沖縄建築賞
2019年5月24日更新
【第5回沖縄建築賞】一般建築部門 正賞・新人賞/「オアシスバンク」(浦添市)/宮城江利奈氏(37)/渡久山設計
県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催/同実行委員会)。全26作品の中から、第5回の入賞作品6点が決定した。住宅部門正賞には金城豊氏の「アカジャンガーの家」が、一般建築部門正賞には宮城江利奈氏の「オアシスバンク」が選ばれた。
第5回沖縄建築賞入賞作決まる
一般建築部門の正賞・新人賞のダブル受賞となったのは、宮城江利奈氏が設計した「オアシスバンク」。県産新素材(HPC)の大屋根の下、市民が交流しイベントにも活用できる大きな屋外空間を設け、新しい銀行の在り方を追求した
オアシス広場を見下ろす。屋根に開けた大小の丸い開口からデッキに落ちた光は、木漏れ日のよう
▼断面図
木漏れ日ルーフのHPCは支柱の上部からつり下げて支えている。駐車場が半地下にあり、1階床が上がっているが、植栽を巧みに配置しレベル差が目立たない
▲▼天井のルーバーやカーテンで樹木をイメージしたフリースペースから、直接オアシス広場に出入りできる大開口部を設けた
一般建築部門 正賞/新人賞
「オアシスバンク」(浦添市)
市民に開く新しさ追求
新材の屋根下で交流
「これまでにない銀行をつくってほしい」。施主の要望を受けて、宮城江利奈氏が提案したのは、地域や市民に開かれた銀行。大きな「木漏れ日ルーフ」は、敷地外の歩道まで伸びそうなほどの日陰を作り出す。その下には植栽やベンチが設けられた「オアシス広場」があり、利用者だけでなく行き交う人も涼を取る。道路に面した外壁はガラス張りで視界が開け、これまでの閉鎖的な銀行とは対照的な印象を受ける。
木漏れ日ルーフに県産の新素材、ハイブリッドプレストレストコンクリート(HPC)を使った。厚み40ミリと薄く軽やかながらも高い強度と耐久性を持つ。その屋根から落ちる大小ランダムな光は非日常の空間を作り出し、大きな木陰の下にいるような演出を実現した。
宮城氏は「市民のサードプレイスとなる居心地良い空間をつくり、銀行機能がコンビニ化する中、『それでも行きたくなる』銀行にしたい」という視点から、市民に開かれたコミュニティースペースを提案。「銀行業務だけでなく、イベントなどの多様なサービスの展開」を考え、屋内のフリースペース(待合室)には広場につながる大きな開口を設け、屋内外を一体で利用できるようにした。業務窓口の手前には防犯用としてシャッターを設置=下配置図。
審査では「イベント時の内外の活用法を見てみたい」と期待を込めた声も。「若々しい発想と技術によって現代沖縄の時代性を鋭く表現した優れた作品」と評価され、満票で正賞、新人賞のダブル受賞となった。
▼配置図
イベント開催時のイメージパース
設計者/宮城江利奈氏(37)
渡久山設計
オアシスバンクは多様な交流を生み出す場として、新しい銀行の在り方を提案しました。このような挑戦が評価されて本当にうれしく思います。何より、地域を元気にしたいと願う施主の思いがあっての“カタチ”となるので、琉球銀行牧港支店を多くの方に知っていただき地域のにぎわい、発展につながれば幸いです。
審査講評・小倉暢之氏 一般建築部門 正賞・新人賞
オアシスバンク市民に開かれたコミュニティスペース
軽快に伸びる大きな屋根と、その下に展開する半戸外の広場がこの建物を圧倒的に印象付けている。従来の銀行建築という型にはまらない何か新しい建物の役割を期待させるものがある。
今やコンビニやスマホが急速に展開し、人々の行動様式が変わりつつある中で、これまでの銀行建築のあり方が大きく問われている。そうした中で、本作品は新たな銀行建築の先駆けともいえる提案を示しているが、それは単に全国的な社会現象に対する提案だけでなく、亜熱帯沖縄の風土に立脚した建築的提案ともなっている。
県産新素材であるハイブリッドプレストレストコンクリートの薄いパネルを大胆に屋根材として用いて軽快な「木漏れ日ルーフ」を実現し、その下の広場とこれに連続する二層全面ガラスで囲う大きな内部空間との一体感の演出が巧みになされている。
本作品は、作者の若々しい発想と技術によって現代沖縄の時代性を鋭く表現した優れた作品であり、ここに正賞と新人賞を贈る。
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1742号・2019年5月24日紙面から掲載