庭・garden
2025年7月18日更新
【自分でつくる庭】盆栽の技で大自然の趣|「顔」見極め日当たり調整
このコーナーでは、施主自ら楽しみながら作った庭を紹介する。

中村光博さん宅の庭(南城市玉城)
盆栽の技で大自然の趣
「顔」見極め日当たり調整
きれいに刈り込まれた木々が枝を伸ばす枯山水。「奥の木々まで見渡せるよう奥に行くほど高くしたり、植栽のバランスを調整している」と中村さん
木々の生命力を表現
中村さん宅の主庭は、山野のように奥行きがあり、多様な木々が枝を伸ばす枯山水(かれさんすい)。その手前に目をやると水飲み場に集まるアヒルやカエル、馬と水くみをする少女の姿も。「自然の中のワンシーンを切り取って、表現している」と施主の中村光博さん(77)は説明する。
原点は、中村さんが30年たしなんだ「盆栽」にある。鉢上の樹木で大自然を表現する盆栽。「台風が来るたびに鉢を出し入れするのがきつくなり、引退した」というが、その審美眼と技は健在。「植物の『顔』を見極め、日の当て方を調整しながら育てている」と話す。
一つ一つの木々に目を配り、針金をかけたり剪定(せんてい)をしたり。大きな鉢植えの下には回転盤を置き、回しながら日当たりを調整。あえて枝を傾けたり枝垂れさせたりして、自然の美しさや厳しさ、木々の生命力を表す。

前面道路から見た庭。断崖から枝を垂らすような姿の「懸崖(けんがい)」づくりのクロキやマツが存在感を放つ

強風の中でも力強く生きる様を表した「吹き流し」のクロキ

ガジュマルの小さな幹を複数「寄せ植え」し山道を表現

「大きな鉢は下に回転盤を置き、生育状況を見ながら回転させ樹形をつくっている」と話す
階段に滝組み 癒やしの水音
どこを見ても楽しく
中村さん宅はゆるくカーブを描く外階段を上り、2階に玄関がある。「以前は、階段のそばに立派なモンパノキがあった。県内随一の大きさで、これを主木に約30年前の新築時からコツコツ庭づくりをしてきた」と話す。残念ながらその木は台風で折れてしまったが、今はヤシやソテツがダイナミックに葉を広げる。その足元には巨大なカメの置物が鎮座。南国テイストに変身した。

新築時、「県内随一の大きさのモンパノキを主木に庭をつくったが、台風でやられてしまった」と話す
外階段を生かしてつくった滝組みは「サラサラ」と川辺にいるような水音を響かせる。涼やかな音を聞きながら、庭を眺めるのが至福のひととき。「好きだから続けられる。ここには私の趣味が詰まっている」と話す。あちこちに飾られた骨董(こっとう)コレクションも庭に彩りを添える。「盆栽でも、主木を引き立てるために『添配』という小物を飾る。そのイメージ。どこを見ても、楽しい庭にしたい。見に来た人を喜ばせたい」と日に焼けた顔をほころばせた。

玄関へ上がる外階段の隅に滝組みをつくった。水はいくつもの段差を落ち、涼音を響かせる

生命力を感じる大きなソテツの下には、巨大なカメの置物。エキゾチックな雰囲気

2階の特等席から庭を見下ろす中村さん。「ここからは雑草とか不格好なものもよく見える。直ぐ取り除くようにしている」
骨董コレクションが庭の「添配」

【左】ブロック塀に「展示」されているのは、昭和の清涼飲料水のビン。「ミリンダ」など懐かしい銘柄が並ぶ
【中央】石の形や模様から自然や生き物を見いだす「水石(すいせき)」も、あちこちに置かれている。「水にぬらすと、さらに趣がでる」と中村さん。分かる人には分かる?
【右】小さい頃、父親が米軍の払い下げ品から買ってくれたという弁当箱。開けるとフライパンに変身!
取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2063号・2025年7月18日紙面から掲載
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この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。