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2023年3月24日更新

書を生み、魅力伝える家|上間志乃さん(書家)|家々人々[131]

今年の沖縄タイムス芸術選賞の奨励賞を受賞した、書家の上間志乃さん(44)。「書道を次世代につなげるため、より励んでいきたい」と語る。創作や指導に対する強い思いは、自宅兼アトリエの設計にも込められていた。

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書を生み、魅力伝える家

うえま・しの/1978年、宜野湾市出身。大東文化大学卒。
5歳で習字を習う。中学から書道を学び、盛島清盦(せいあん)氏、我喜屋明正氏、新井光風氏に師事。沖展受賞歴多数。沖展準会員。2008年、中城村で上間志乃書道教室を開設。読谷高校と石川高校でも非常勤講師として書道を指導。今年、沖縄タイムス芸術選賞奨励賞を受賞。


■恩納村に新築された家は、海や森の自然が近く、広々としていてすてきですね。

5年前に建てました。場所も設計も夫婦でこだわったので、そう言ってもらえるとうれしいです。

私は普天間基地の隣で育ちました。夫と結婚してこの騒音が異常だと指摘されるまで、これが当たり前の日常で気にしていなかったんです。

でも、自分たちの子育てを考えたときには、静かな環境で地域のコミュニティーがあり、人々と程よくつながることのできる場所が良い、と考えました。

この地域はいい人ばっかりで、自家栽培した野菜を持ってきてくれたりします。3分歩けば海に行けるし、鳥や植物が季節を知らせてくれる。創作にも良いインスピレーションを与えてくれます。

わが家は夫婦ともに自営業。私は書家として創作や指導をしているし、夫も自営業で広告やイラストを手掛けています。なので自宅兼仕事場として、それぞれのスペースの確保と、家族や環境の変化に合わせて家も変化、成長できるようこだわりました。仕切りをなくしたり、可動式にして空間を広く使えるようにしています。そのおかげで、大きな作品にも家で取り組めるようになりました。

現在の住まい
コンクリート打ち放しの平屋。仕切りが少なく広々とした造り。靴箱や棚など夫婦で手作りした家具が空間を温かく感じさせる


■このアトリエですばらしい作品が生まれるのですね。

教室や県立高校で書道を指導したり、沖展に参加したりしてきましたが、3年前から個展も開くようになり、大きな作品にも挑戦しています。

また、指導をいただいた先生の導きもあって、首里城正殿の2階に掲げる扁額の制作にもたずさわっており、とても光栄に思っています。

これまでの取り組みが評価され、沖縄タイムス芸術選賞の奨励賞をいただきました。先輩方から、後輩を指導する役割をしっかり果たしていきなさいと背中を押され、励まされていると感じました。


■将来の夢は?

一人息子はまだ小学生ですが、いつかこの家を巣立つ時が来たら、ここを地域の人々へ広く書道の魅力を伝えていく場所にしたい。

書道は習字とは違い、表現する芸術です。書道に取り組めば、自分を見つめ成長することにつながり、書は生活空間を豊かにします。書道をもっと身近なものにしたい。大人のための書道教室も開きたいと思っています。
 
◇    ◇    ◇
 

 

ホッと空間
書に集中できるアトリエ


「アトリエで書を書いていると、集中して自分と向き合える」と上間さん。「いいところも悪いところも作品に出る。自分の成長を感じながら、日常の生活で学び続けられる」と日々、書道に向き合う。


プライベートはこんな顔
県立読谷高校と石川高校で非常勤講師として書道を指導しています。生徒の自由な発想や視点から逆に私が教えてもらったり、刺激をもらっていることが多く、すごくおもしろい。字を使った表現を生徒たちが楽しんでいるのを見ると大きなやりがいを感じます。

取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行 週刊タイムス住宅新聞
第1942号・2023年3月24日紙面から掲載

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