沖縄建築賞
2019年5月24日更新
【第5回沖縄建築賞】タイムス住宅新聞社賞/「Joy Chapel」(うるま市)/福村俊治氏(66)/チーム・ドリーム
県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催/同実行委員会)。全26作品の中から、第5回の入賞作品6点が決定した。正賞に次ぐタイムス住宅新聞社賞は、福村俊治さんの「Joy Chapel」が受賞した。
第5回沖縄建築賞入賞作決まる
礼拝堂。天井に見える屋根構造や、十字架、家具に使われている木が、空間の親しみやすさに一役買う
タイムス住宅新聞社賞
「Joy Chapel」(うるま市)
新素材で課題解決
「Joy Chapel」は保育園が併設された教会。設計時、福村俊治氏が意識したのは、限られた予算とスペースの中で、いかに教会としての崇高な空間や、信者や園児たちのための多目的な空間をつくるか。
解決策の一つがパティオ。建物を貫くように設けられた大きな半戸外空間は、日差しや雨風をしのぐことができ、教会のイベント会場や園児の遊び場などとして使える。福村氏は「半戸外空間を多目的な活動スペースとすることで、コストやスペースの節約になる。冬でもあまり寒くない沖縄ならではの空間」と説明する。パティオの奥の景色まで見通せたり、建物内部の仕切りをガラス張りにしたのも広く見せる工夫だ。
多目的に使えるパティオ。反対側まで視線が抜けるので奥行きが感じられる
箱型に組まれた木造LVL。県内で使用するのは初めてだという。上写真の天井にはこの箱が並べられている
もう一つの解決策は屋根。壁は鉄筋コンクリート造だが、屋根の素材には、木の板を積み重ねた木造LVLを沖縄で初めて採用。箱型に組むことで、上からの荷重や、台風時の吹き上げに耐えられるようにするストレススキンパネル工法で屋根を構成させた。
「この方法だと施工も簡単で丈夫。屋根の荷重が抑えられた分、壁や基礎の構造的な負担が小さくなり、コンクリートの量も減らすことができた」。木造LVLの構造は天井も兼ねており、空間に温かみも感じさせる。
審査員からは「意匠と構造が互いに譲り合い、かみ合った建築。RC造の利点と木造の利点が生かされている」と評価され、タイムス住宅新聞社賞が与えられた。
外観。パティオ左手の大きな空間が礼拝堂。礼拝堂の奥に行くにつれ天井が高くなり、広さを演出しているため、屋根が斜めになっている
設計者代表/福村俊治氏(66)
チーム・ドリーム
さまざまな制限がある中での新しい試みだったので大変でしたが、だからこそパティオの使い方などの工夫も生まれました。これからも新たな構造や材料などを探しながら、沖縄の気候に合う建築を目指したい。
審査講評・野原 勉氏 タイムス住宅新聞社賞
ジョイチャペル
まず、意匠と構造がお互いに譲り合い、かみ合った建築である。RC造の利点と木造の利点を活かした建築でもある。アプローチからの軸線を設け、パティオその先の洗礼池信者を導く動線として見事である。
また、礼拝堂屋根をLVLのSSPを採用し、木としての吸音効果及び暖かさを感じることができる。講壇に向かっての屋根勾配は、教会としての演出も見事である。
ただ、残念なことは、パティオを横切る渡り廊下が目障りである。軸線としての効果が半減している。パティオで信者さん達の食事会等の上部に廊下があるのは、いただけない。
いずれにしても、RC造と木造の存在感、両者の構造への挑戦。素晴らしい建築である。
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1742号・2019年5月24日紙面から掲載