企業・ひとの取り組み
2023年7月14日更新
【人物紹介】デジタルで在庫を管理|沖縄県緑化種苗協同組合 専務理事 田中 幸一さん[ひと]
沖縄県緑化種苗協同組合の専務理事を務める田中幸一さん(64)。「沖縄が花とみどりであふれるよう種苗業者、造園業者をサポート。デジタルを駆使して組合員が生産する樹木の在庫情報を一元管理することで、発注を受けた工事の納品作業もスムーズ」と話す。
種苗業者や造園業者をサポート
沖縄県緑化種苗協同組合
専務理事 田中 幸一さん
〈プロフィル〉たなか・こういち/1959年、鹿児島県出身。86年に沖縄県緑化種苗協同組合の鹿児島出張所に就職。96年、同出張所の閉鎖に伴い沖縄の組合本部に異動。2020年に現職である専務理事に就任。座右の銘は「無用の用」。
◆沖縄県緑化種苗協同組合 西原町小波津357番地1 電話=098・946・0840
-沖縄県緑化種苗協同組合(以下、種苗組合)について
1976年に種苗業者や造園業者が中心となり設立した組織で、現在70社が加盟しています。
種苗組合では組合員が生産した樹木約320種類を管理し、街路樹の植え替えから住宅の植栽まで幅広い工事に納品しています。その際、種苗組合が契約内容の交渉を担当。ほかにも、組合員が必要な肥料や保護材などの資材を一括購入し、販売しています。種苗業と造園業は緑化全般の基幹となる事業。組合員が苗木の生産や植栽技術の向上など本来の業務に専念できるようサポートしています。
-心掛けていることは?
資材を輸送する際の管理を徹底することです。
種苗組合に就職してから10年間は鹿児島出張所に勤務しており、九州全域の生産業者から樹木や芝生などを仕入れ、沖縄へ輸送していました。本部に異動し専務理事になった今でも、当時の経験を生かして、資材を仕入れる手配を行っています。
沖縄-鹿児島間の輸送は船で丸1日かかります。その間、コンテナ内は熱気や湿気がこもり、資材が蒸れて、傷む。そのため、荷積みの際には資材の数に応じて、湿気などが抜ける隙間をつくった積み方を考え、組合員に高品質な資材が行き届くようにしています。
-デジタル化にも力を入れていると聞きました
デジタル化を推進し、効率よく業務を行える体制を整えています。その一つが組合で開発したシステム「Karahai(カラハーイ)」で、組合員が生産している樹種や在庫、樹木の状態などの情報を一元管理。同じ樹木が数百本必要となる公共工事でも、カラハーイを見れば組合員らが何本納品できるのか一目で分かるので、発注者とのやりとりもスムーズです。
また、組合員が担う道路の除草作業の報告書を統一し、データを蓄積。担当する業者が変わっても、除草時期や方法など維持管理を引き継げます。
今年はシステムを刷新し、街路樹や雑草などの状況がリアルタイムで分かるよう計画中。植え替えを提案しやすくすることで、街の景観を保ちつつ、樹木の販売促進につなげたい。
クロトンの苗木。同組合が管理している農場では、ほかにも、ハイビスカスやブーゲンビリアなど約320種類の樹木を置いている
-今後の目標は?
昨年、県は「世界水準の観光地としての沖縄らしい沿道景観」を目標に掲げました。種苗組合として、沖縄の固有種を絶やさず維持管理し、流通させたい。そして、美ら島沖縄が花とみどりであふれる場所になるよう、組合員を下支えしていきたいと思います。
一般家庭にも資材提供
購入時にはレクチャーも
西原町にある県緑化種苗協同組合の事務所外観。1階では資材を販売している
県緑化種苗協同組合は組合員向けだけではなく、自宅の庭で園芸を楽しむ個人向けにも資材を販売している。取り扱っている資材は肥料や人工土壌、人工芝、防草シート、除草剤など全12種類。購入時には同組合の職員が資材の使い方や植物の手入れ方法などをレクチャーする。田中さんは「植物にはそれぞれ特性があり、管理の仕方で成長に大きな違いが出ます。種苗組合では家庭向けに多様な苗木や園芸資材などを提供し、多くの方に花やみどりを育む楽しみをPRできるようにしたい」と話す。
また、同組合のHP(https://okiryoku.org/)ではカラハーイ上に登録されている樹木の一覧を見ることができ、同組合が管理する農場では購入することも可能。
取材/市森知
週刊タイムス住宅新聞
第1958号・2023年7月14日紙面から掲載