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2022年3月18日更新

【沖縄】「要介護者の意見を取り入れた空間づくり」|介護を支える 住まいの工夫⑪

介護が必要な人も、介護をする人も、安心して安全に暮らせる住まいの整え方を紹介するコーナー。今回は「要介護者の意見を取り入れた空間づくり」について作業療法士の宮良大介さんがアドバイスします。

介護を支える住まいの工夫 ⑩

意見取り入れ空間つくる

役割あれば生きがいに

在宅介護の住環境づくりでは、転倒など事故を防ぐための安全面や介助しやすいスペースの確保など介護面からのアプローチとともに、「介護が必要な人に意見を聞いたり、相談したりしながら、その意見をできるだけ生かした空間をつくることも大切です」と話す、作業療法士の宮良大介さん。

在宅介護をしていると、家族はつい先回りして、なんでもかんでも手助けしてしまったり、住宅改修を専門家と家族だけの話し合いで進めてしまうこともある。そうすると「日常生活の中で、要介護者の主体性が薄れ、自ら動こうとしなくなったり、家族に世話をかけている申し訳なさで気持ちが沈み込んでしまうこともある」と指摘する。

在宅介護の日常生活においては、「できることは要介護者自身でするよう習慣づけたり、要介護者本人にも相談するなど、家族として求められ、役割があることを実感できるようにすることが大切」と宮良さん。Aさん=下囲み=のケースのように、要介護者がのぞくことのできる窓やそこから見える場所に、本人に相談して選ばせた好きな植物を植えたり、植木鉢を置くだけでも、気持ちの変化から生活への張り合いが出てくる。「たとえ障がいが重く、完全介助の状況であっても、本人の意見が生かされた空間をつくると、日々の生活の中で、家庭における自分の役割や存在感を感じることができ、生きがいにつながる」と話す。


「好き」はリハビリに

空間づくりのポイントとして、「本人の好きなことや、季節の移り変わりを感じられるような空間づくりはリハビリにもなる」と宮良さん。

庭いじりが好きだったBさん=下囲み=は、たとえ自分で作業ができなくなっても、植える花を決めて、苗や肥料の買い出しに出掛けたり、咲いた花を人に見せるために、積極的に歩くといった行動につながった。

他にも献立を決めさせたり、お盆などの行事をするときの相談役になってもらったりするのも、家族の一員だと感じることができる良い機会だという。

「あなたのためと押し付けるのではなく、その人らしさとは何かを考え、住環境を整えていく視点が必要です」と宮良さん。介護が必要な人の気持ちに寄り添うことの大切さを訴える。



見える場所に
自分の好きな空間を


要介護者から見える場所に、本人の好きな空間があるのが理想的。植物好きなら、本人に選ばせた好きな花木を植えたり鉢を置くだけで、生活への張り合いが出る。

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AさんとBさんのケース

Aさん  寝室を庭が眺められる位置に

要介護4の90代女性。病気になる前は、家事全般に畑仕事もしていたのに、ベッドの上や車いすでの生活になると、家庭の中で本人の役割がなくなってしまいました。そこで、車いすで庭の畑まで行き、「ここに何を植えようか、肥料はどうしたらいい?」と声掛けを行い、その庭が見える場所に寝室を移して、窓から畑を眺められるようにしました。すると、季節ごとに家族へ指示を出すなど、家庭内に本人の役割が生まれ、生き生きとしてきました。


Bさん 庭師に指示 買い物にも

要介護2の90代男性。庭の手入れが生きがいでしたが、加齢とともに転倒リスクも高まり、作業をするのが難しくなってきたため、庭師を依頼するようになりました。すると、庭師に指示を出しながら、その作業を部屋から眺めるのが楽しみに。今では、タクシーを利用してホームセンターへ肥料や植物などの買い物に出掛けたり、庭にきれいな花が咲くと、訪問リハビリのスタッフにも見せようという思いから「庭まで歩こう」と積極的な行動にもつながっています。


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みやら・だいすけ/医療法人おもと会訪問リハビリぎのわんおもと園 作業療法士


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1889号・2022年3月18日紙面から掲載

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