庭・garden
2023年2月3日更新
素材の濃淡で演出 L字型の和風庭園[プロがつくる庭]
山城貞直さん宅の庭(沖縄市) 設計・施工/㈱沖縄ガーデン
東側の庭。飛び石と延べ段がつくばいへと誘う
窓際が特等席
ライトアップも楽しむ本部石が貼られた塀が目を引く山城貞直さん(60)宅。門を開けると、緩やかな段差のアプローチが玄関ポーチまで延びる。鉄平石の黒と琉球石灰岩の白とのコントラストが上品で落ち着いた印象だ。
右に目をやると、大きなマツの向こうに白い砂利の海が見えてくる。建物の北側と東側を囲むようにL字型に広がっており、いぶし瓦で仕切られた陸地にはクロキをはじめ、サツキやツツジ、サザンカ、ヤナギバモクセイなどさまざまな植物が配されている。夫人の好きなアジサイもある。
島のように浮かぶ飛び石や延べ段を渡った先には、静かに水が流れるつくばい。建物東側の縁側や和室から眺められるようになっており、和室の窓際には山城さん専用のイスとテーブルもある。「水音が心地よく、灯籠に付いたコケがわびとさびを感じさせる。ここだと落ち着いた気持ちで本を読めるんです」と山城さんは話す。
一方、建物北側のリビングから見えるのは、クロキとマツが並んだ力強い印象の庭。「食事しながら見えるし、夜はライトアップして楽しんでいます」。さまざまな景色を楽しめる庭になっている。
アプローチ。黒と白のコントラストがシックな印象。ひさしの上のシーサーは、近くに工房を持つ職人・仲宗根重雄氏によるもの
外から見た塀。本部石が貼られている。庭を手掛けた比嘉さんは「大中小いろいろなサイズを入れることで、より自然な印象にした」と話す
葉や幹・石で明るい印象に
瓦の曲線でつくる海岸線昨年10月、自宅の新築を機に庭をつくることにした山城さん。仕事でつながりのある沖縄ガーデンの比嘉太地さんに、「腕を信用しているので、和風の庭を好きなように造ってほしい」と依頼した。
比嘉さんはまず、葉や幹の色が濃いクロキやマツをメインにしながらも、重い印象にならないように工夫。例えばシャリンバイやサザンカ、本島北部に分布するヤナギバモクセイなどを植栽し、「葉や幹が明るい樹種を入れることで庭の印象も明るくした」と説明する。いずれも白い花や小さい花が咲くため、「さりげなく庭を彩りながら、上品で落ち着いた雰囲気も演出できる」と加える。
白い砂利も、庭を明るくするのに一役買っている。踏むと音が鳴るため防犯にも役立つほか、砂利の下はコンクリートなので雑草も生えにくいという。
そのほか、琉球石灰岩は古民家の塀に使われていたものを再利用。経年による変化も、味わいとしてそのまま生かした。砂利と植栽部分の仕切りにはいぶし瓦を使っており、瓦の曲線をつなげて海岸線を再現した。
山城さんは「暖かくなってきたらいろいろな花が咲くはず。庭にイスを出してビールを飲んだり、遊びに来た孫と一緒に過ごすのもいいね」と期待に胸を膨らませる。
つくばい。左側に立つ本部石は地表に出ていた部分を使用。ごつごつしており、より自然の雰囲気に
北側の庭。マツとクロキで力強い印象。最奥には記念樹を植えるためのスペースが空けられている
海と山をイメージできるよう、砂利に接する部分には海で取れたなめらかな石、その奥には山で取れたごつごつした石を配置している
延べ段。手前の緑が印象を和らげている。奥の灯籠は終点の目印
施工前に作成した3Dパース。手書きの図面が一般的だが、比嘉さんはこのパースで山城さんとイメージを共有した
設計・施工/㈱沖縄ガーデン
☎098・932・1600
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1935号・2023年2月3日紙面から掲載
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この記事のキュレーター
- スタッフ
- 出嶋佳祐
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。