削り、三角形の芝庭から駐車場までの道路側全体を地域に開く庭にした。
植栽は「地植えならほとんど手入れが不要」という宿根草を多用。アメリカンブルーやランタナ、彩りのアクセントとしてのパープルファウンテングラスなど暑さに強いものを選んだ。芝生も「歩く場所は葉が細く美しいヒメコウライシバ、駐車場には車に踏まれても大丈夫なくらい強くて雑草も生えにくいセントオーガスチングラスを敷いた」と2種類を使い分けた。
実際、Kさんは「雑草は時々抜くけど、それ以外は思い立ったときにやるくらい」と管理のしやすさを実感している。
三角形の芝庭。右手の塀はもともと高さ120センチほどのブロック塀で、道路との境界部分まで続いていた。それを短く削ることでアプローチとの分断を解消。高さも腰掛けられるほどにした
塀のアップ。もともとはブロック塀だったが、庭全体を柔らかな雰囲気にするため、角を丸くし、しっくい風に仕上げた
設計・施工/オフィスタカスギ
電話=090・2510・2162
取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1978号・2023年12月1日紙面から掲載
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この記事のキュレーター
- スタッフ
- 出嶋佳祐
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。