沖縄建築賞
2019年5月24日更新
【第5回沖縄建築賞】奨励賞・住宅建築部門/「楚辺のコートハウス」(那覇市)/池間守氏(52)/エー・アール・ジー
県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催/同実行委員会)。全26作品の中から、第5回の入賞作品6点が決定した。奨励賞を紹介。ガラス張りの中庭で空間に広がりを持たせたついのすみか、上下の半戸外空間をつなぐ大きな壁が特徴的な住宅、地域の多様なイベントに対応する多目的ドームが選ばれた。
第5回沖縄建築賞の受賞作品
手前の寝室から中庭、リビングダイニング、奥の中庭と1階全体を見通せる。写真右手側にトイレ、洗濯室、キッチン、浴室が並ぶ
奨励賞・住宅建築部門
「楚辺のコートハウス」(那覇市)
ガラス張りの中庭 生活の場を見通す
開放的なついのすみか
東西に住宅が隣接、後背には隣地の通路がある敷地で「お施主さんの希望も踏まえ、コートハウスを意識しながらの設計になった」と、池間守氏。前面道路から奥へと二つの中庭を挟みながらパブリックからプライベートへ空間が変化する。ガラス張りの中庭と室内の床はフラットにし、グレーのタイル材で統一、「視覚的な一体感を意識した」。1階で生活のすべてが完結し、2階はゲストルームになっている。
審査委員らが注目したのは二つの中庭にはめ込まれた大きな窓。リビングダイニングや寝室から直接出入りする開口部が小さくなり、「屋内外を分断しているのは残念」との声もあったが、「生活の中心になる1階を見通せる開放感」が評価された。
夫婦と高齢の母、愛犬が暮らすため、介護のしやすさを追求して水回りを直線にまとめた。夫人は「車いすでの移動が楽。中庭では安心して老犬の散歩もできるし、孫が来たらプールを置きたい」と話す。
審査では「寝室と浴室が離れているのは難点ではあるが、高齢世帯の参考になるだろう」と奨励賞を送った。
外観。前面道路に面する花ブロックの壁は、目線の高さにあるブロック一つ一つに曇りガラスを目張りした細やかな施工
設計者代表/池間守氏(52)
エー・アール・ジー
受賞できたのは、設計から工事までいろいろな面でご協力いただいた、お施主さんのおかげだと感謝しています。今後も建築を通して、お施主さんの満足と幸せを追求し、創造力を駆使して街並みづくりに貢献できればと思います。
審査講評・石川達也氏 住宅部門 奨励賞
「光」意識した直線的設計
那覇市の中心部にあり、敷地は約54坪と余裕のあるスペースとはいえないが、内部に足を踏み入れると、一番奥の寝室から道路側に向けて一直線上に配置された2つのコートの中央にリビングがあり、多くの日差しを取り込む。視覚的にも豊かな明るさと広さを演出するには十分だ。足腰の弱い母親や老犬にも配慮されたバリアフリーの設計は、今後も増えていくだろう高齢世帯の参考になる建築になるだろう。目が行くのは公道側に施された駐車場に面した花ブロックの壁。プライバシー保護のため、目線の高さ部分は内側から1ブロックごとに丁寧に目張りがされている。夜間でもすべてのブロックから漏れる光は均等で、目張りされていることがわかりにくい工夫だ。空洞状のブロックからは居住スペースに爽やかな風が流れ込む。浴室が奥の寝室と距離があるのは難点だが、玄関側のコートに面した側面に光を通すブルーのガラスを配し、居住空間全体に「光」が意識されている。
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第1742号・2019年5月24日紙面から掲載